Amazonを虜にする自動運転トラックベンチャー「Plus」とは?

米中に拠点、SPAC上場の計画も発表

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出典:Plus公式サイト

米アマゾンは、自動運転トラックの技術開発を手掛ける米スタートアップPlusに車両1,000台分のシステムを発注し、Plusの発行済み株式を最大20%取得する協議も進めている。

巨大テック企業であるAmazonが魅力を感じているPlusとはどのような企業なのだろうか。

■米中に拠点を有するPlus

Plusは2016年に誕生した中国系スタートアップで、米シリコンバレーに本社機能、中国に研究開発拠点を設けている。ロボットタクシーでもなくラストワンマイル宅配でもなく、商業輸送の要となる長距離・輸送用トラックに特化した自動運転技術の開発を進めている。

創業者は現在のCEO(最高経営責任者)であるDavid Liu氏、COO(最高執行責任者)であるShawn Kerrigan氏、CTO(最高技術責任者)であるHao Zheng氏、そしてチーフエンジニアであるTim Daly氏の4人だ。

アメリカで公道試験許可、公道実証を加速

アメリカにおいては、2017年にカリフォルニア州車両管理局(DMV)からセーフティドライバーが同乗する公道試験許可を取得したほか、2019年には世界最大の技術見本市「CES 2019」で自動運転レベル4の技術を搭載したトラックの展示やデモを行った。

その後も、さまざまな気象条件での試験や長距離輸送実証を積極的に行っており、自動運転システムの商用展開のロードマップも公表している。

中国ではシステム搭載トラックの量産開始へ

中国においては2018年にFAW(一汽グループ)の大型トラックメーカーFAW Jiefangと提携し、自動運転の実証実験を開始した。2019年には共同開発のための合弁会社を設立し、公道での実証実験を加速させた。

2020年11月には自動運転トラックの国家認証試験に合格し、2021年末にはPlusの自動運転システムを搭載したFAW Jiefang製トラックの量産が始まる見通しだ。

欧州では伊IVECOとシステム搭載で合意

欧州では、トラックなどの商用車メーカーである伊IVECOと、将来的に同社の車両にPlusの自動運転システムを搭載することで合意している。

■大型資金調達を続々実施、SPAC上場へ

資金面においては、2021年2月に香港の投資銀行や中国の自動車部品サプライヤーWanxiangなどから2億ドル(約220億円)の資金調達を行い、3月には2億2,000万ドル(約240億円)の追加の資金調達も実施している。

そして2021年5月には、ニューヨーク市場にSPAC上場する計画も発表している。すでに、SPAC(特別買収目的会社)の「Hennessy Capital Investment Corp. V(ヘネシー・キャピタル・インベストメントV)」との合併に合意したという。

報道などによると、PlusはSPAC上場によって5億ドル(約550億円)を資金調達し、時価総額は33億ドル(約3,700億円)規模となる見通しのようだ。

【参考】関連記事としては「自動運転関連企業の上場ラッシュは継続!AuroraとHorizonも!」も参照。

■【まとめ】技術開発をさらにスピードアップ

ちなみにPlusは、クラウドサービスとしてAmazon Web Services(AWS)、車載OSとしてBlackBerryの「BlackBerry QNX」、LiDARとしてOuster製品、SoC(システムオンチップ)としてNVIDIA製品をそれぞれ採用することを明らかにしている。

資金調達も順調にこなし、技術開発をさらにスピードアップさせるPlusに、引き続き注目していきたい。

【参考】関連記事としては「Waymo、運送大手J.B.Huntと自動運転トラックで貨物配送実証」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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