自動運転開発、コロナでのテレワーク化はむしろ追い風?【特集「自動運転×テレワーク」第3回】

技術者の集中力アップ、国際的な技術開発も可能に





新型コロナウイルスの影響により、各方面でテレワーク化が進行している。多くは一過性の取り組みとして収束後に元の働き方に戻るものと思われるが、場所や時間にとらわれない新しいワークスタイルとして、業種・職種によっては定着化を図る動きもみられる。







自動運転業界においてもこうした動きは散見される。どうやら自動運転開発とテレワークは相性が良いようで、場合によってはテレワーク化によって自動運転技術の開発速度が高まる可能性もありそうだ。

今回は、自動運転開発とテレワークの関係について考察してみる。

■テレワークに向いた職種とは?

一般的にテレワークは、一人で完遂可能な職種が向いていると言われる。在宅勤務型、モバイルワーク型、サテライトオフィスなどの施設利用型があり、ライターやウェブデザイナーをはじめ、エンジニアやプログラマーも代表職種としてよく名前が挙げられている。

特にIT系エンジニアは、自律的・自己管理的な業務の割合が高いケースが多く、一定のコンピュータ環境やネットワーク環境が整っていれば在宅やモバイルワークで対応可能な場面が多い。情報共有などのコミュニケーション体制やテスト環境などを組織(企業)としてしっかり構築することで働き方の幅を広げつつも業務の効率化を図ることができ、テレワーク時代にいっそうの飛躍を遂げることも可能になる。

■自動運転分野では?

MaaS(Mobility as a Service)の浸透によりモビリティサービスの社会実装に向けた非エンジニア系の求人も増加傾向にあるが、自動運転分野における主力はやはりエンジニアだ。

本丸の自動運転システムの開発では、AIのアルゴリズム構築や画像認識・解析技術、マッピング技術、通信技術をはじめ、ヒューマンマシンインタフェース開発における音声認識や顔認識技術、MaaSやコネクテッドカー向けのプラットフォーム開発や運行管理システムの開発、データ処理や管理技術など、コンピュータに向き合うものが多い。

多くは少人数でチームを編成して研究開発を進め、シミュレーションなどコンピュータに向き合う開発と、システムを実際に車両に搭載し、公道などリアルな環境で実証を行う繰り返しとなる。

実証における車内空間は密な環境となるため、衛生面や換気のケアなどWithコロナ時代に適した注意事項の定義が必要なものの、開発現場ではコンピュータなど開発環境が整っていればテレワークが可能となる場面が多い。

自動車業界における製造・生産分野ではテレワークの導入に限界があるが、こうした開発分野ではもともとテレワークを導入しやすい環境が備わっていると言えそうだ。

テレワークによってむしろ研究開発に専念できるケースも

また、エンジニアによっては、テレワークの導入によってむしろ研究開発に専念することができる場合もあるようだ。専門性の高さゆえ、周囲からの干渉がなくマイペースで集中できる環境を望む声も少なからずありそうだ。

結果としてより優れたシステムやソフトウェアなどの開発に至れば、それは大きな成果となる。こうした成果は、所定の研究室に箱詰めされて開発したケースとテレワークで開発したケースでその評価に違いが生じるものではない。

より効率的・効果的に開発できるかどうかが重要であるため、場合によってはテレワークの導入によって業務効率が改善されることも考えられるだろう。

■テレワーク化に向けたティアフォーの取り組み

テレワークの導入がプラスに働く、あるいはプラスへと好転させていく取り組みは実際に始まっているようだ。

自動運転ラボはテレワークの導入状況などに関し、自動運転開発を手掛ける業界大手のティアフォーの創業者で会長兼CTO(最高技術責任者)の加藤真平氏にメールで話を聞いてみた。

加藤真平氏=撮影:自動運転ラボ(2019年7月に撮影)
「逆に開発に集中できるという声も意外と多く聞きます」

同社は、社員やクライアントの健康や社会的責任を考慮し、3月末からオフィスをシャットダウンし、原則WFH(Work From Home/在宅勤務)としている。緊急事態宣言の解除後も、事態が完全に収束しているわけではないため、7月末までWFHを推奨し、あわせて今後の新しい働き方を検討していくこととしている。

テレワーク状況下における自動運転開発に関して、加藤氏は「逆に開発に集中できるという声も意外と多く聞きます。一部計画変更や延期となるプロジェクトもありますが、基本的にはすべて決行予定で、この状況下でも開発スピード・社員のモチベーションを落とさず進められています。また、これを機に開発体制の改善も検討しており、今後さらに開発を促進できそうです」と語った。

研究開発特有の利点が発揮されているようで、一部計画変更を余儀なくされているものの、モチベーションや開発スピードを落とさず進められている点はテレワークにおける企業活動の好例と言えそうだ。

「これまで何らかの障壁があった方々と今後一緒に働ける機会が増える」

また、テレワーク体制の構築が今後の採用面でプラスに働くかといった質問に対しては、「ティアフォーでは多様性を大切にしています。テレワークを導入することで、子育てをしながら働いている方や遠隔地・海外に住んでいる方など、これまで何らかの障壁があった方々と今後一緒に働ける機会が増えるのではないかと期待しています」と答えた。

個々人のさまざまなライフスタイルに見合った働き方を導入することで、今まで何らかの制約があった人材にも活躍の場を提供することができるほか、海外在住者など遠方の技術者とも協働できるメリットは非常に高そうだ。

例えば、エンジニアの宝庫といわれるシリコンバレーの人材とも一緒に仕事を進めることが可能になる。優秀な人材に対しては惜しみのない待遇を用意し、人材獲得合戦を繰り広げている本場で、柔軟な働き方を武器に人材獲得合戦に加わることも不可能ではなくなるのだ。

著名なエンジニアをアドバイザーとして採用し、要所要所で開発に携わってもらうといった提案も容易になる。

■エンジニア個人の働き方に幅

こうした流れはエンジニア個人の働き方に幅を持たせることになる。唯一無二の技術を有する優秀なエンジニアは、企業などに所属することなく、また自ら起業して組織的に活動することもなく、個人事業主・フリーランスの形式で世界中のさまざまな企業に対し技術提供するような働き方が可能になるのだ。いわば、自動運転技術を提供する個人スタートアップのようなものだ。

もちろん、BtoBの取り組みも促進することが可能になる。立地上競合することのない開発企業同士が手を組み、それぞれの技術を提供し合ってより高度なシステムを構築し、各地で自動運転サービスを提供することも容易になる。

働く場所を選ばず、オンライン会議システムで日常的な会議をおこなうことができるテレワークの発展系は、国際的な企業間の取り組みにも大いに役立つ。物理的な「モノ」を共有する必要がない限り、遠隔地間で連携を図ることが容易になるのだ。

自動運転分野における開発の多くはコンピュータ上でおこなわれる技術であるため、物理的なモノを要することなく共有や改善をおこなうことができる。シミュレーション技術も大きく発展を遂げており、各種センサーの検証など大部分をコンピュータ上で行うことが可能になった。BtoBにおける立地上の障壁は崩れ、地理的要因による有利・不利といった格差は限りなく小さくなっていくのだ。

こうしたテレワーク技術のBtoB分野への応用は、アライアンスの取り組みなどにも貢献する。自社開発した自動運転OS「Autoware」の普及や国際標準化を目指す「The Autoware Foundation」を組織するティアフォーにとって、世界的なテレワーク化の流れは大きくプラスに働く可能性が高そうだ。

■【まとめ】テレワーク導入で次代を見据えた企業づくりを

柔軟な働き方を実現するテレワークは、コンピュータを活用した開発がめっぽう多い自動運転分野で真価を発揮する。また、国際的な競争激化を背景にパートナーシップを結んで開発能力を向上させる取り組みが盛んな分野のため、こうした観点においてもテレワーク技術が貢献することがわかった。

新型コロナウイルスをきっかけに進行するテレワークだが、IoTやAIが中心となっていくこれからの産業においては、テレワーク技術とともに柔軟な働き方がスタンダードとなる分野が大きく増加することが予想される。

テレワークを一過性のものとして捉えず、これを機に業務体制を見直し、次代につながる企業づくりをぜひ検討してもらいたい。

>>特集:目次

>>特集第1回:コロナ下、自動車業界のテレワーク対応状況は!?トヨタ、デンソー、日産…

>>特集第2回:自動運転、With/Afterコロナ時代の実証実験や研究開発の在り方は?

>>特集第3回:自動運転開発、コロナでのテレワーク化はむしろ追い風?

>>MaaS・自動運転業界向け!ストロボが「テレワーク導入・人事コンサル」開始

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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