自動運転に自賠責?国交省の基本政策懇談会、話し合われたことは?

サードステージの取りまとめ資料を読み解く

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国土交通省はこのほど、同省が研究開発すべき課題や実施すべき施策などを議論する「国土交通技術行政の基本政策懇談会」において新たに取りまとめた結果を発表した。2018年の中間取りまとめ、2020年のセカンドステージ取りまとめに次ぐ、サードステージの取りまとめだ。

この記事では、最新のサードステージの取りまとめの概要を解説していく。

▼【概要】国土交通技術行政の基本政策懇談会 サードステージとりまとめ
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001408012.pdf
▼【全文】国土交通技術行政の基本政策懇談会 サードステージとりまとめ
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001408013.pdf

■国土交通技術行政の基本政策懇談会の概要

同懇談会は、第4次国土交通技術基本計画のもと、国土交通分野における科学技術の総合的かつ計画的な振興を図るため、国土交通省が研究開発すべき課題や実施すべき施策などについて議論する場で、2018年6月から2020年12月までに計17回議論の場を設けている。

2018年11月に中間取りまとめ(ファーストステージ)、2020年7月にセカンドステージ取りまとめをそれぞれ発表している。以後開催した6回の会議内容をまとめたものがサードステージ取りまとめだ。

サードステージでは、新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえた「分散型の新しい国の形」、及び2050年カーボンニュートラルの実現に向けた「地球温暖化対策の強化」を大きな枠組みに据え、主要技術政策として「新たなモビリティサービス」「都市・地域マネジメント戦略」「物流・国際ゲートウェイ」「防災・減災、国土強靱化」「カーボンニュートラル」をテーマに議論を進めてきた。

以下、モビリティ関連の主要技術政策が盛り込まれた「新たなモビリティサービス」「都市・地域マネジメント戦略」「物流・国際ゲートウェイ」の3つに焦点を当て、紹介していく。

出典:国土交通省
■新たなモビリティサービス
補償や安全性について深い議論を

新たなモビリティサービスの現状や課題として、「自動運転技術に対するユーザーの理解不足や不適正利用が問題」「事故想定や被害者の補償等など社会システムとして保険のあり方が重要」「都市や道路、街路のリデザインが重要」「国が保有する有益なデータに対し、データカタログの整理を計画的に進めるべき」などの意見が出された。

また、政策の方向性としては以下の意見などが挙げられた。

公共交通サービスとデータガバナンスのあり方については、同省も公共交通分野にもっと踏み込み、欧米のように政府が責任を持つことや、道路運送法などの法体系の見直し、公共交通において民間事業者が所有するデータの相互利用やデータガバナンスの在り方の検討などが必要とする意見が出された。

安全性能の担保や保険制度、規則などを検討

こうした意見や方向性を踏まえ、早急に取り組むべき施策として、以下を挙げている。

■都市・地域マネジメント戦略
通信インフラ整備を国交省で考えていくべき

都市・地域マネジメント戦略においては、以下の意見などが出された。

政策の方向性としては、以下の意見などが出された。

都市・地域マネジメントの観点でスマートモビリティやMaaS推進

早急に取り組むべき施策としては、以下などが挙げられている。

■物流、国際ゲートウェイ
プラットフォーマーの育成やデジタル化の推進を

物流関連では、「(物流は)ビジネスモデルとして限界。物流システムを社会システムと捉え、産官民の協働が必要」「さまざまな取引相手とグループ形成しエコシステムを確立する必要があるが、日本ではプラットフォーマーが育っていない」といった課題が指摘された。

また、政策の方向性としては「代替路を形成するしなやかなサプライチェーンを構築すべき」「物流課題の解決は効率化に尽きる。標準化・共通化による効率的運用やデジタル化を進め、マクロ的視点から必要な支援を行うことが大事」など提言された。

また、物流DX化に向けては、以下のような意見が出された。

物理的なシームレス・コンタクトレスを推進

具体的な施策としては、以下などを挙げている。

■【まとめ】官民連携した施策で新たな交通社会実現へ

「CASEのSに安全・リカバリーを踏まえ『Secured(保障された・安全性が確保された)』を加えてはどうか」といった発想が興味深い。

現実的にはすでに国際的に定義が共有されているCASEの解釈を変えるのは難しいが、自動運転システムの安全性能を客観的に評価する基準が今後求められる可能性があるからだ。

開発・実用化が加速する自動運転レベル4は、自動運転システムとハードウェアによってそれぞれ走行エリアや走行速度といったODD(運行設計領域)が異なる。また、フェールセーフ・冗長性の点においても一つひとつが異なる仕組みを採用している。

レベル4といっても同じものは二つとなく、それゆえ個々の安全性も異なるのだ。さまざまな自動運転システムが社会に送り出される中、個々のシステムの能力や安全性を客観的に評価する仕組みが将来必ず必要になる。こうした客観的評価の枠組みは、保険や補償の分野をはじめ、自動運転システムに対する理解促進にも役立つ。

スマートシティやMaaS推進、物流のデジタル化など、取り組むべき課題は山積しているが、いずれも民間だけではなし得ず、国や行政との本質的な連携が必須だ。国交省が担うべき役割は非常に多いが、未来を見据えた施策の実現に期待したい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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