自動運転開発を進める米Nuroが、正式に日本国内での実証を開始したようだ。米国とは異なる日本の道路交通環境を学習し、エンドツーエンドの自動運転AIの機能向上を図っていく計画だ。
日本市場における商用化計画などは不明だが、パートナー候補が手を上げれば一気に話が具体化する可能性もある。ソフトバンクグループやトヨタなどと縁を持つ有力スタートアップだけに、今後の動向が気になるところだ。
世界展開を図り始めたNuroの最新状況に迫る。
【参考】関連記事としては「自動運転モデル「ルールベース」「E2Eモデル」とは?」も参照。
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■Nuroの最新状況
Nuro初の海外進出先は日本
Nuroは2026年3月、東京で自動運転実証を開始したと発表した。新しい道路、新しい都市、新しい国にも安全に適用できる普遍的な自動運転プラットフォームの実現に向けた取り組みで、海外進出は日本が初めてとなる。
同社は2025年春に国際的なデータ収集を目的に日本に進出すると発表していた。日本の道路は複雑さと独特の特徴を有しており、米国と異なる点として「車両は道路の左側を走行」「密集した都市部の幹線道路と狭い住宅街の通り」「独特な運転行動と文化的な交通規範」――を挙げている。
こうした道路交通環境の違いは、Nuro Driverが自律走行できる環境を拡大する機会となる。汎用性の高い自律走行スタックを構築する上で不可欠なステップと位置づけ、より安全で高性能な自律システムの開発という使命を加速させるとしている。
米国と異なる環境でE2Eモデルの学習を加速
詳細については後述するが、Nuroの最新の自動運転システムはエンドツーエンドモデルを基盤とした汎用性の高いAIドライバーを中心に構築されている。センサー情報に基づいて周囲の世界を推論し、新しいシナリオに適応し、状況の変化に応じてリアルタイムで安全に判断できるよう設計されている。
Nuroは海外展開に向け、まずユニバーサルモデルをシステム上で徹底的にテストし、ラスベガスの閉鎖型テストコースで検証を重ねたという。
合成検証テストによるエッジケース調査などを経て、セーフティドライバーによる手動運転のもと、自動運転システムをシャドウモードで実行し、制御を伴わない形で予測や判断機能を検証するなどし、システムの安全性や健全性などを入念に確かめた上で、日本の公道で自律走行できると判断した。
そして2026年2月、日本の公道でゼロショットによる自動運転実証を実施したようだ。ゼロショットは、AIモデルが事前の追加学習などを一切行わず、初めての環境下で直接認識・判断するもので、いわば「ぶっつけ本番」のようなものだ。
ラスベガスなどでの入念な準備の下、交通環境が異なる日本でも対応できる――と自信を持てる段階まで検証を重ね、日本特有の学習を行うことなくぶっつけ本番のような形で実証に臨んだ――ということだ。世界各地の市場に迅速に対応していくには、こうした取り組みが重要となるのかもしれない。
地域固有のデータによるトレーニングなしで安全に動作することをまず実証したが、今後、実証を継続するにあたり、固有のデータを汎用モデルのトレーニングパイプラインに徐々に組み込んでいき、精度を高めていくとしている。
長期的な戦略としては、グローバルな運転データを活用してあらゆる場所・環境におけるパフォーマンスの向上を目指す。各地域のローカルデータをエンドツーエンドの基盤モデルに供給することで、自社の汎用自動運転スタックを多様な環境から学習し、あらゆる道路やあらゆる走行状況に適用できるようにしていく。
今後数カ月にわたり、日本における走行実証とデータ収集の規模を拡大していく中で、将来のパートナー企業への展開に向けた運用準備態勢をさらに強化していく予定としている。
SVFやWoven Capitalが出資、平和島自動運転協議会にも参画
グローバル展開の第一歩として日本を選んだNuro。実証における現地パートナーがすでにいるようだが、企業名などは明かしていない。しかし、日本企業とは早くから結びついている。
同社が2019年に実施した資金調達Bラウンドでは、ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)が9億4,000万ドル(約1,000億円)出資したことが報じられている。SVFはその後のシリーズC、シリーズDにも参加しており、Nuroの筆頭株主クラスとなっているようだ。
2021年には、トヨタグループでグロースステージ投資を担うグローバル・ベンチャーキャピタル「Woven Capital」が、第一号案件としてNuroに出資した。
2025年12月には、東京都内の平和島を中心に自動運転技術の実用化を目指す平和島自動運転協議会に参画したことが発表された。Nuroは、同協議会のビジョンと連携し、日本における社会受容性を高めより安全で持続可能なモビリティ環境の発展に貢献するとコメントしている。
これらの企業がNuroの実証に協力している可能性が高そうだ。
【参考】関連記事「トヨタのWoven Capital、第1号投資案件はNuro!自動配送ロボット開発の米スタートアップ」も参照。
E2Eとルールベースのハイブリッド仕様?
Nuroはもともと中速・中型の自動配送ロボットに特化した開発を手掛けており、当初はルールベースの自動運転システムだった。2024年には事業戦略を一変し、自動運転システム「Nuro Driver」をプラットフォームとして自動車メーカーやモビリティプロバイダーにライセンス供与する事業モデルへの拡大を発表した。
2025年には、配車サービス大手Uber Technologiesと新興EVメーカーLucid Motorsとともにロボタクシープログラムに着手している。Lucidの車両にNuroの自動運転システムを統合し、Uberの配車プラットフォーム専用プレミアムグローバルロボタクシーを開発する計画だ。
中速・中型ロボット専用の自動運転能力はすでに超え、自動運転タクシー領域に踏み出す水準に達しているものと思われる。
Nuro DriverがどのタイミングでE2Eを採用したかは不明だが、最新のシステムは、エンドツーエンドのAIモデルを統合したソフトウェアに、地理空間基盤モデルを用いてリアルタイムの知覚データと低コストの地図事前情報を組み合わせたAI駆動型マッピング手法も活用している。
センサー群はカメラだけでなく、LiDARやレーダーなども使用している。E2Eモデルをベースに、従来からのデジタルマップ技術やセンサーフュージョン技術などを活用したハイブリッドモデルのような形で精度を高めているのかもしれない。
2025年、Nuroは北米59都市で手動運転の実証車両を走行し、データ収集を加速した。その際、Nuroは「Nuro Driverをあらゆる道路やあらゆる走行シーンに対応させるには、見慣れない地域でも正確なリアルタイムマップを生成する必要がある。収集したデータの一部にラベルを付け、それを使ってオンラインマッピングシステムのトレーニングと評価を行う」としている。
この一文を見る限り、Nuro Driverはデジタルマップを必須としているように思われるが、日本でゼロショット実証を行ったことを踏まえれば、地図に依存することなく自律走行できる能力が備わっているとも感じられる。
デジタルインフラの整備に左右されないシステムを開発しつつ、あくまでレベル4としてマップなどを併用するアプローチなのか、レベル5に向けた過渡期として併用しているだけなのか。不明な点は残るが、汎用性の高い自動運転システムの構築を目指していることに違いはない。
今後、日本国内でサービス化を目指す動きが出るのかなど、Nuroや関係各社の動向に注目したい。
■【まとめ】新たな協業や事業展開に注目
無人が前提の中速・中型ロボットで培った技術が、自動運転タクシーなどのモビリティ向けにどこまで進化しているのか、気になるところだ。
Uber、Lucidとのパートナーシップで世界展開を図っていく既定路線のほか、新たな協業先にも注目したい。自家用車向けのADASソリューションも視野に収めているため、多方面でビジネスが進展する可能性も高い。
また、資金調達もシリーズEに達し、そろそろIPOも見えてきたのではないか。自動運転関連の大型上場となるか、要注目だ。
【参考】関連記事「Nuroの自動運転戦略」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)