青田買いの好機?自動運転とコロナが地方不動産の価値を変える

MaaS×不動産の取り組みも活発化



今、都市郊外や地方の不動産に異変が起こっているようだ。新型コロナウイルスの影響で3密回避やリモートワークが推奨され、過密気味の大都市を敬遠して郊外や地方を志向する動きが顕在化し出したのだ。







こうした都市から地方・郊外への流れは、自動運転やMaaS(Mobility as a Service)の浸透によって加速・定着する可能性がある。

今回は、コロナによる影響とともに自動運転・MaaSによる郊外化の流れについて合わせて解説していく。

■コロナによる郊外化の流れ
密を避けて…

約38万平方キロメートルの国土に1億2000万人超が暮らす日本。人口密度は330人/平方キロだ。その中で、東京都と全国20の政令指定都市に4000万人超が集中しており、これらの人口密度は2800人/平方キロほどに達する。東京都に至っては人口密度が6000人オーバー、最上位の豊島区は2万人を超すという。

地方創生の名のもと各種施策が実施されているが、全国的な人口減少局面なども相まって成果を上げづらい状況が続いている。

一方、新型コロナウイルスに目を移すと、東京を筆頭とした大都市、特に人口密度の高い地域で感染が蔓延する傾向が強い。人口に比例するのは当然として、やはり密度が高くなりがちな環境の多さも起因しているものと考えられる。

終わりが見えないコロナ禍に対し、就業形態も変化を迎えつつある。時間や場所の制約を受けずに柔軟に働くテレワーク・リモートワークを導入する企業が増加しているのだ。大都市に集中する各企業の本社に出社する機会を減少させることで密を避ける主旨で、オンライン会議システムなどを活用し、日常的な業務の一部をオンラインで済ませる取り組みが進められている。

リモートワークの本格導入に取り組む企業も…

一時的に導入している企業も多いが、コロナ禍を一過性のものと考えず、これを機に働き方改革の一環としてリモートワークの本格導入に取り組む企業も多い。就業形態の多様化が進んでいるのだ。

こうした新たな就業形態は、不動産分野にも影響をもたらそうとしている。都心部に構えていた本社を郊外や地方に移転する動きが出始めているほか、本社への出勤から解放された社員らの郊外居住化も進み始めているのだ。

リクルートホールディングスの峰岸真澄社長は日本経済新聞の取材に対し、「自社の意識調査では駅近・徒歩15分以内がコロナ前に比べ7ポイント下がり、通勤時間1時間超が10ポイント上昇した」と回答している。都心の賃貸住宅と同額の家賃で郊外に移り住もうと考えている人もいるそうだ。

一方、不動産情報サービス事業を手掛けるLIFULLが2020年9月に発表した、東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県の1都3県を対象にした「LIFULL HOME’S コロナ禍での借りて住みたい街(駅)ランキング」によると、池袋や三軒茶屋など都心・近郊エリアが軒並み順位を下げる中、神奈川県厚木市の本厚木駅が1位に躍り出るなど、準近郊・郊外エリアに位置するまちが順位を上げているという。

出典:LIFULL

「コロナ禍での問合せ数増加率ランキング」においても、1位八街、2位姉ヶ崎、3位大網とトップ3は千葉県郊外エリアが占める結果となっている。

出典:LIFULL

同社は、賃貸ユーザーの「郊外化志向」が1都3県の範囲にとどまらず、より都心から離れたエリアにも拡散している可能性を鑑み、調査対象エリアを茨城県・栃木県・群馬県・山梨県・長野県・静岡県まで拡大したランキングも公表している。

拡大版では、本厚木を抜き水戸駅(茨城県)が1位に躍り出たほか、3位に宇都宮駅(栃木県)がランクインするなど、郊外志向が顕著に表れる結果となっている。

出典:LIFULL

コロナ不況により、当初は不動産取引が低迷し価格の下落が危惧されていた。実際は価格に大きな変動はないようだが、五輪景気で東京都心部が高騰したこともあり、地方や郊外に目を向ける動きが強まっていることは確かなようだ。

■自動運転やMaaSが郊外化を促進
自動運転が移動コストを低下させる

コロナによる郊外化の流れがいつまで続くかは未知数だが、今後の新たな流れとして期待されるのが自動運転やMaaSの社会実装だ。自動運転やMaaSが改めて郊外化を後押しする可能性があるのだ。

既存のバスやタクシーが自動運転化された場合、当初は高額なイニシャルコストが足かせとなるが、普及が進むにつれイニシャルの低下が進んでいく。一方、ドライバーを必要としない自動運転車はランニングコストを低く抑えることが可能なため総コストは低下し、移動サービスの料金も次第に低下していくことになる。

コンサルティング大手のArthur D. Little Japan(アーサー・ディ・リトル・ジャパン)が作成した「モビリティサービスの事業性分析(詳細版)」によると、ロボタクシー(自動運転タクシー)事業において車両維持費や車両償却費が従来のタクシー車両の10倍になると想定しても、売上高に占める労務費がゼロとなり、営業収益は平均的なタクシー事業の1%から26%に大幅に改善すると試算している。

【参考】アーサー社の調査については「【資料解説】タクシー、自動運転化で「営業収益が25%向上」」も参照。

また、米調査会社のARK Investment(アーク・インベストメント)が発表した「BIG IDEAS 2019」によると、消費者が支払う1マイル当たりの移動コストは、従来のタクシーが3.5ドルであるのに対し、自動運転タクシーは約13分の1となる0.26ドルになるという。

【参考】ARK Investmentの調査については「自動運転技術が東京〜大阪間「1万円タクシー」を実現する」も参照。

仮にタクシー料金が10分の1となった場合、そのインパクトは計り知れない。タクシー需要は激増し、近~中距離のラストマイル移動を席巻する可能性もある。移動コストの低下は居住エリアの選択肢を大幅に広げ、住みやすい郊外エリアに転居する動きを誘発するのだ。

【参考】自動運転と不動産については「自動運転普及で「WeWork型」一等地不動産ビジネスは崩壊する」も参照。

移動に利便性をもたらすMaaS

同様に、MaaSの導入も郊外化を促進する可能性が高い。自動運転化されたバスやタクシーをはじめ、鉄道やパーソナルモビリティなどさまざまな移動手段を結び付け、移動の利便性を高めるMaaSが実装されると、乗り継ぎや支払いなどの手間がワンストップ化され、ストレスなく移動することが可能になる。

ルーティングにAI技術を導入することで高効率の移動が可能になり、移動時間の短縮が図られることも想定される。

移動コストの低下、及び移動の利便性向上は、大都市における一等地と近郊の格差を埋める効果を発揮する。移動の負担が軽減されれば、高額な駅近物件に対し低額な郊外物件を比較対象にしやすくなるためだ。

【参考】MaaSについては「MaaSとは?2020年代に実用化!意味や仕組みまとめ」も参照。

MaaS×不動産の取り組みも活発化

MaaS×不動産の取り組みも近年活性化している。移動の利便性に小売りや医療、不動産などさまざまなサービスを組み合わせることで相乗効果を発揮させる取り組みだ。

国内では、日鉄興和不動産が2020年2月、東京都内で自社開発した分譲マンション向けのMaaS「FRECRU(フリクル)」の実証実験を開始している、マンション居住者を対象に専用のマイクロバスをオンデマンド方式で運行する取り組みだ。

三井不動産は、千葉県柏市で取り組んでいるスマートシティ化事業の中で、MaaSの生みの親とされるフィンランドのMaaS Globalと提携し、MaaSアプリ「Whim(ウィム)」の導入に向けた実証を開始する予定だ。

【参考】MaaS×不動産については「注目度が急上昇!「MaaS×不動産」最新のビジネス事例まとめ」も参照。

■郊外物件に商機到来?

大きく値下がりしているわけではないが、値が落ち着いている郊外物件。コロナによるリモートワークの影響と、自動運転やMaaSの導入により、今後価値を高める可能性は十分考えられる。

本社や住居の移転はもちろん、キャピタルゲイン(売却益)やインカムゲイン(家賃収入)に注目した不動産投資の面でも大きなチャンスになり得るのではないだろうか。

もちろん、郊外や地方であればどこでも良いわけではない。MaaSなどの取り組みに乏しい単なるド田舎では移動の利便性が向上しないからだ。大都市と大きく離れた田舎は自然あふれる閑静な環境を武器に企業誘致に走る場合も多いが、社会生活につきものの「移動」を無視した施策では競合相手に勝てないのだ。

郊外物件を探す際は、こうした地域としての取り組みにも目を向けたいところだ。

■【まとめ】自動運転やMaaSが地方創世の一助に

やや大げさな内容となってしまったかもしれないが、コロナの影響で郊外に注目が集まっている点や、自動運転やMaaSが地方創世の一助となることは紛れもない事実である。こうした社会変化を契機に地方・郊外ビジネスに着手するのも有効な手立てだろう。

先が見えないコロナ禍ではあるが、受け身とならず先見の明を養い、将来を見通した活動に積極的に着手したいところだ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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