イーロン・マスク氏のAI戦略 EV自動運転向け、いやいずれ脳にも? テスラが自社開発

神経科学技術にも関心示す



テスラ社のイーロンマスクCEO=出典:Tesla Owners Club Belgium / Flickr (CC BY 2.0)

米電気自動車(EV)大手テスラ・モーターズは電気自動車の製造とともに、車両に搭載する自動運転技術の開発にも力を入れている。同社が既に発表している電気自動車のモデル3やモデルS、モデルXには自動運転技術が搭載され、先端技術が詰め込まれたテスラ車には世界から注目を集めている。

そんなテスラの最高経営責任者(CEO)であるイーロン・マスク氏が最新の収支報告において、独自の自動運転用AI(人工知能)チップを開発していたことを正式に発表した。イーロン・マスク氏はこれまで電気自動車や自動運転技術だけではなく、AI信者と言えるほどAI開発にも打ち込んできた。これら3つの先端技術が融合したテスラの次世代カーへの関心はさらに高まりそうだ。


自動運転技術の開発や電気自動車(EV)の製造にも力を入れるイーロン・マスク氏とは、どんな人物なのだろうか。

■イーロン・マスク氏ってどんな人物?

イーロン・マスク(Elon Musk)氏は1971年6月28日に南アフリカ共和国で生まれ、現在はアメリカで実業家や投資家として活躍している。2016年にフォーブス誌が発表した「世界で最も影響力のある人物ランキング」では21位に選出され、世界的にもその名前は有名だ。

イーロン・マスク氏はエンジニアとしての顔も持つ。10歳のときに購入したコンピュータを使ってプログラミング技術を磨き、その後、さまざまな先端技術に関心を示していった。

オンラインコンテンツ出版ソフトの開発を手掛けるZip社を創業したのがイーロン・マスク氏の1社目の起業となり、その後、1999年にはPayPal社の前進となったオンライン支払いサービスを手掛けるX.com社の共同設立者となる。2002年にはロケット開発を事業とするスペースX社を起業している。


そして電気自動車を製造するテスラ・モーターズへの出資を行っていたイーロン・マスク氏は、2008年に同社の会長兼CEOとなり、現在に至る。

■イーロン・マスク氏のAIにかける思いとは?

同社のAI開発をめぐっては過去にもたびたび話題になっており、2017年末に開催されたAI関連の会議「神経情報処理システム(NIPS)」において、マスク氏自らが汎用AIや脳コンピューター・インターフェイス、自動運転に至るまでAI開発の可能性について言及していたという。故に、今回の発表はマスク氏にとっては既定路線と言える内容で、開発に一定のめどが立ったものと思われる。

マスク氏は自動運転以外にも、AIを研究する非営利団体OpenAIへの参加や、神経科学技術を開発するスタートアップ企業Neuralink(ニューラリンク)への投資を行っている。詳細は明らかにされていないが、ニューラリンク社は埋め込み型のデバイスを介して、脳とコンピューターの間で大量の情報をやり取りするインターフェースの技術開発を行っているという。

AI開発にのめり込むマスク氏。ひょっとしたら、極秘で自分の脳に自動運転向けのAIチップを埋め込む研究を進めているのではないだろうか。矢継ぎ早に新たな取り組みを進めるマスク氏なら、2020年まで、いや2018年内にも自身にAIを実装するのかもしれない。いや、もしかすると、今までの奇抜な言動もすでにAI化されたマスク氏が担っていたのかもしれない。


【参考】イーロン・マスク氏のAI開発については「AIと脳波を接続だと…? イーロンマスクの野望と自動運転とテスラ|自動運転ラボ 」も参照。

■独自開発AIチップはテスラの3モデルに搭載へ

新AIチップは「モデルS」「モデル3」「モデルX」に向けた第3世代のオートパイロット用ハードウェアHW3.0に搭載される見込みで、2018年秋冬に専用のAIハードウェアの生産を開始するという。

現行モデルに搭載されている第2世代のオートパイロットシステムはNVIDIA(エヌビディア)のDRIVE PX2が使用されているが、DRIVE PX2の画像処理能力が200フレーム/秒に対し、新AIチップの処理能力は2000フレーム/秒と10倍の能力を持つとマスク氏は語っている。


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