ダイナミックマップ基盤には「社会的意義」がある 自動運転への貢献、避難ルートの提示・・・

三菱UFJ銀、ソーシャルローン契約を初成約



ダイナミックマップ基盤(DMP)は2021年7月7日までに、三菱UFJ銀行とソーシャルローンによるシンジケーション方式の実行可能期間付タームローン契約を締結したことを発表した。同社が進める高精度3次元地図(HDマップ)の整備に社会的意義が認められた格好だ。







この記事では、同契約の概要とともに、高精度3次元地図がどのような形で社会に貢献するかを解説していく。

■三菱UFJ銀行とのソーシャルローン契約の概要

ソーシャルローンは、医療や福祉、災害対応など社会的な課題を解決する事業に調達資金を充当することを目的としたローンを指す。今回の契約では、三菱UFJ銀行のほかジョイントアレンジャー(共同幹事)として商工組合中央金庫も加わり、40億円を融資する。

DMPは、この融資でHDマップデータの国内カバレッジ拡大を目指す方針だ。デジタルインフラとなるHDマップを安価で提供することで社会経済的向上とエンパワーメントを引き出し、認知・判断・操作能力に衰えが見られる高齢者や身体障がい者らの運転を支援するほか、自動運転シャトルなどの実用化によって誰もが移動可能な社会に貢献する。

レーン単位のHDマップを活用すれば、災害時において正確な避難ルートの探索が可能となる。また、除雪車が視界不良時でもHDマップを活用すれば周辺環境を正確に把握でき、作業安全性の確保や効率性の向上が見込まれる。こうした点が社会課題の解決に資すると判断され、今回のソーシャルローン契約に結びついたようだ。

■HDマップや自動運転技術の社会的意義
HDマップは一般道路整備のフェーズへ

DMPは、中長期ビジョンとして「Society 5.0」に貢献する高精度位置情報基盤の実現を目指しており、自動運転や先進運転支援システムの高度化・実現をはじめ、インフラ維持管理システムや防災・減災システムなどにも活用できるHDマップの整備を進めている。

HDマップは現在、日本国内の高速・自動車専用道路約3万2,000キロ、米国内26万マイル(約42万キロ)を網羅しており、今後更なるカバレッジの拡大を図る方針だ。

計画では、現在のHDマップの機能を維持しつつ新たな価値と優れたコストパフォーマンスを備えた次世代HDマップの導入を2023年度から導入する。対応路線も一般道へと拡大し、2023年度に8万キロ、2024年度には国内13万キロを整備する予定だ。

海外では、買収した米Ushrがグループ企業として北米向けのHDマップを提供する。国内・海外のデータフォーマットの統一化も図っている。

交通事故抑制や災害時対応などに貢献

HDマップは、自動運転の安全性を高める要素技術だ。DMP設立の目的も、自動運転の実現がベースにある。自動運転技術や高度なADASが実現・普及すると、ヒューマンエラーに起因する交通事故の減少に寄与することが期待される。

交通事故は2020年中に年間約30万件発生している。重大事故を含め、事故の抑制につながる活動や技術の社会的意義は大きい。

また、自動運転技術の普及は、多くの人に移動の自由をもたらす。自家用車をはじめとした自己所有のパーソナルモビリティの自動運転化や、さまざまな自動運転モビリティがMaaSに組み込まれていくことで移動の利便性が大幅に増していく。

判断能力や反射神経などに衰えが出てきた高齢者や、従来運転を諦めざるを得なかった身体障がい者らも自由な移動が可能になる。誰もが自由に移動できる交通社会の理想像だ。

防災や災害分野では、無人走行可能な自動運転技術や計測技術などが役に立ちそうだ。有事の際、二次災害防止の観点から人が立ち入りにくい場所でも自動運転技術を搭載したモビリティなら入っていける可能性がある。

また、LiDARをはじめとした測量技術は、地盤沈下や土砂崩れなどの事後変化をはじめ、事前変化を迅速に読み取り、事故の未然防止に役立てることができるかもしれない。ハザードマップ作製においても有効活用できそうだ。

■【まとめ】HDマップは未知の可能性を秘めるデジタルインフラ

自動運転技術がさまざまな面で社会課題の解決に貢献することが分かった。一方、HDマップはこの自動運転技術を支えるデジタルインフラとして重要な役割を担っており、自動運転実用化への貢献をはじめ、3次元で空間を捉える地理情報としても非常に有用だ。

人間生活に密着した地理情報は、社会課題解決に向けた取り組みのほか、不動産や建設業をはじめ、VR・ARといった技術との相性も良く、さまざまなビジネス展開にも期待が寄せられる。

生活基盤・道路交通を支える新たなデジタルインフラとして未知の可能性を秘めるHDマップ。その整備にあたるDMPの活動に要注目だ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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