【最新版】アセントロボティクスとはどんな会社? AIで自動運転実現目指すスタートアップ

「アトラス」で自動運転の早期実現へ

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自動運転車の開発において、その命運を握るといっても過言ではないAI(人工知能)。高度な専門性を要求されるため、スタートアップをはじめとした新興企業の活躍が目覚ましい分野だ。

このAI開発において、日本国内の注目株となっているのがアセントロボティクス株式会社(本社:東京都渋谷区/代表取締役:石﨑雅之)だ。優秀なエンジニアが多数集い、自動運転の未来をいち早く創造するため最先端のAI技術開発に取り組んでいる。

アセントロボティクスのAI技術はどういったものなのか。今後グローバルな活躍も期待される同社の技術に迫ってみた。

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■アセントロボティクスの企業概要

東京を拠点に、自動運転車や産業用ロボットに向けたソフトウェア開発を行っているロボティクス・AIの会社で、IBMやOracle、Accentureなど世界のトップ企業の執行役員やパートナー、VP(ヴァイスプレジデント)などの上級ポストを歴任してきた石﨑代表と、AI分野において長年の経験を有し、クラウドサービスなどを手がけるPasona Tquila社やSalesforce社で上級職を務めてきたカナダ出身のフレッド・アルメイダ氏(チーフアーキテクト)が2016年9月に創業した。

社外取締役には、ソニーの家庭向けゲーム機「PlayStation」の生みの親である久夛良木健氏も名を連ねている。10カ国以上の地域から博士号保有者などのトップ技術者が集結したグローバルなメンバーで構成されており、2018年2月末時点での社員数は34人を数える。

研究部門は、AIをロボティクスシステムに応用するための汎用的な学習アルゴリズムの構築を目指し、ディープニューラルモデルや強化学習アルゴリズム、生物学由来のモデルなどを含む機械学習に注力しており、主に深層強化学習や深層学習技術の研究開発、自律制御型各種ロボットシステムのソフトウェア・ハードウェアの研究開発、クラウドコンピューティングシステムとAIアプリケーションの研究開発を手掛けている。

自動運転の分野では、OEMにハイレベルなソフトウェアの提供を行うことで研究開発における実証実験を加速化し、2020年までに複雑な道路環境でも走行可能な自動運転レベル4(高度運転自動化)相当の自動運転技術の実現を目指すこととしている。

ちなみにアセントロボティクスは、自社の公式サイト上における事業紹介では①深層強化学習及び深層学習技術の研究開発②自律制御型各種ロボットシステムのソフトウェア、ハードウェアの研究開発③クラウドコンピューティングシステムとAIアプリケーションの研究開発—の3点を挙げている。

注目企業ながらプレスリリースで自社事業について積極的な発信を行っておらず、同社の最新の取り組みに多くの業界関係者が関心を寄せている。

■アセントロボティクスの自動運転やAIに関する技術

同社のAI技術を象徴するソフトウェアに、2017年11月にリリースした「ATLAS(アトラス)β版」がある。アトラスはAIを用いてAIを学習させるシミュレーションソフトで、仮想空間で効率的に自動運転AIを学習させることを可能としている。

「VRヒューマンインターフェイス」や「3Dシミュレーション環境」、「深層強化学習アルゴリズム」を統合したシミュレーターベースの自動車・産業用ロボット向けAI学習環境を特長としており、AI学習にリアルデータと擬似データの双方を用いることで、リアルデータのみを使用した場合と比較して50倍以上の効率で学習を行うことができるという。

具体的には、2つの競合するネットワークのトレーニングを行うことで、ディープラーニングのアルゴリズムのトレーニングに必要なデータ量を大きく削減し、時間とコストを効率化するためのAI教育の手法「GAN(Generative Adversarial Network)」を活用することで、実世界に近いリアルなシミュレーション環境を構築。この環境にアセントが開発した深層強化学習フレームワークを用いることで、さまざまなアルゴリズムを適用したAI学習を可能とし、必要最小限のデータから学習に必要となる膨大なデータをシミュレーション環境内で生成し、現実世界に対応可能なAIを開発することができる。

また、カメラやLiDAR(ライダー)など、さまざまなセンサーデータをシミュレーション環境内に生成し、複数種類のセンサーを用いたマルチモーダルな環境で実世界を認識可能なAIの開発も行えるほか、VR(バーチャル・リアリティ)を使ったヒューマンインターフェイスを用いることで、複雑なプログラミング無しで自動車の操縦方法やロボットの操作方法を教育することも可能としている。

同社は、このシミュレーターベースのAI学習によるスピードとコストの優位性で、市場競争が激化すると予想されるよりも早い2020年をめどに、自動運転レベル4の実現を目指しており、早期にレベル4を確立させることで、法規制やインフラなど市場の受け入れ環境に合わせて部分的な機能を順次リリースし、OEM にハイレベルなソフトウェアの提供を行なっていく予定という。

■アセントロボティクスに関するニュース
NVIDIAのスタートアップ支援プログラムに認定

2016年11月、GPU(Graphics Processing Unit/画像処理装置)開発最大手の米NVIDIA社がディープラーニングを活用するスタートアップを支援するプログラム「NVIDIA Inception Program」のパートナー企業として認定されたことを発表した。

認定を受けることで、NVIDIAのグローバルエコシステム(ディープラーニングエキスパートやソートリーダーから構成される大規模なネットワーク)へのアクセスや、GPUハードウェア付与の申請、最新のソフトウェアへのアクセス、最新技術へのリモートアクセス、マーケティング目標に合ったサポートなどを受けられるほか、次世代のAIリーダー候補としてNVIDIAの投資対象になるという。

東京都の起業家支援プロジェクト採択 ドイツ進出を支援

2018年1月、東京都が主催する起業家支援プロジェクト「X-Hub Tokyo」において、ドイツ進出支援サポート対象企業に採択されたことを発表。X-Hub Tokyoは、東京から世界を目指す起業家や世界のイノベーションエコシステムの関係者が集うプラットフォームで、世界市場を目指す起業家に対する情報提供をはじめ、東京発グローバルスタートアップとなるポテンシャルのある起業家に対しグローバル市場へのアクセスの機会を提供するもの。ドイツ進出支援サポート対象企業には、同社のほか多重層のコネクテッドカー向けサイバーセキュリティソフトウェアの開発を手掛けるTrillium株式会社など5社が採択された。

同年3月に行われた成果発表で同社は、欧州の企業との共同研究や製品販売、拠点の設立など見越し、ドイツの自動車メーカーとの商談を進めていく構えを見せた。

11億円の資金調達発表 公道実証実験や海外拠点開設へ

2018年3月、SBIインベストメント株式会社をリードインベスターに個人投資家複数名を引受先としたシリーズA投資ラウンドにおいて、約11億円の第三者割当増資を実施したことを発表している。

創業以来初となる資金調達により、AIの研究開発を加速させるとともに、最新のLiDARやカメラなどのセンサー、サーバーを備えた自動車を複数台構築し、公道における自動運転の実証実験を進めていく。また、組織の規模を拡大し、世界各国から優秀なリサーチャーやエンジニアの採用を進めるため、オフィスの移転や海外拠点の開設についても検討を進めていく。

実証実験では、データの収集をはじめ、ソフトウェアのフレームワークとなるロボットAI教育環境「ATLAS」の検証も行っていくこととしている。

【参考】アセントロボティクスの資金調達については「AI研究のアセントロボティクスが11億円調達、自動運転実験や技術者採用など加速へ」も参照。

■自動運転の早期実現に向けての期待

深層学習など、新たな手法を用いたAI研究が活性化してきたのは最近のことで、自動車メーカーや部品メーカーは自社の研究体制を整備するだけでは追い付かず、高い専門性を持ったスタートアップへの出資やパートナー契約などにより、高度な技術の獲得に躍起となっている。

アセントが提供するアトラスも、自動車メーカーなどが活用してこそ本領を発揮するシステムであり、アトラスを使用することによって自動運転の開発が効率化され、完成の早期実現が図られることは、厳しい自動運転競争を乗り切るための重要な要素だ。

欧米に比べ遅れがちといわれる日本の自動運転開発だが、こういった日本発のスタートアップによる新技術が国際競争を勝ち抜き、その構図を塗り替える日を心待ちにしたい。

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