米EV(電気自動車)大手のテスラといえば、CEO(最高経営責任者)のイーロン・マスク氏を思い浮かべる人も多いのではないだろうか。しかし、マスク氏はテスラの創業者ではない。
テスラは、マーティン・エバーハード氏とマーク・ターペニング氏により2003年に設立された。そのテスラ創業者の1人であるエバーハード氏が、自動運転車の実現性と危険性について、海外メディアのインタビューに答えている。
エバーハード氏は、テスラが開発しているADAS(先進運転支援システム)である「FSD」や「オートパイロット」が、iPhoneに搭載されているようなソフトウェアであることを指摘し、「自動車はiPhoneのようであってはならない」と話している。
■「自動運転車でバグが発生したら…」
エバーハード氏は「私はiPhoneを持っているが、ソフトウェアアップデートをするたびに必ずバグが発生する」とした上で、「iPhoneでは大したことのないバグかもしれないが、自動運転車でバグが発生したら大変危険なことになる」と指摘している。
そして「もしブレーキやハンドルに問題が起こった場合、死亡事故に至る可能性もある」とも強調している。
ただし、エバーハード氏がテスラを批判するのには、マスク氏とのわだかまりが背景にあるのかもしれない。
エバーハード氏はテスラを創業後、2007年まで同社のCEO(最高経営責任者)を務めていた。マスク氏は2004年から同社に資金提供を行って徐々に持ち株比率を引き上げ、同社最初の自動車モデルであるロードスターの販売前にエバーハード氏を解任した。
あくまで推測だが、そのときの恨みのようなものがまだ残っており、エバーハード氏は今回のようなマスク氏へ攻撃的な批判に至ったのかもしれない。
■手動運転との「比較」が重要
確かに、自動運転車でバグが起きたら大変であることは確かで、エバーハード氏の言説が全く的外れなオピニオンと断じることもしにくい。
しかし自動運転車にとって重要なことは、自動運転の事故率が手動運転の事故率を下回ることであり、自動運転車の優位性などを論じるときは、自動運転と手動運転を「比較」することが必須の作業となる。
そのため、自動運転技術の欠陥だけを指摘する批判は、(意義はゼロではもちろんないが)あまり意味をなさないのではないか。エバーハード氏が展開する批判からは、改めてこうしたことを考えさせられる。
【参考】関連記事としては「テスラの自動運転技術(2023年最新版)」も参照。