自動運転レベル4の自家用車「いつ実現できます?」 警察庁が事業者ヒアリング

1主体が「2020年代前半」との意向

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警察庁はこのほど、「自動運転レベル4」(高度運転自動化)の開発や実証を進める事業者を対象に、技術開発の方向性や各種課題に関するヒアリングを実施し、その結果などをまとめた「自動運転の実現に向けた調査研究報告書」を発表した。

ヒアリング内容は、自動運転システムの開発状況や実用化目標時期をはじめ、課題や要望などに及んでいる。

この記事では、調査研究報告書をもとに、開発各社の動向や抱える課題などに迫っていく。

▼自動運転の実現に向けた調査研究報告書 ※ヒアリング結果はPDF41ページ目から
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/council/jidounten/R02nendo/R02report.pdf

■ヒアリング調査の概要

ヒアリングは、自動運転の研究開発や実証実験に先進的に取り組んでいる企業など34主体を対象に実施し、レベル4の技術開発の方向性や各種課題などについて調査した。

このうち28主体から回答があった。レベル4を開発中などと回答したのは、移動サービス分野において23主体、物流サービス分野において14主体、自家用車分野において15主体となった。

設問は、自動運転システムの開発状況と実用化目標時期、運行ルートの設定、関与者及び運行主体、信号情報などの活用、現行法上の交通ルールへの対応、ルール違反や交通事故時の法上の責任、その他となっている。

以下、移動サービス、物流サービス、自家用車の分野別に主だった設問をピックアップし、紹介していく。なお、設問ごとに回答数が異なるほか、各分野で設問が重複しており、回答傾向も類似していることから、物流、自家用車分野における結果の一部は割愛する。

■移動サービス分野
4主体が2020年代前半の実用化を目指す

移動サービスでは、自動車メーカー8主体、大型車メーカー3主体、研究機関2主体、その他独立系メーカーや自動車部品メーカー10主体が回答した。

実用化目標時期については、4主体が「2020年代前半」、3主体が「2025年前後」、7主体が「2020年代後半又はそれ以降」、6主体が「未定」と回答した。

出典:警察庁(クリックorタップすると拡大できます)

ODDに関しては、想定している運行ルートは6主体が「一定ルート」、5主体が「一定ルート・一定エリア内」、4主体が「一定エリア内」と回答した。一定ルートは自動運転バス系、一定エリア内は自動運転タクシー系の開発を進めているものと思われる。

出典:警察庁(クリックorタップすると拡大できます)
「関与者」と「運行主体」に求められる要件は?

「関与者」(自動運転の運行に携わる者)に求められる役割については、「車両周辺の状況把握」「緊急時の関係機関への連絡」「車両の運行状態や車内の監視」「緊急時の停止指示」などが挙げられた。

また、関与者に求められる能力では「自動運転の技術的特性・車両特性に関する知識」「運行管理の知識」「運行エリア・ルートに関する知識」などが挙げられている。

「運行主体」(サービス事業者)に求められる要件としては、「状況把握や緊急時対応をするための組織や設備を備えていること」「自動運転移動サービスに関わる営業や運行に必要な資格などを有していること」などが挙げられている。

V2Xを求める声も多数

信号情報関連では、レベル4実用化にあたり必須となる情報として「信号情報」「工事情報」「通行止めなどの交通規制情報」「緊急自動車の接近情報」などが挙げられた。

また、必要なインフラとしては「信号機などへの通信インフラの設置(V2X)」「道路標識の視認性を確保するメンテナンス」「死角となる可能性のある場所へのカメラや障害物検知センサーなどの設置」「磁気マーカー」が挙げられた。

情報インフラのうち自社で費用負担してでも整備・管理・使用したいものとしては、1主体が「信号の情報提供装置を含むあらゆる路側設置物」、2主体が「関係機関との協議が必要」、1主体が「個社で負担することは困難」、9主体が「なし」と回答している。

自動運転開発企業が単独で情報インフラを整備するのはやはり困難なようだ。将来的なサービスの全国普及を見越し、公共インフラとして整備すべきシステムを明確化し、道路そのもののバージョンアップを図っていく方策が求められそうだ。

交通違反や事故の責任所在は意見分かれる

現行法上の交通ルール関連では、緊急自動車などへの対応において、「システムが認識・対応」が3主体、「システムが認識し、システムまたは関与者が対応」が4主体、「システムが認識し、関与者が対応」が2主体、「関与者が認識・対応」が2主体、「現時点ではODD外」が3主体となった。

出典:警察庁(クリックorタップすると拡大できます)

交通事故の場合の措置の報告・救護措置・危険防止の措置への対応では、「システムが認識し、関与者または外部サービス(警備会社など)が対応」が7主体、「システムまたは関与者が認識し、関与者が対応」が1主体、「関与者が認識し、関与者または外部サービスが対応」が3主体となっている。

出典:警察庁(クリックorタップすると拡大できます)

その他、自動運転システムが対応困難な現行法上のルールへの対応では、「横断歩道の歩行者を検出し、一定時間経過後、歩行者に動きがない場合は徐行での通過を開始できるようにしたい」といった意見や、「ぬかるみや水たまりの通行は現時点で対応方法がなく、ODD外としている」といった声などが寄せられている。

交通ルール違反や交通事故時の法上の責任では、自動運転車が交通ルール違反や事故を起こした際の責任は「製造者」が3主体、「製造者または運行供用者」が3主体、「運行供用者」が2主体、「運行供用者または関与者」が1主体、「関与者」が1主体となっている。

出典:警察庁(クリックorタップすると拡大できます)

安全性を担保すべき製造者をはじめ、運行管理に責任を持つべき運行供用者や関与者など、複雑な責任関係をしっかり精査しなければならないところだ。

■物流サービス分野
3主体が2020年代前半を目標に設定

物流サービスでは、自動車メーカー5主体、大型車メーカー4主体、研究機関1主体、その他4主体が回答した。

実用化目標時期については、3主体が「2020年代前半」、2主体が「2025年前後」、5主体が「未定」と回答した。

出典:警察庁(クリックorタップすると拡大できます)

ODDに関しては、想定している運行ルートとして、「一定ルート」が3主体、「一定ルート・一定エリア内」が3主体、「一定エリア内」が2主体となっている。

出典:警察庁(クリックorタップすると拡大できます)

自動運転実用化に向けた課題や要望では、「運転操作に関するもの以外の運転者の義務について、責任を負う主体の明確化」「違法駐車の低減、実勢交通流と乖離するケースへの対応」「一般車両への優先走行の権利など、法律的な裏付け」といった声が寄せられている。

■自家用車分野
1主体が2020年代前半のレベル4目指す意向

自家用車分野では、自動車メーカー10主体、大型車メーカー1主体、研究機関1主体、その他3主体が回答している。

実用化目標時期については、1主体が「2020年代前半」、2主体が「2020年代後半」、1主体が「2030年以降」、1主体が「詳細は機密」、6主体が「未定」と回答した。

出典:警察庁(クリックorタップすると拡大できます)

ODDに関しては、想定している運行ルートとして、「一定ルート」が4主体、「一定エリア内」が3主体、「未定」が4主体となっている。一定ルートは、地域のコミュニティバス路線のような一定の周回・往復ルートや自動車専用道などの特定の区間を想定している。一方、一定エリア内はオンデマンド運行や自動バレーパーキングなどを想定しているようだ。

出典:警察庁(クリックorタップすると拡大できます)

高速自動車国道などにおける故障の場合の措置への対応においては、「停止表示器材に代わる表示をシステムが行う」が2主体、「停止表示器材に代わる表示をシステムが行う、または関与者が対応を行う」「システムがハザードランプなどによって車外報知を行うほか、関与者への対応を促す報知も行う」「関与者が対応する」がそれぞれ1主体となっている。

自動運転実用化に向けた課題や要望では、「制限速度と実勢速度の乖離」「自動運転システム搭載車両と非搭載車両が混走した場合に生じる課題」などが挙げられている。

■【まとめ】レベル4自家用車の新たな動向に注目

2020年代前半の実用化を目指す動きは、移動サービスで4主体、物流サービスで3主体、自家用車で1主体となっている。

自家用車関連では、周回・往復ルートやオンデマンド運行などを想定した自動運転開発も行われているようだ。詳細は不明だが、個人所有の自家用車のサービス利用を見越している可能性もあり、新たな取り組みとして要注目だ。

この調査により、責任の所在に関わる法的課題や交通インフラの課題など、解決すべきさまざまな課題が浮き彫りとなっている。万事対応し、早期実用化に向けた取り組みをしっかりと前進させていきたいところだ。

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記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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