特許庁はこのほど、「自動運転」や「MaaS」に関連する特許出願技術の動向について、2020年度における調査結果をまとめた。
特許出願技術動向調査は、企業や大学、研究機関などが開発戦略や知的戦略を策定するために、世界中の特許情報を分析したものだ。今回の調査では出願年が2014〜2018年、出願先が日本と米国、欧州、ドイツ、中国、韓国の特許が調査対象となっている。
▼令和2年度特許出願技術動向調査 MaaS(Mobility as a Service)~自動運転関連技術からの分析~
https://www.jpo.go.jp/resources/report/gidou-houkoku/tokkyo/document/index/2020_03.pdf
記事の目次
■「自動運転関連」出願状況:日本が全体の37.5%で最多
自動運転関連技術の出願件数(2014〜2018年)の合計は53,394件で、出願人国籍別では、日本の20,008件が最も多く、37.5%を占めた。
2位はアメリカの11,311件で、ドイツが7,824件で3位に続いた。4位は韓国で5,359件、5位は中国で4,965件、6位は欧州(独除く)で3,062件だった。
技術別の出願件数ランキング
技術別の出願件数ランキングは以下の通りとなっている。
<技術区分ランキング>
1位:車載センサ(38,783件)
2位:認識技術(31,130件)
3位:判断技術(28,001件)
4位:運転支援システム(22,533件)
5位:HMI(21,666件)
6位:自動運転制御装置(19,028件)
7位:通信技術(13,877件)
8位:人工知能(4,902件)
9位:遠隔監視・遠隔操作(4,087件)
10位:運行設計領域(2,349件)
日本の特許出願は「車載センサ」「認識技術」「判断技術」「運転支援システム」「HMI」「自動運転制御装置」「通信技術」「運航設計領域(ODD)」において、他国と比較して多かった。「人工知能(AI)」と「遠隔監視・遠隔操作技術」に関しては、アメリカの出願件数が最も多かった。
■「MaaS関連」出願状況:中国が全体の34.0%で最多
MaaS関連技術の出願件数(2014〜2018 年)の合計は9,643件で、出願人国籍別では中国が3,283件で全体の34.0%を占めトップとなった。
2位は日本の2,173件、3位はアメリカの2,132件、4位は韓国の1,020件、5位はドイツの461件、6位は欧州(独除く)の350件だった。欧州の出願件数は他国よりも少ないが、論文発表件数は多い傾向にあるという。
Mobilityサービス別の出願件数ランキング
Mobilityサービス別の出願件数ランキングは以下の通りとなっている。
<Mobilityサービス>
1位:鉄道(1,550件)
2位:バス(1,529件)
3位:タクシー(1,308件)
4位:カープーリング(1,073件)
5位:車両シェアリング(960件)
6位:ライドヘリング(616件)
7位:車両レンタル(371件)
8位:ラストマイル(264件)
9位:駐車場(214件)
Mobilityサービス関連では、既存の公共交通機関である「鉄道」「バス」「タクシー」で中国の出願件数が最も多かった。「カープーリング」「ライドヘイリング」「ラストマイル」では米国の出願件数が最も多かった。
MaaSアプリにおける技術別の出願件数ランキング
MaaSアプリにおける技術別の出願件数ランキングは以下の通りとなっている。
<MaaSアプリケーション>
1位:経路検索(2,178件)
2位:手配(1,069件)
3位:マルチモーダル(919件)
4位:予約(799件)
5位:決済(741件)
6位:案内表示(575件)
MaaSアプリ関連では、「手配」や「決済」の区分において中国による出願件数が最も多く、「経路検索」と「予約」においてはアメリカが最も多かった。「マルチモーダル」と「案内表示」では日本と中国が拮抗する結果となった。
MaaS運行管理・手配における技術別の出願件数ランキング
MaaS運行管理・手配における技術別の出願件数ランキングは以下の通りとなっている。
<MaaS運行管理・手配>
1位:顧客管理(1,698件)
2位:運行計画作成・手配(1,558件)
3位:運行管理(1,462件)
MaaS運行管理・手配関連では「顧客管理」でアメリカが最も多く、「運行計画作成・手配」と「運行管理」では中国が最も多かった。
■【まとめ】自動運転やMaaSに関する特許出願は一層増加へ
新型コロナウイルス感染症が世界で拡大したことにより、人々の生活様式は大きく変わった。非接触(コンタクトレス)が注目される中、自動運転への注目度は高まっている。
MaaSへの期待感も高まっている。複数の移動手段を統合するMaaSが広まることで、人々の移動がより便利になっていくことなどが期待されるからだ。日本国内でもMaaSが実サービスとして提供されているケースも出てきている。
こうした中、自動運転やMaaSに関する特許出願は一層増えていくはずだ。次回の調査結果にも注目したい。
【参考】関連記事としては「2020年の「自動運転」関連特許、トヨタは195件 公知日ベースで集計」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)