点在型、広告、自動運転…タイムズカーシェアの挑戦が前衛的 パーク24グループにインタビュー

駐車場ネットワークを活かした展開





インタビューに応じる大塩剛司氏=撮影:自動運転ラボ

カーシェアが市民権を得つつある。車を所有せず、使いたい時にだけ気軽に借りることができる便利なサービスだ。

駐車場最大手パーク24のグループ会社であるタイムズモビリティも、カーシェアリングに力を入れる。今年に入って、レンタカーとカーシェアの良い部分を組み合わせた「タイムズカー」のトライアルを実施した後、10月には料金体系を発表するなど、本格展開に向けた動きを活発化させている。







自動運転ラボは今回、パーク24グループでモビリティ事業を統括する大塩剛司氏(タイムズモビリティ取締役)にインタビューし、モビリティサービスの現状や課題などを詳しく聞いた。

記事の目次

【大塩剛司氏プロフィール】おおしお・たかし 1967年生まれ。1996年にパーク24に入社。駐車場事業の開発責任者や横浜支店長などを経て、2004年に執行役員に就任。持株会社体制への移行に伴い、2011年にタイムズ24の取締役に就任。2014年にタイムズモビリティネットワークスの取締役常務執行役員、2018年に取締役専務執行役員に就任。2019年11月にパーク24グループのモビリティ事業を集約したタイムズモビリティ設立に伴い、同社の取締役専務執行役員に就任、現職。
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タイムズ24での駐車場開発や無人拠点運営の経験を生かし、レンタカーを希望の駐車場に配車する「ピッとGoデリバリー」(2016年6月開始)や、有人サービスであるレンタカーと無人サービスであるカーシェアリングのメリットを組み合わせた新たなモビリティサービス「タイムズカー」(2019年10月より本格展開)などの立ち上げにおける業務執行を統括。
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クルマの貸出方式の多様化や稼働効率を上げる在庫管理の徹底など、事業運営モデルの抜本的な改革に力を入れて取り組んでいる。

■カーシェアと駐車場を一体運営、一極集中より「点在型」に
Q ご経歴やカーシェアリングサービスの立ち上げ時についてお聞かせいただけますか?

大塩氏 駐車場事業の東日本の責任者を務めるなどしたあと、5年ほど前からは主にレンタカーを担当しており、今年に入ってからはレンタカーとカーシェアの強みを組み合わせた新しいモビリティサービス「タイムズカー」のサービス構築・立ち上げを担当しています。

当社グループがカーシェアリングサービスを開始したタイミングでは、駐車場事業を担当していました。そのため、カーシェアリング車両の置き場所となる駐車場について頻繁に調整を行いました。サービスを利用してもらうためには、身近にそのサービスがあるということを実感してもらわなければなりません。サービスを開始した2009年当時でも駐車場件数は約9000件あったことは、大きなアドバンテージだったと思います。

とは言え、「カーシェアリング」という言葉も一般的ではなかったため、カーシェアリングの立ち上げを担当していたメンバーは試行錯誤の連続で、とても苦労していました。近隣の状況から利用を見込んで車両を設置し、仮説通りの利用があればその周辺にもさらに設置したり、見込み違いで全く利用されない場合にはその理由を検証したりして、車両の設置場所に関する知見を集め、それを他のエリアにも展開するというように広げていっていました。

Q カーシェアサービスを展開する上で重視した点は?

大塩氏 便利なサービスと感じてもらうためには、お客様の身近でサービスを提供する必要があります。そのため、とにかく車両配備を進めていました。お客様がついてから車両を増やすのではなく、まずは車両を配備してお客様を呼び込む、という展開をしていました。2014年10月期にはじめて黒字化しましたが、車両配備のペースを落としていれば、もっと早い時期に黒字化できていたと思います。

また、駐車場とカーシェアリングの大きな違いは、駐車場は「目的地」近くにあるのに対し、カーシェアリングは「出発地」の近くにあるという点です。そのため、生活動線上にカーシェアリングステーションがある、ということを認知してもらうことが重要だと考え、目に付きやすいようカーシェアリング車両が設置されている駐車場にのぼりを数多く付けました。

また、利用方法も知られていなかったため、全国各地の駐車場や商業施設で説明会を開催し、利用方法のご説明や質問に対する回答を行うとともに、時には車両を展示して利用体験の場も提供しました。

車両配備とともにこうした取り組みを進めていった結果、おかげさまで会員数が増えていきました。

Q 現在利用できる車の種類についてはどのような状況ですか?

大塩氏 現在、カーシェアリングで提供している車種は30です。どなたでもお使いいただきやすいようコンパクトカーが中心となっていますが、商用車や輸入車、ミニバンといった車もラインナップしています。いつも同じ車種のほうが安心して運転できるという方もいれば、気分に応じて車種を変えたいという方もいて、お客様のニーズは様々です。我々としては、お客様の利用シーンに応じた車をご用意することで利便性を向上させていきたいと考えています。

■成功のカギは、多様なニーズにどう対応するか
Q カーシェア市場の成長性と成功のカギは?

大塩氏 カーシェア市場は日本でまだまだ拡大が続くと考えており、求められるニーズに応えていければ確実にチャンスはあります。車の使われ方は、短い時間や長い時間、家の近くや旅行先などでというように、さまざまです。このような多様なニーズに対してどういうサービスを供給できるかということに、成功のカギがあると考えています。

Q 駐車場とカーシェア台数のバランスは?

大塩氏 特に何割ということは決めていません。カーシェアリングのニーズと駐車場のニーズのバランスがどこでマッチするか、ということを見極めることが重要だと考えています。

自動運転ラボ 街のタイムズパーキングを見ると、感覚的には10~20台規模の駐車場だと大体2台ぐらいはあるイメージですね。

大塩氏 「タイムズパーキングに行けばタイムズカーシェアが使える」がコンセプトですから、理想としては、すべてのタイムズパーキングにタイムズカーシェアを設置したいと思っています。

■「カーシェア×広告」、利用者にクーポン発行も
Q カーシェア×広告の取り組みは?

自動運転ラボ カーシェアの普及には低価格化も重要かと思います。広告で利益をあげれば、利用料金を下げることができるかと思います。サービスを安価に提供するために取り組まれていることはありますか?

大塩氏 サービス連携している企業様の広告をカーナビ画面に掲出するという取り組みは行なっていますが、現時点ではそれ単体での収益ということは考えていません。カーシェリングを利用される会員様に行き先を提案し、実際にその場所に行っていただければ特別サービスを受けられるといった仕組みをご用意することにより、会員様、連携施設それぞれにメリットを提供できます。カーシェアリングの便利さはもちろん、利用する楽しさのようなことも体験いただくことがさらなる普及にもつながると考えています。

一方で、我々は以前から「たのしい街」というエリアプロモーションサービスを展開しており、駐車場のユーザーに利用エリアの店舗情報や施設情報などを提供しています。この枠組みを活用し、例えばカーシェアの利用者に近くの店舗のクーポンなどを発行するような仕組みができないか、などとも考えています。

■伸びるインバウンド需要、対応を強化
Q 訪日需要への対応は?

自動運転ラボ 外国からの旅行者に向けたサービスは、国内向けのシェアリングやレンタカーとは別の設計が必要になってくると思います。インバウンド需要への対応で考えられていることがあれば、是非お伺いしたく思います。

大塩氏 インバウンド向けはレンタカーのみの展開ですが、訪日外国人の方の利用は非常に増えています。これからも増えていくと考え、ここ数年は取り組みを強化してきています。ただし、国際免許など手続き上で注意しなければいけない部分もあり、現場で徹底しています。

初めてご利用いただく方にはナビの操作や法令などお伝えすることが多く、1台ご利用いただくまでに1時間以上接客させていただくことも珍しくありません。一方で最近はリピーターの方も増えてきております。そういったお客様向けにとっては、「素早く借りて素早く返せる」ということが価値になると考えています。

Q 空港におけるカーシェアの普及状況は?

大塩氏 世界の空港と比べると日本の場合、カーシェアやレンタカーの活用は少ないのが現状です。空港によっては車の貸し出しカウンターが空港の中にないところもありますよね。一方で海外ですと、レンタカーやカーシェアリングが交通インフラの一部として非常に身近です。ただ最近は日本でも空港の民営化などにより、ユーザーの利便性を考えて空港の価値を上げていく取り組みが進んでいます。

■「乗り捨て型」、需要の偏りと回収が課題
Q カーシェアサービスにおける乗り捨て利用の可能性は?

自動運転ラボ 日本ではまだ「乗り捨て型」のカーシェアは普及していませんが、今後広がる可能性はありますか?

大塩氏 例えばドイツでは乗り捨て自由なカーシェアリング事業者がいくつかあり、行政とタイアップしてサービスを提供しています。空港に行くと100台くらいカーシェア車両があって、予約なしで空いている車を利用して、特定エリア内の乗り捨てOKな場所なら乗り捨てが可能です。利便性を追求するとこのようなサービスが究極ですが、ビジネスモデルとしてきちんと成立するのかという部分は課題ですね。

自動運転ラボ どのような点が課題になるのでしょうか?

大塩氏 現実論で言うと、需要が偏ってしまうのです。朝の時間帯は郊外から市街地に集まり、夕方以降は郊外に出ていく流れがどうしても発生します。その点、空港と市街地は出入りの車のバランスが合いやすいので、現在は我々も空港に限定してワンウェイ利用可能なステーションを設置しています。

自動運転ラボ 車の回収や移動のコストを考えると現実的ではないということですね。

大塩氏 今までのカーシェアリングだけの仕組みですと、ワンウェイ乗り捨てサービスは難しい部分が大きいのですが、我々はワンウェイ利用できるレンタカーサービスも持っていますので、その仕組みを使ってカーシェアのお客様にワンウェイを実現していくような商品を作っていきたいですね。

■自動運転技術、カーシェア車両の配送で活用も
Q カーシェアと自動運転の関わりは?

自動運転ラボ カーシェアサービスで自動運転が活用できそうなシーンはありますか?

大塩氏 自動運転がすぐに実現できそうな部分で言えば、空港のレンタカー拠点での車両移動ですね。空港の営業拠点は敷地が広いため車両の回配送だけでも非常に手間がかかる部分です。例えば新千歳空港では約9000坪の敷地で2000台ほどを運営していますので、敷地内で車両が勝手に戻ってくるだけでも非常に価値がありますね。

自動運転ラボ それは自動化する価値は大きそうですね。

大塩氏 仮に人間が運転する車両の後を追従するだけでもかなりコストを抑えられます。実は車の移動コストは非常に大きい部分ですので、ここを自動化できれば、先ほど話題にあがった価格を下げるという部分にもつながってくると思います。

自動運転ラボ 現在は自動運転の完成車は販売されていませんからね。どのように後付けするのかという点は確かに課題ですね。

大塩氏 回配送など人が乗っていない車を届けるという業務は見えないところでたくさんありますので、自動化の大きなテーマになるかもしれませんね。

■レンタカー用の在庫車両を融通し、需要に対応
Q レンタカーとカーシェアの強みを融合した新しいモビリティサービスとして「タイムズカー」を開始しています。サービス開発の経緯や背景を教えて下さい。

大塩氏 カーシェアを使われる方が増えるに伴い、「予約の取りづらさ」が課題の一つとなっていました。現在の会員構成比は、個人対法人でおおよそ6対4となっています。休日は個人会員様のご利用が多く、お使いになりたい日にちや時間帯が重なってしまい、「使いたいのに予約できる車がなく、使うことができない」というお声をいただくこともあります。配備車両を増やすことで対応していますが、間に合わないところもあります。

その課題を解決するため、レンタカー用の車両を融通して、カーシェアとしてご利用いただけるようにしました。

タイムズカーの大きな特徴は、カーシェアリングステーションに配備されている車両が予約あるいは貸し出し済みとなっていても、レンタカー用の在庫車両を融通することにより、さらなる予約にも対応できる点です。

また、これによりチャイルドシートやスタッドレスタイヤの装着といったオプションサービスの対応も可能となりました。今後は、取り扱い車種数を増やすことも検討していきます。

Q これまでの展開状況について教えて下さい。

大塩氏 2019年1月に東京都内2カ所でトライアルを開始しました。その後、5月に1カ所増やしました。トライアルの段階では、タイムズカーシェアの料金体系に基づいて展開していましたが、将来的にレンタカーもカーシェアリングもタイムズカーに集約していくことを前提に、新しい料金体系を策定し、10月から新料金体系での運用となっています。展開箇所数も、241カ所まで拡大しています(2019年11月15日現在)。

利用者の方々からは「カーシェアリングのステーションがないエリアでも利用できるようになったのは便利」、「近隣のカーシェアリングステーションが予約で埋まっている時、これまでは遠いカーシェアリングステーションまで借りにいっていたが、近隣にタイムズカーの拠点ができ予約しやすくなった」といった声を頂いています。

Q 今後、「タイムズカー」はどのように進化させていくのでしょうか。

大塩氏 サービスのメッシュを細かくしてさらにお客様の身近で提供するという取り組みとして、「B」という駐車場シェアリングサービスを利用する仕組みを考えています。「B」は駐車場を貸したい方と利用したい方をマッチングするサービスですが、カーシェア車両の置き場所としても活用できると考えています。

設備投資が必要なく、自宅の駐車場なども登録することができますので、さらにメッシュを細かくして行けます。そこに、お客様のニーズに合わせて車両をデリバリーする仕組みなども組み合わせれば、さらに利便性が高まります。

これまで、長期間の時はレンタカー、短期間の場合はカーシェアといったように、お客様が用途に応じてサービスを使い分けられていました。「タイムズカー」であれば、そういった使い分けが不要になります。サービス拠点と車両数を拡大し、サービスの充実を図ることで、より快適で便利な移動環境を実現したいと考えています。

■【取材を終えて】利便性向上、広告との組み合わせ、自動運転・・・ 続く挑戦

街中で見かけることが多くなってきたカーシェアサービス。そして同社が新たにスタートした「タイムズカー」。パーク24はユーザーのニーズを的確にくみとったサービスの開発に余念がない。広告と組み合わせた仕組みへの挑戦や自動運転技術の活用に関する取り組みについても気になるところだ。今後も注目していきたい。







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