Uberなどが大口顧客に!?自動配送ロボ開発Serve Roboticsの有望性

StarshipはCo-opとのパートナーシップ拡大へ



出典:Serve Robotics公式サイト

宅配ロボット開発を手掛ける米Serve Roboticsがこのほど、セブン-イレブンやフードデリバリー企業のベンチャーキャピタルなどから資金を調達した。ラストワンマイル配送を担うロボット開発事業者と、小売やデリバリーサービス大手の結びつきが強まっているようだ。

宅配ロボット分野には多くのスタートアップらが参入し開発競争を繰り広げているが、その勝敗のカギを握るのはビジネスパートナーだ。


この記事では、宅配ロボットを取り巻くビジネス環境に迫っていく。

■宅配ロボット分野のビジネスモデル
ソリューション提供のほか、自ら宅配事業者になるケースも

宅配ロボット開発事業者のビジネスモデルは、大きく2つに分かれる。1つはロボットを販売・リースして収益を上げるモデルで、もう1つは宅配サービスそのものをビジネス化するモデルだ。

前者は、小売業者や宅配サービス事業者向けにロボットの販売・リースなどを行う。多くの場合、宅配に必要となるサービス用プラットフォームも提供するが、利便性・汎用性を高めるため他社のプラットフォームにも統合可能とするケースも多そうだ。

ソリューションを提供するほか、事前準備となるマッピング作業や各種オペレーションの構築・養成、実用化後のメンテナンスなど、ビジネス要素はいろいろと考えられる。


一方、後者は開発事業者自らフリートを構成し、ロボットによる宅配サービスそのものを提供するモデルとなる。開発事業者が宅配事業になるのだ。小売業者などから宅配事業を丸ごと委託されるケースもあれば、宅配需要が見込める事業者やエリアなどを対象に自ら事業化するケースなども想定される。

ビジネスパートナーの存在がカギを握る

いずれにしろ、宅配ロボットの事業化に欠かせないのがビジネスパートナーだ。宅配需要の受け皿となる小売りや飲食店などが存在するからこそ、宅配サービスが成り立つのは言うまでもない。

地域に根差す食品スーパーやコンビニ、近年デリバリー需要が盛んな飲食店、商店街の各店など、さまざまな需要が考えられる。将来的には、ラストワンマイルを担う地域の宅配事業者やデリバリーサービス事業者から一部事業を委託することもありそうだ。

ビジネス的には、チェーン展開を図っているコンビニやスーパー、飲食店などとの提携が重要なポイントになりそうだ。1つの契約が大口契約につながる可能性が高いほか、社会に対するビジネスパートナーの影響力が強ければ強いほどPR効果も高まり、これが呼び水となってさらなる契約につながる可能性もある。


また、宅配ロボット開発事業者の大半はスタートアップだが、こうした契約が資金調達時の好材料と判断され、初期の資金繰りにも大いに貢献しそうだ。

■ロボット開発事業者の取り組み
Serve Roboticsがセブン-イレブンやデリバリー大手から資金調達

ロボット開発を手掛ける米Serve Roboticsは2021年11月、デリバリーサービス「Uber Eats(ウーバーイーツ)」を手掛けるUber Technologiesとパートナーシップを結んだほか、12月には資金調達シードラウンドで1,300万ドル(約15億円)を調達したと発表した。

同社はデリバリープラットフォーム事業を手掛ける米Postmatesのロボット部門として2017年に設立され、2021年3月にスピンアウトした新興企業だ。Postmatesはウーバーイーツ同様、人力によるフードデリバリーを手掛けているが、ロボット技術で無人化を図り、低コストのサービス実現にいち早く取り組んできた。すでに米国内で何万回もの配送実証を行っている。

なお、Postmatesは2020年7月にUberに約26.5億ドル(約3,000億円)で買収されることが発表されており、デリバリーサービスの強化を図っている。

実質親会社のような関係にあるUberとのパートナーシップでは、最初の商業パートナーとしてウーバーイーツのプラットフォームに自社開発した宅配ロボットを導入し、2022年早期にロサンゼルスなどで自動運転デリバリーを行っていく予定だ。

一方、資金調達には、Uberのほか独Delivery Heroが設立したベンチャーキャピタルDX Ventures、セブン-イレブン系の7-Venturesなどが出資者として名を連ねている。

Delivery Heroは世界40カ国以上でオンラインフードデリバリーサービスを手掛ける企業で、セブン-イレブンは世界中で6万6,000もの店舗を構えるチェーンストア世界最大手だ。セブン-イレブンは、スマートフォンから注文できるネットコンビニサービス「7NOW」に宅配ロボットを導入していく方針だ。

こうした企業とのつながりは、Serve Roboticsの本質的な企業価値を大幅に高める。約15億円の調達額よりも、ビジネス面での将来性・有望性が評価されるのだ。

▼Serve Robotics公式サイト
https://www.serverobotics.com/

Starship Technologiesも小売大手との提携拡大
出典:Starship Technologies公式サイト

宅配ロボット事業で先行する米Starship Technologiesも、小売大手とのパートナーシップを進めているようだ。同社はこれまで飲食店を中心に大学キャンパス内などでサービスを展開し、2021年11月に累計200万回の配達を達成している。

2020年9月には、カリフォルニア州を中心にスーパーマーケットを展開するSave Martと提携し、旗艦店からの宅配サービスを行っている。

また、2018年から提携を続ける英Co-op(協同組合)とも2021年9月にパートナーシップを拡大することが発表されている。英国全土で500台の宅配ロボットを導入し、5つの新しい都市でロボット配送サービスを開始するという。

▼Starship Technologies公式サイト
https://www.starship.xyz/

■【まとめ】パートナーシップは今後も続発する可能性大

ロボット開発サイドと大口顧客のパートナーシップは今後続発する可能性が高く、特に注目すべきポイントとなりそうだ。

日本国内でも公道実証が本格化し始めたが、小売りなどパートナー企業の動きはまだ限定的だ。だからこそ大きなビジネスチャンスが眠っているとも言える。開発事業者、パートナー企業ともども、同業他社に先駆けて取り組むことで得られるイニシアチブは大きい。

早期社会実装に向け、各社の取り組みが加速することに期待だ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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