無人の自動運転タクシーで「忘れ物」をしたらどうなる?

こうした疑問がスタートアップに大きな成功をもたらすかも



タクシーが自動運転化すると乗務員がいなくなると言われている。自動運転車が当たり前の時代になって車両の価格も下がっていけば人件費が浮くぶん運賃の低価格化に結びつき、ドライバーの高齢化による事故の懸念という点からも堀江貴文氏のように無人化の支持者が多い。


しかし、タクシーに自動運転技術が導入されて無人化された時代になったら、無人タクシーを利用した人はある点において「あぁ、やっぱり無人化されたらされたで不便な点もあるなぁ」と思うだろう。それは、車内への忘れ物に気付いてくれる人がいなくなるという点だ。

こう書くと、車載システムが音声で「忘れ物はありませんか?」と利用者に呼び掛ければいいと思うかもしれない。しかし、乗る度にこうした音声が流れるのに慣れると、恐らく忘れ物のチェックをしない人も出てくる。これについては乗務員が声掛けをしてくれる現在も同じかと思うかもしれないが、今の時代は乗務員が目視で忘れ物がないか二重チェックするという「セーフティーネット」がある。

では自動運転タクシーに乗ると忘れ物をしやすくなってしまうのか。いや、そうはならないだろう。恐らく車内向けのセンサーを使った物体認識技術が無人タクシーに導入され、デフォルト(=誰も乗っていない状態)の3次元点群データと異なる状況が降車後に検出されたら、降りた人に向かって車外に取り付けられたスピーカーから「忘れてますよ!」と呼び掛けるソリューションなどが開発されるはずだ。


こうしたことを考えると、自動運転車におけるセンサーの重要度はやはり高いことに改めて肯ける。自動運転車やADAS(先進運転支援機能)車用の車外向けセンサーだけでも、2030年には現在の4倍近い3兆2700億円(矢野経済研究所・2018月7月)規模まで市場が拡大すると言われている。車内向けのセンサーを入れれば、市場はもっと大きくなるはずだ。

自動運転車自体の開発やサービスとしての無人タクシーが模索されていく中で、恐らくさまざまなハードルがぶち当たるはずだ。恐らく忘れ物問題もその一つのはず。ただこうしたハードルは逆にチャンスだ。例えばあるスタートアップがそのソリューションを開発できれば大きな売上を立てられるかもしれないし、巨額で会社をバイアウト(売却)し、経営者は成功(※バイアウトを「成功」と捉えるかどうかは別として)を収めることができるかもしれない。

「無人の自動運転タクシーで『忘れ物』をしたらどうなる?」という疑問が、将来の成功の種になるかもしれない。そんなサクセスストーリーが決して夢物語ではないのも、2050年には770兆円産業になるとも言われる将来性を秘めた自動運転領域ならではであると言えそうだ。

【参考】関連記事としては「AI自動運転やMaaS、ライドシェアなどの将来市場規模予測10選」も参照。



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