「無人」自動運転タクシー、カリフォルニアでCruiseが一番乗りへ

DMVに続き、CPUCから走行許可取得

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出典:GM Cruise公式サイト

米GM Cruise(以下クルーズ)がこのほど、カリフォルニア州初となるドライバーレスによる自動運転タクシーのサービス許可を取得した。同州ではクルーズが無人タクシーで一番乗りとなる見込みだ。

この記事では、カリフォルニア州における自動運転サービス許可の実態とともに、クルーズの取り組みを解説していこう。

※注)ちなみに完全無人の自動運転タクシーは、Google系Waymoがアリゾナ州でがすでに運行しているため、運用を開始してもアメリカで初めてというわけではない。

■DMVとCPUCによる許可

今回クルーズが許可を受けたのは、旅客運送に関する規制権限を持つCPUC(カリフォルニア州公益事業委員会)だ。一般的に、米国各州における自動運転関連の許認可機関としてはDMV(車両管理局)が有名だが、同州で自動運転車による移動サービスを行う場合、CPUCの許可が別途必要になるようだ。

CPUCは2018年、セーフティドライバー同乗のもと自動運転車で移動サービス実証を行うことが可能なプログラムと、乗客と遠隔操作者が常に通信可能なドライバーレスによる同サービスを提供するプログラムの2つを発表した。2020年11月には、乗客から金銭的補償、つまり運賃をとる商用プログラムも展開している。

DMVから自動運転車の走行許可を受けることや四半期ごとの報告義務など諸条件があるが、これまでにZoox、AutoX、Pony.ai、Waymo、Aurora Innovation、クルーズ、Voyage(クルーズが買収)、Deeproute.aiの8社がセーフティドライバー付きの許可を得ている。このうち、クルーズが先陣を切る形で2021年6月に初めてドライバーレスの許可を得た。

出典:CPUC公式サイト(https://www.cpuc.ca.gov/avcissued/

なお、DMVから2021年5月時点でドライバーレスの自動運転走行許可を受けているのは、クルーズとZoox、AutoX、Pony.ai、Waymo、BAIDU(百度)、WeRide、Nuroの8社だ。セーフティドライバー付きは55社が許可を受けている。

出典:DMV公式サイト(https://www.dmv.ca.gov/portal/vehicle-industry-services/autonomous-vehicles/autonomous-vehicle-testing-permit-holders/

Nuroは人の移動用途ではなくモノの輸送に特化しているため、CPUCの許可を要せず、DMVからサービス展開に向けたライセンス「deployment」を受けることでサービス実証を行うことができるようだ。

いずれにしろ、人を乗せる自動運転タクシーやバスの中ではクルーズが一番乗りとなる見込みだ。自動運転実証が盛んなカリフォルニア州だけに、他社も続々と追いかける可能性がありそうだ。

【参考】DMVの取り組みについては「米カリフォルニア州、「自動運転タクシー」が料金徴収可能に」も参照。

■クルーズの取り組み
ソフトバンクグループやホンダも出資

クルーズは、現社長兼CTO(最高技術責任者)を務めるKyle Vogt(カイル・ヴォグト)氏らが2013年に創業した。自動運転技術をはじめ後付けのADASキットなど幅広く開発を進めており、2016年に米自動車大手GM(ゼネラル・モーターズ)に買収された。報道によると、買収額は10億ドル(約1,100億円)超と言われている。

2018年5月には、ソフトバンクグループの投資ファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)」から総額22億5,000万ドル(約2,400億円)の出資を受けた。同年10月には開発の輪にホンダも加わり、ホンダからは7億5000万ドル(約850億円)の出資と、今後12年に渡る事業資金約20億ドル(約2240億円)が投じられるパートナーシップが発表された。

当初予定では、2019年に自動運転タクシーを実用化する方針を掲げていた。先行するWaymoを追いかける急先鋒に位置していたが、より高い安全性の追求を理由にこの計画は延期している。2019年は総じて大きな話題もなくおとなしい1年となった。

オリジン発表から攻勢に

しかし、翌2020年には攻勢に転じる。2020年初頭に自動運転モビリティサービス専用のモデル「Origin(オリジン)」を発表したのだ。

GMのシボレー・ボルトをベースにした初代とは構造が全く異なるオリジナルモデルで、ハンドルやペダル類を搭載していない車両だ。量産化を見据えており、GMが新たに建設するEV専用工場「Factory ZERO」で、GMC HUMMER EVピックアップとともに最初に生産される車両に選ばれている。

【参考】Originについては「GM Cruise、ハンドルなしオリジナル自動運転車を発表!」も参照。

2020年の新型コロナウイルス下では、モノの配送実証にも積極的に乗り出している。サンフランシスコではNPOなどと協力して食料品の配送を行ったほか、米小売り大手のウォルマートと提携し、アリゾナ州スコッツデールでもコンタクトレス配送のパイロットプログラムに着手している。

2021年1月には、米マイクロソフトと長期に及ぶ戦略的提携を結んだと発表した。マイクロソフトのクラウド・エッジコンピューティングプラットフォーム「Azure」を活用し、独自の自律型車両ソリューションを大規模商品化する計画だ。

また、マイクロソフトはGMやホンダなどとともにクルーズへ20億ドル(約2,200億円)超の新規株式投資を行い、クルーズの評価額を300億ドル(約3兆2400億円)にすると発表している。同年4月には投資ラウンドにウォルマートが参加し、27億5000万ドル(約3,000億円)を調達したことで評価額300億ドルを突破したとしている。

同年3月には、自動運転開発を手掛ける同業スタートアップの米Voyageを買収した。研究開発をいっそう加速させる構えのようだ。

海外展開も視野に

クルーズとGM、ホンダは2021年1月、日本における自動運転サービス事業に向け協業を行うことに合意したと発表した。2021年中にシボレー・ボルトをベースにした自動運転車両で技術実証を開始する予定で、将来的には共同開発を進めるオリジンを活用した事業展開を目指すとしている。

同年4月には、ドバイ道路交通局(RTA)と首長国で自動運転タクシー及び配車サービスを運営していくことに合意したと発表した。車両はオリジンを予定しており、独占契約のもと2023年に運用を開始し、2030年までに4000台まで拡大する計画としている。

日本や中東といった海外展開もすでに視野に収めており、今後も第三国などで導入の動きが広がる可能性も考えられる。こうした意味では、カリフォルニア州におけるドライバーレス自動運転サービスの取り組みが大きな試金石となりそうだ。

【参考】ドバイでの取り組みについては「自動運転タクシーを独占的運行!GM Cruise、ドバイで2023年から」も参照。

■【まとめ】クルーズが自動車メーカー復権の象徴に?

Waymoをはじめとするテクノロジー企業やスタートアップの活躍が著しい自動運転業界だが、クルーズの台頭は少し意味合いが異なる。

スタートアップ気質がそのまま生かされているものの、クルーズは大手自動車メーカーGMの傘下にある。つまり、自動運転分野における自動車メーカー復権の象徴となり得る存在なのだ。

実証から実用化のフェーズへと着々と移行しつつある業界の競争は、これから本番を迎えるのだ。

【参考】関連記事としては「自動運転シャトル、e-Palette、Origin、ARMAの国内バトル勃発へ」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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