米EV(電気自動車)大手のテスラは、北米でADAS(先進運転支援システム)「FSD(Full Self-Driving)」β版を、2020年10月から有料オプションとして提供している。
このFSD β版は1日に100万マイル(約161万キロメートル)の走行データを取得できており、自動運転技術の開発に役だっている。しかし海外メディアによると、だとしてもテスラは仮想世界でのシミュレーションに頼らざるを得ない状況があるようだ。なぜだろうか。
■実走行データだけでは足りない
同社CEO(最高経営責任者)であるイーロン・マスク氏によると、重大事故などに関してAI(人工知能)を訓練するためには、シミュレーションを行うしか方法がないという。Twitterのリプライで明かしている。
Team is closing the loop on interventions very rapidly. To get enough training examples for potential serious accidents, we have to run them in sim, as we have so few in the fleet, despite doing ~1M miles per day of FSD.
— Elon Musk (@elonmusk) April 4, 2023
FSD β版の総走行距離は何十億マイルにも上るが、テスラのADAS「Autopilot(オートパイロット)」の性能が非常に優秀になっているため、事故が起こりそうな危ないシーンや危機一髪のシーンのデータが得られることは少なくなってきているようだ。
そのため、AIに危ないシーンを学習させるために、仮想世界で危険なシーンに直面させる必要があるという。
■仮想空間で人為的に危険なシーンを
自動運転AIが進化すればするほど、車両が危険なシーンに遭遇する確率は減っていく。そのため、より自動運転AIを強化するためには、仮想空間で人為的に危険なシーンをつくり、AIに学習させることが必須となる。マスク氏はこのことをすでに見抜いているわけだ。
やはり自動運転業界ではマスク氏の発言に注目しないわけにはいかない。
【参考】関連記事としては「テスラに新たな噂!中国で「完全自動運転β版」テスト開始か」も参照。