国土交通省はこのほど、空港内におけるトーイングトラクターの自動運転実証について2020年3月時点での結果・進捗を発表した。
トーイングトラクターは貨物を搭載したコンテナをけん引する車両のことで、空港内で手荷物や貨物のコンテナ、パレットなどを運ぶ役割を果たす。空港で労働力不足が深刻化する中、政府はAI技術や自動運転技術による航空イノベーションの一環として、トーイングトラクターの自動運転化を目指している。
今回はA〜Dの実証グループのうち、【Aグループ】の株式会社豊田自動織機と全日本空輸(ANA)と【Bグループ】の日本航空株式会社(JAL)の実証実験結果が発表されている。
▼資料URL
https://www.mlit.go.jp/common/001335399.pdf
■Aグループ:豊田自動織機とANAの中部国際空港の実証実験結果は?
豊田自動織機とANAは2020年2月10日から2月14日まで、中部国際空港でSIMAI社製トーイングトラクターを使用し、第1ターミナル下の「荷さばき場」から「105番スポット」までの往復約2.4キロの走行ルートで実証実験を行った。長距離、他の車両台数が多い混雑環境、屋内走行、という状況で自動運転の検証を行い、運行管理システムを利用した遠隔での指示や監視の機能も確認したという。
実証実験の総走行距離は71.5キロで、予定していない手動操作が2回発生した。手動操作の要因は、走行経路外から近づく自転車を避けるための「歩行者回避」と、雨天によりタイヤがスリップしたことによる「走行経路のずれ」のようだ。
実証全体としての問題は少なく、障害物の未検知はなし、走行制御は良好であったという。ただ遠隔運行管理システムについては、周囲環境の監視カメラ画像表示に遅延が発生しており、5Gの活用や画像の送受信手法の見直しを検討するという。
■Bグループ:JALの成田空港での実証実験結果は?
JALは成田国際空港で、STEP1〜3としてそれぞれ実証実験を行っている。
STEP1では2019年10〜11月と2020年の1〜3月までの間の計22日間、第2旅客ターミナル本館南ソーティング(荷さばき場)からサテライト(別棟)ターミナルソーティングを走行する実証実験を実施した。総走行距離376.7キロのうち、予定していない手動操作が15回発生した。その要因は、自己推定位置・慣性計測ユニットのエラーなどや他車両による飛び出し、車両との鉢合わせなどによるもののようだ。
STEP2では2019年12月の10日間、サテライトターミナルソーティングを周回するルートで実施された。総走行距離は128キロ。予定していない手動操作は5回発生し、路上駐車などによるもののようだ。
STEP3も同時期の10日間で、サテライトターミナルソーティングから「SPOT#91」を通り、サテライトターミナルソーティングに戻るルートで実施された。総走行距離は57.4キロで予定していない手動操作は8回発生した。路上駐車やSPOT#91内に機材が置かれていたことなどが要因とみられる。
■【まとめ】課題の洗い出しが進み、取り組むべきことが明確化
これまでの実証実験の実施で課題の洗い出しが進み、より実用化に向けて取り組むべきことが明確になった形だ。
「C・Dグループ」の実証実験が丸紅とZMPの合弁会社であるAiROが担うこととなっており、Cグループは成田国際空港で、Dグループは関西国際空港での実証実験を予定している。それぞれ、現地テストを経て実証実験の本番を迎える予定で、本番の実証実験は2020年6月以降の実施となるようだ。
▼資料URL
https://www.mlit.go.jp/common/001335399.pdf
【参考】関連記事としては「【資料解説】空港ランプバスの自動運転実証、ANAやAIROによる実施結果は?」も参照。
【資料解説】空港ランプバスの自動運転実証、ANAやAIROによる実施結果は? https://t.co/lHluPlw4h3 @jidountenlab #自動運転 #ランプバス #空港
— 自動運転ラボ (@jidountenlab) April 1, 2020