ホンダ出資先、自動運転中の「女性ひきずり事故」で隠蔽工作 罰金総額200万ドルに

米GM傘下Cruiseのロボタクシー事故で

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出典:Ian Muttoo / Flickr (CC BY-SA 2.0)

2023年に重大な人身事故を起こした米GM(ゼネラルモーターズ)傘下の自動運転開発企業Cruise(クルーズ)。事故後に自動運転タクシーの運行許可が取り消され、全米での運行を全面停止している。

その事故において、Cruiseが虚偽の報告書を提出しており、罰金として合計200万ドル(約3億1,000万円)を支払うことになったという。米メディアが報じた。

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■Cruiseが起こした事故のあらまし

出典:X(https://twitter.com/TerryMcSweeney/status/1709097787613487516)

Cruiseの自動運転タクシーは2023年10月2日の夜、カリフォルニア州サンフランシスコで人身事故を起こした。歩行者の女性が横断歩道を渡ろうとして、Cruise車の左側を走行する車に衝突し、ボンネット上に飛ばされた。その後、女性はルーフを転がって車両の右側に転げ落ち、歩道にぶつかりCruise車の前に投げ出された。Cruise車は女性をはねた後、停止せずに女性を20フィート(約6メートル)引きずったという重大事故であった。

事故当時、Cruise車が女性をはねたのか、車体下部に入り込んだためそのまま走行してしまったのかは、明らかになっていなかった。ただし目の前の人物を正確に検知せず、衝突後にも緊急停止しなかったのは事実であり、Cruiseはこの問題を重く見たカリフォルニア州車両管理局(DMV)から同年10月24日にドライバーレスの自動運転ライセンスを取り消された。

この事故の影響は大きく、事故の翌月には当時のCEO(最高経営責任者)が辞任している。さらに親会社のGMは、自動運転タクシーの専用車両「クルーズ・オリジン」の開発を無期限に停止することを2024年7月に発表した。

■「引きずったこと」を意図的に隠す

米運輸省高速道路交通安全局(NHTSA)は2024年9月に、Cruiseの事故報告が虚偽だったとして、150万ドル(約2億3,200万円)の罰金を科している。自動運転タクシーが歩行者を20フィート引きずったことを開示しなかったという理由からだ。Cruise側がNHTSAに提出した報告書に引きずったことが記載されておらず、調査官に見せた事故ビデオにもその部分が含まれていなかったという。

さらに2024年11月に入り、Cruiseが捜査を妨害したり、影響を与えたりという目的で報告書を偽造したことを認めたことが分かった。捜査の解決と訴追延期の合意を受け入れるために、50万ドル(約7,700万円)の刑事罰金を支払うことになったという。

起訴猶予契約では、Cruiseは50万ドルの刑事罰金の支払いのほか、政府の調査に協力すること、安全遵守プログラムを実施すること、改善に関する年次報告書を米検事局に提出することが義務付けられた。なおCruiseが3年間の契約期間中にこの義務を完全に履行しなかった場合、検事局は起訴された犯罪の起訴を進めることができることになっている。

■日本でホンダと組んでサービス開始予定

Cruiseは、カリフォルニア州公共事業委員会(CPUC)にも正確な情報を迅速に提出しなかったとして、2024年6月に最大11万2,500ドル(約1,700万円)の罰金を支払うことに同意していたという。

自動運転車の安全性を担保できなかっただけでなく、報告も偽造していたことが判明したCruise。同社とGM、ホンダは、自動運転タクシーサービスを開始する合弁会社の設立を目指す覚書を締結したことを2023年10月に発表している。2024年前半の新会社設立を目指しており、2026年初頭から日本国内で自動運転タクシーサービスを開始するといった内容であった。

自動運転タクシーサービスでは、3社が共同開発した自動運転専用車両「Cruise Origin(クルーズ・オリジン)」を使用する。まずは東京都で数十台の車両を用いてサービスを開始し、500台規模での運用を見込んでいるという。その後、順次台数を増加させ、サービス提供エリアの拡大を目指すようだ。

この発表の直後に、Cruiseは事故により運行停止となっている。親会社のGMは2024年第3四半期決算で、Cruiseが4億3,500万ドル(約670億円)の損失を出したことを報告している。

Cruiseの虚偽報告は、今後の事業運営にどのような影響を与えるのか。同社は今後立て直し可能なのか。また日本でのホンダとの自動運転タクシーは計画通り進んでいるのか。引き続き注目だ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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