汎用「自動運転向けシャーシ」を使えば、オリジナル車両の展開が容易に

車両開発ではなく、「サービス」で競う時代が到来する



出典:PIX MOVING公式サイト

オープンソースの自動運転シャーシプラットフォームの開発を手掛ける中国系スタートアップのPIX MOVINGがこのほど、プレシリーズAラウンドで数億円の資金調達を行ったようだ。日経新聞系のメディアが報じている。

同社が開発を進めるモジュール式の自動運転車は、未来の自動運転ビジネスの拡大に大きく貢献することが予想される。この記事では、自動運転分野における「モジュール式」の可能性に触れつつ、同社の概要も紹介していく。







■PIX MOVINGの概要:2014年設立のスタートアップ

PIX MOVINGは2014年設立のスタートアップで、ロボット工学やモーションコントロール、デジタル製造、金属3D印刷などさまざまな分野で豊富な経験を持つエンジニアが集結し、自動運転シャーシプラットフォームの開発を進めている。中国と米国にそれぞれ開発拠点を構えているようだ。

同社の特徴は、オープンソースのソフトウェアとハードウェアを備えた汎用性の高いシャーシの開発に力点を置いているところだ。シャーシの上に載せるボディをモジュール化し、用途に沿ったボディ・モジュールを載せることで、自動運転シャトルや貨物、警備、観光用途などさまざまなシーンで活用することが可能になる。

自動運転開発者向けの「PIXLOOP」には、オープンなAPIインターフェイスや自動運転ソフトウェア「Autoware」と「Apollo」がプリインストールされており、開発者は開発コストの削減や開発期間の短縮を図ることができる。

このほか、最大荷重800キロで時速40キロで走行可能な「フック」や、宅配ロボットなどに適した小型の「ハイゼンベルク」など4つのプラットフォームの開発を進めており、サンフランシスコや深セン、杭州、廈門などでそれぞれ実証を進めているようだ。

航続距離は50~120キロと短めだが、カスタマイズ可能となっているほか、バッテリー交換にも対応している。

ティアフォーが自動運転OSを提供

PIX MOVINGのパートナーには、自動運転システムを提供している日本のティアフォーや中国の百度(バイドゥ)をはじめ、米ベロダインライダー、Amazon Web Services(AWS)などが名を連ねている。

世界中の自動運転開発企業とコラボレーションするためのオープンソースコミュニティ「Moving Community」も提供しており、一部のデータセットやソースコードなどはソフトウェア開発プラットフォーム「GitHub」で公開しているようだ。

■モジュール化が自動運転ビジネスを加速する

現在の自動運転市場は、自動運転開発企業や自動車メーカーらが協業し、直接、あるいは間接的に自動運転サービスに関わるケースが大半を占める。市場が花を咲かせたばかりということもあり、自動運転車の製造販売ビジネスより、モビリティサービス事業に重点を置いているためだ。

自動運転技術の社会実装は、技術の高度化とともに徐々に普及をはじめ、ODD(運行設計領域)や用途を広げながら裾野を拡大していく。当面は移動サービスや物流用途などが大半を占め、新たなモビリティサービスとしてビジネス性を向上させていくことが見込まれる。

その後、自動運転技術が一定水準に達し本格的な普及段階を迎えると、移動販売など小規模事業者による需要も増加をはじめ、パーソナルな商用車としての注目が高まり、一気に用途を拡大する可能性が考えられる。

こうした際に本領を発揮するのがモジュール方式の自動運転車だ。さまざまな需要に応用可能な一定の自動運転機能を備えたシャーシを大量生産することで低価格化を実現すると同時に、シャーシを規格化することでサードパーティによるボディ・モジュールの開発を促進し、用途と販路を一気に拡大することが可能になる。

この段階に突入すると、自動運転市場はより大きなものへと拡大する。自動運転技術を活用した新サービスの提供を考える事業者は、気軽に自動運転車を発注し、用途に応じたボディ・モジュールをカスタマイズして利用可能になるのだ。

ボディ・モジュールそのもののビジネス性も増し、デザインやUI/UX、モビリティを活用した新しいライフスタイルの提案など、さまざまな要素がビジネス化していくこととなる。

自動車メーカーらもモジュール化に注目

こうしたモジュール化は自動車メーカーなどもすでに想定済みのようで、独ダイムラーの「Vision URBANETIC」や独フォルクスワーゲンの「Volkswagen POD」など、モジュラー化したコンセプトモデルが発表されている。

自律走行ロボットでは、ティアフォーが2020年12月に発表した小型自動搬送ロボット「Logiee S1」がモジュール式を採用している。自動運転機能を備えた共通のベースモジュールに、ニーズに合わせて作製することが可能なサービス機能モジュールを載せ換えることで用途の幅を広げることができる。

■【まとめ】モジュール式がオリジナル車両の構築を容易に

現在の自動車業界においても生産効率の向上に向け車体のプラットフォーム化を進める動きがスタンダードとなっているが、EV化され多目的な活用が見込まれる自動運転分野ではこの動きが大きく加速し、自動運転機能を備えた共通プラットフォームで生産効率を高めつつ、サービスを担うボディで各種用途に対応していくモジュール式への注目が高まるものと考えられる。

モジュール方式であれば、ボディ部分のみをカスタマイズすることでオリジナル車両の構築が可能になるため汎用性が広がる。自動運転技術を利用した新サービスをローンチしやすい環境が生まれ、新たなサービスの実装が加速していくのだ。

自動運転サービスの可能性を広げるモジュール式自動運転車の開発動向に引き続き注目していきたい。

【参考】自動運転車のモジュール化については「自動運転車の”上半身”が、多様なビジネスの舞台に 上下分離方式の未来モデル続々」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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