「高層ビル×直営コンビニ」、自動運転宅配の普及で最有力!

ソフトバンク本社でセブンイレブンが実証中



RICEによる配送イメージ=出典:ソフトバンク・プレスリリース

実用化に向けた取り組みが加速する自動走行ロボット。公道を使用した実証もスタートしているが、いち早く普及し始めるのは高層ビルなどを舞台とした屋内向けと思われる。

この記事では、高層ビルにおける配送ロボットの商機や、サービス対象となる有力小売について解説していく。


■屋内配送ロボットの商機

自動走行ロボットの実用化をめぐっては現在、公道走行できるよう国が法整備などを進めている状況だ。しかし、基本的に私有地となる屋内では、道路交通法などの規制が適用されず、事業者による自主的な安全対応で導入することができる。

また、公道に比べ屋内は地面の起伏が少なく、天候の影響も受けない。歩行者など往来する人との調和も図りやすいため、屋外に比べ導入のハードルは低いものとなる。

では、需要はどうだろうか。大都市圏をはじめとした人口過密地域では、高さ100メートルを超す高層ビルが当たり前のように乱立している。高さ300メートルの「あべのハルカス」を筆頭に、200メートル超のビルも国内だけで40棟以上存在する。

こうした高層ビルには、商業施設やオフィス、ホテル、マンションなどが入居し、1棟単体で数万人規模の市場を形成しているケースも少なくない。1棟で商圏を成しているため、ビル内で宅配ロボットなどのビジネスが成立するのだ。


しかし同じ建物内とはいえ、他階への移動は結構時間がかかる。上層階のオフィスから1階に店を構えるカフェやコンビニを往復するのは、意外と面倒だ。

ここに配送ロボットの商機がある。スマートフォンなどで気軽に利用可能な専用ECサイトで注文すれば、商品をリアルタイムでオフィスへ届けてくれるサービスは一定の需要があるはずだ。

こうした新たな取り組みが、ソフトバンク本社が入居する「東京ポートシティ竹芝オフィスタワー」で行われている。ビル内に店舗を構えるセブンイレブンが、ソフトバンク社員を対象に配送ロボットで商品を届ける実証を行っている。

■最新のスマートビル「東京ポートシティ竹芝オフィスタワー」

セブンイレブン・ジャパンが自動走行ロボットの実証に取り組む「東京ポートシティ竹芝オフィスタワー」は、ソフトバンクグループおよびソフトバンクの本社が入居する地上40階、地下2階、高さ約208メートルの高層ビルだ。東急不動産と鹿島建設が共同開発し、2020年5月に竣工した。


主に1~3階が商業エリア、2~5階に東京都立産業貿易センター浜松町館、9~39階にソフトバンク系列の企業が入居している。

タワーでは、エレベーターホールやビル内施設の混雑状況といったあらゆるデータの可視化や、リアルタイムデータ連動型デジタルサイネージの活用、AIカメラやWi-Fiデータによる施設利用傾向の分析、清掃や警備ロボットとエレベーターのシステム連携による効率的な運用など、スマートビル化が図られているのが特徴だ。

ソフトバンクロボティクスのロボット掃除機「Whiz(ウィズ)」や、SEQSENSEの警備ロボット「SQ-2」なども導入されているほか、1階には陳列業務を担うロボットを導入したローソンの次世代型コンビニも入居している。

■セブンイレブン直営店が上階のソフトバンク社員へロボット配送

セブンイレブンは同ビルの6階に入居しており、2021年1月からソフトバンク系列のアスラテックが取り扱う屋内向け配送ロボット「RICE(ライス)」を活用し、同じフロアの指定された場所まで配送する実証実験を行ってきた。

その後、4月にこの取り組みを拡大し、エレベーターを活用したロボットのフロア間移動を実現する三菱電機のIoTプラットフォーム「Ville-feuille(ヴィルフィーユ)」とRICEを連携させ、上階のソフトバンク社員を対象に商品を配送する実証に着手した。

社員が「セブンイレブンネットコンビニ」で商品を注文すると、セブンイレブンの店舗スタッフがRICEに商品を載せ、配送先を指示する。RICEは自動でエレベーターに乗って指定されたフロアへ移動し、配送先に到着すると注文者のスマートフォンに暗証番号を通知する。これをRICEに入力することで、商品を取り出すことができる仕組みだ。

なお、こうした新たな取り組みは、多方面でチェーン展開を行うコンビニ直営店が向いていそうだ。直営店であればスピーディーかつコントローラブルにオペレーションを構築することが可能だ。実用化後も、そこで培ったシステムを他店に波及させやすい。

■屋内配送ロボット向けソリューションも

三菱電機のIoTプラットフォーム「Ville-feuille」は、蓄積したデータを活用して幅広いサービスを行うことが可能で、オープンAPIによってパートナー企業もサービスを提供することができる。

ロボット移動支援サービスでは、ロボットのリクエストに応じてエレベーターの予備登録・配車を実行し、乗降時には戸開状態を保持する。ロボット台数は最大10台まで対応可能で、拡張することもできるという。将来的には、入退室管理システムやロボットの通行や接近をアニメーションライティング誘導システムで表示して人に通知するシステムなども対応していく方針のようだ。

現在建設中のビルをはじめ、将来の高層ビルはこうしたソリューションが実装されたスマートビルがスタンダードとなり、さまざまなロボットがビル内を行き交う風景も日常的なものへと変わっていくのかもしれない。

■【まとめ】スマート高層ビル化が配送ロボット導入を促進する

スマート化が進む高層ビルは、自動走行ロボットとの相性が良い。そして、対象となる小売は、配送ロボットの本格導入で新たな商機が広がるコンビニ直営店が第一候補に挙がりそうだ。

セルフレジの導入など無人化・省人化を進めるコンビニ業界。人手不足の解消と経営効率化を両立する新たな手段として、配送ロボット導入に向けた取り組みが今後加速しそうだ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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