日立Astemo株式会社(本社:茨城県ひたちなか市/代表取締役:ブリス・コッホ)の第14期の決算(2021年4月〜2022年3月)が、このほど官報に掲載された。
売上高は6,430億2,100万円となり、前期の4,489億1,600万円から43%増となった。純利益は369億4,600万円を計上し、前期の603億7,200万円の赤字から黒字転換した。
【参考】関連記事としては「日立Astemoの2021年3月期決算、売上4,400億円計上!自動運転やADASなどに注力」も参照。
■決算概要(2022年3月31日現在)
貸借対照表の要旨(単位:百万円)
▼資産の部
流動資産 241,501
固定資産 750,710
資産合計 992,212
▼負債の部
流動負債 208,481
・製品保証等引当金 3,025
・訴訟等損失引当金 305
・関係会社整理損失引当金 1,563
固定負債 304,089
・退職給付引当金 17,706
関係会社整理損失引当金 11
・関係会社事業損失引当金 2,438
負債合計 512,570
▼純資産の部
株主資本 478,249
・資本金 51,500
・資本剰余金 324,643
・・資本準備金 40,250
・・その他資本剰余金 284,393
・利益剰余金 102,106
・・その他利益剰余金 102,106
評価・換算差額等 1,392
その他有価証券評価差額金 1,392
純資産合計 479,641
負債・純資産合計 992,212
損益計算書の要旨(単位:百万円)
売上高 643,021
売上原価 562,917
売上総利益 80,103
販売費及び一般管理費 91,610
営業損失 11,507
営業外収益 79,798
営業外費用 8,476
経常利益 59,814
特別利益 6,824
特別損失 22,487
税引前当期純利益 44,150
法人税、住民税及び事業税 8,190
法人税等調整額 △986
当期純利益 36,946
■日立Astemoの沿革
日立Astemoは、日立オートモティブシステムズ、ケーヒン、ショーワ、日信工業が経営統合して2021年1月に誕生した。先進的なモビリティソリューションによってQuality of Lifeの向上を目指し、統合した4社それぞれの強みを生かしながら自動運転や車載ソフトウェアなどの開発を行っている。
2022年5月には、EV(電気自動車)向け800Vインバータに用いられるパワーモジュールの絶縁構造を新たに考案し、高い絶縁体制と放熱性能を両立させたことで、全国発明表彰「内閣総理大臣賞」を受賞した。
■自動運転やADASの技術を開発
日立Astemoは、周囲の環境を認識するセンシング技術や、状況を瞬時に判断して車両をコントロールする電子制御など、自動運転や先進運転支援システム(ADAS)に関する技術を開発している。
具体的には、外界を認識するステレオカメラやミリ波レーダー、車両センサーやカメラ情報を処理するADASコントロールユニット、外部ネットワークと接続するためのセントラルゲートウェィなどだ。
また、無線を活用したOTA(Over the Air)による制御ソフトウェア更新技術を開発したことで、車両から収集されたデータを分析、反映させて機能向上につなげることが可能となった。
【参考】関連記事としては「Over The Air(OTA)技術とは? 自動運転車やコネクテッドカーの鍵に」も参照。
2021年5月には、快適な自動運転車両空間を実現するための高精度な軌道計画技術として、「Dynamics planning(ダイナミクス・プランニング)」のアルゴリズムを開発したことを発表した。
従来の技術では、車線に合わせた中央よりの経路を一定速度で走行するため、不快な揺れが発生し、車酔いなどが起こりやすかったという。そこで、カメラなどの外界認識センサーや地図情報などを活用して車両の走行可能領域の幅を有効利用することで、カーブでは緩やかに曲がるなどといったことにより、不快な揺れを軽減させるというものだ。
自動運転車の安全性向上と同時に、その先を行く快適な自動運転ライフを過ごすための開発を進めているようだ。
【参考】関連記事としては「自動運転による不快な揺れを軽減!日立Astemoがアルゴリズム開発」も参照。
自動運転による不快な揺れを軽減!日立Astemoがアルゴリズム開発 https://t.co/EFdByGnu56 @jidountenlab #自動運転 #日立 #日立Astemo
— 自動運転ラボ (@jidountenlab) June 1, 2021
■さまざまな自動運転車に採用
日立Astemoが開発した技術は、さまざまメーカーの自動運転車において採用されている。
例えば、2021年3月にホンダから発売されたレベル3の自動運転技術を搭載している新型「レジェンド」には、「OTAソフトウェア更新ソリューション」として、車両制御ソフトウェアの更新に対応するAD ECUや、更新データを受信・管理するOTAユニットが採用された。このソリューションによって、ソフトウェアのスムーズな更新をサポートしている。
また、2021年9月に発売された、スズキの新型「ワゴンRスマイル」には、夜間の歩行者検知機能を備えたステレオカメラが採用された。
この技術は、接触防止をサポートする「すれ違い支援機能」をはじめ、衝突被害軽減ブレーキの「デュアルブレーキサポート」や「車線逸脱警報機能」「全車速追従機能付きのアダプティブクルーズコントロール(ACC)」といった、ADAS(先進運転支援システム)を支えるものだ。
ちなみに、新型「ワゴンRスマイル」は、国が推進する「サポカーSワイド」、「衝突被害軽減ブレーキ(AEBS2)認定車」、「ペダル踏み間違い急発進抑制装置(PMPD)認定車」に該当している。日立Astemoの高度な技術が安全運転サポート車を支えていると言える。
日立Astemoは、自動運転車を陰で支える存在として急成長している。今後の開発にも注目していきたい。
※官報に掲載された決算公告に関する記事は「自動運転・MaaS企業 決算まとめ」から閲覧頂くことが可能です。
【参考】関連記事としては「日立AstemoのOTAユニット、ホンダの自動運転レベル3搭載車で採用」も参照。