新興EVメーカーとして名を馳せた米テスラ。一貫してBEVにこだわり続ける姿勢と先進的な技術導入が評価され、自動車メーカーとして異例の成功を収めた。同社の株価は、上場以来約180倍に膨れ上がり、企業価値は7,400億ドル(約100兆円)規模に達している。
一方、モデルの陳腐化や同業他社の追い上げなどを背景に新車販売台数は伸び悩んでいる。純粋な自動車メーカーとしての成長フェーズは終わり、次のフェーズに差し掛かっているのかもしれない。
この新たなフェーズのカギを握るのが自動運転技術だ。新技術の精度とビジネスモデル次第で、テスラの株価はさらに爆発的に伸びる可能性がある。
これまでのテスラ株の動向をおさらいしながら、そのポテンシャルに触れていく。
記事の目次
編集部おすすめサービス<PR> | |
車業界への転職はパソナで!(転職エージェント) 転職後の平均年収837〜1,015万円!今すぐ無料登録を |
|
タクシーアプリなら「GO」(配車アプリ) クーポン超充実!「実質無料」のチャンスも! |
|
新車が月5,500円〜!ニコノリ(車のカーリース) 維持費コミコミ!頭金は0円でOK! |
|
自動車保険 スクエアbang!(一括見積もり) 「最も安い」自動車保険を選べる!見直すなら今! |
編集部おすすめサービス<PR> | |
パソナキャリア | |
転職後の平均年収837〜1,015万円 | |
タクシーアプリ GO | |
クーポンが充実!「乗車無料」のチャンス | |
ニコノリ | |
新車が月5,500円〜!頭金0円でOK! | |
スクエアbang! | |
「最も安い」自動車保険を提案! |
■テスラ株の動向
テスラ株は19.00ドル(調整後1.27ドル)でスタート
2003年創業のテスラがナスダックに上場したのは2010年6月で、初日(6月29日)の始値19.00ドル、終値は23.90ドルだった。なお、この年にパナソニックとバッテリーの共同開発を開始したほか、トヨタとEV分野における共同開発を行う業務提携に基本合意し、2012年に共同開発した試作車「RAV4 EV」を発表している。
2013年に100ドル突破
その後、2012年1月3日の終値27.10ドル、2013年1月2日の終値35.35ドルとしばらくは緩やかに推移していたが、2013年度第1四半期決算(1月〜3月)で初の黒字を計上すると株価は上昇を始め、5月には100ドルを突破した。9月には200ドルに近づいたがその後下降し始め、2014年1月2日終値は150.10ドルとなった。
なお、2012年には、ロードスター(2008年)に次ぐ二つ目のモデル「モデルS」が発売されている。
2014年は上昇が続き、2015年1月2日終値219.30ドル、その後は平行線が続き2016年1月4日の終値223.40ドル、2017年1月6日の終値229.00ドルだったが、モデル3の生産が始まった2017年は再び上昇に転じ、2018年1月2日の終値は320.55ドルとなっている。
2018年は3月のリコールで株価は一時250ドル台まで値を下げ、マスク氏は4月1日、旧Twitterで「テスラが経営破綻したことを伝えるのは残念だ」とつぶやき、3月29日の終値266.15ドルから一時248ドルまで急落した。エイプリルフールの悪いジョークの典型だ。
その後テスラ株は持ち直し、再び300ドル台を突破するものの、マスク氏が再度8月にやらかす。Twitterで「420ドルで非公開化することを検討している。資金は確保した」とつぶやいたのだ。
この発言を受け株価は一時10%超値を上げたが、マスク氏独断の発言であり、不正に株価に影響を及ぼすとして批判が相次いだ。最終的に米証券取引委員会(SEC)の調査が入り、証券詐欺で訴えられることとなった。
通期黒字達成した2020年から株価は爆上がり
2019年は310.10ドルで始まった。マスク氏はこの年、投資家との電話会談で自社の時価総額を5000億ドルにすると語ったそうだ。当時、テスラの時価総額は400億ドル規模で、いつごろを想定した話なのかは不明だが、わずか2年で達成することになる。
2020年1月2日には終値430.25ドルまで値を上げた。2020年は上場以来通期で初めて黒字化を達成した年で、年間のEV販売台数も約50万台規模に達した。
株価はうなぎ上りで、6月に1,000ドル、7月に1,500ドル、8月には2,000ドルを突破した。8月末には普通株1株を5株にする株式分割を実施し、株価は約500ドルに。まだまだ伸び続け、2021年1月4日終値は729.77ドルとなった。
この勢いは2021年も続き、2022年1月3日の終値は1,199.78ドルを記録した。ただ、2021年の株式上昇はコロナ禍における金融緩和策などを背景にマーケット全体が上向いており、その反動で2022年は下落することになる。
同年8月に再度1株を3株にする株式分割が行われ約300ドルに。その後下落を続け、2023年1月3日の終値は108.10ドルとなった。2023年は持ち直し、2024年1月5日の終値は237.49ドル、9月13日現在の終値は230.29ドルとなっている。
【参考】マスク氏のビジョンについては「マスク氏「自動運転がテスラを55兆円企業に」 トヨタ抜く計画」も参照。
14年間で株価は約180倍に
上場初日の始値19ドルが、現在は230ドルだ。5株、3株に株式分割されているため、実質230×5×3=3,450ドル相当となり、この14年間で株価は約180倍まで膨れ上がったことになる。
ちなみに、アップルは1984年の上場時から1,800倍、アマゾンは1997年の上場時から2,050倍、Metaは2012年の上場時から12倍、マイクロソフトは1986年の上場時から4,300倍、NVIDIAは1999年の上場時から2,900倍となっている。
Metaを除くテクノロジー各社はテスラに比べ歴史が長いこともあり、いずれも1,000倍超となっている。テスラより約10年早い1993年創業、1999年上場のNVIDIAがここにきて急伸しているように、テスラも今後10年で、さらなる高騰を見せる可能性は十分考えられる。
さらなる成長のカギは「テクノロジー」?
カギは「テクノロジー」だ。テスラをただの自動車メーカーとして捉えれば限界値は近いのかもしれないが、テクノロジー企業として見ればポテンシャルは底知れない。
事実、テスラはいち早くコネクテッド化を図り、車載ソフトウェアのアップデートを無線で行うOTAを導入したり、スマートフォン連携でさまざまな機能を提供したりするなど先進的な取り組みが目立つ。将来的な自動運転化を目論むADAS「FSD(Full Self-Driving)」の取り組みや有料オプション化も他に先んじていた。
EVというハードウェア開発・製造を軸とするフェーズは終わり、今後はマスク氏が望むソフトウェアファーストのフェーズに突入するのではないか。そこにテスラの第二の成長が待ち受けている。
このソフトウェア領域の代表格の一つが自動運転だ。Autopilot、FSDに関する取り組みは長く、マスク氏はことあるごとに自動運転の早期実装に言及してきた。
基本的に目標が達成されることはなく、次第にマスク氏はオオカミ少年と化していったが、これはマスク氏自身が自動運転の実装に前のめりとなっている証左であり、自動運転に対する意欲の表れに他ならない。
また、近い将来の自動運転実現を示唆し続けることで、オーナーや投資家に自社のベクトルを示しつつ期待を抱かせることもできる。
マスク氏の自動運転に関する一連の発言を戦略と捉えれば、今後自動運転実用化に本腰を入れることは間違いない。その時期が、ようやく訪れようとしているのだ。
【参考】マスク氏のこれまでの発言については「名言?迷言?自動運転、テスラのイーロン・マスクCEO発言5選」も参照。
■テスラの自動運転戦略
オーナーカーからデータ収集し開発を加速
テスラは、ADASとしてオーナーに提供しているAutopilotとFSDが一つの武器となっている。有料オプションのFSDは、利用しているオーナーカーから各種データを収集し、開発効率を高めている。
自動運転開発には膨大な公道走行データが欠かせないが、北米だけでも数十万人規模と言われているFSDユーザーからデータを収集することで、自社自らフリートを組んでデータ収集に努めなくても開発を加速することができる仕組みだ。
2024年3月には、FSDを1カ月無料提供するサービスを実施している。FSDは一時値上げを続け1万5,000ドルまで上がったが、現在は8000ドルまで引き下げたようだ。サブスクリプションによる月額も199ドルから99ドルに引き下げ、積極的に利用者増を図っているようだ。
2025年には、欧州と中国でのFSD導入を目指す方針だ。FSDはVer.12.5に達しており、2024年10月にはVer.13がリリースされる予定という。
Ver.12に比べ、13は手動介入1回あたりの平均走行距離が約6倍に伸びると予想されているという。システムは相当の精度まで達しており、レベル3が射程圏に入り始めているのかもしれない。
厳密にODD(運行設計領域)を設定しない分レベル3導入のハードルは高そうだが、テスラはどのような工程を踏んで自動運転導入を図るのか。こういった点にも要注目だ。
【参考】FSDの普及促進については「テスラ株急落!180万円の自動運転ソフト、無料提供で復活模索か」も参照。
Cybercabがターニングポイントに?
近々で最も注目が集まるのが10月10日に予定している自動運転タクシーの発表だ。自動運転タクシー「Cybercab(サイバーキャブ)」を発表するという。
詳細は明かされていないが、これまでの情報を精査すると、ハンドルやペダルを備えないモデルとなる可能性がある。2022年第1四半期決算説明会で、マスク氏がこうしたロボタクシーの量産を2024年ごろに開始する計画を明かしていた。
また、オーナーカー向けに、テスラの配車向けプラットフォームに登録することで不使用時に自動運転タクシーとして稼働させることを可能にする独自サービスについても過去に発表している。
今回、満を持して発表する自動運転タクシーが、果たしてサービス専用モデルなのか、オーナーカーベースのものなのかが注目ポイントだ。
前者の場合、これまでの構想とは全く別の新しい事業構想発表となる可能性が高い。場合によっては、Waymoなどと同様に自律走行可能なエリアをジオフェンスで明確に分けて自動運転サービスに着手することも考えられる。テスラにとってこの手法は戦略転換となるが、そこからどのような先を見据えているかが重要だ。他社とは異なる視点が必ず盛り込まれているはずだ。
一方、オーナーカーベースの場合、どのように自動運転の規制をクリアしていくのかが気になるところだ。州ごとに異なる規制をクリアするのみならず、ODDの在り方も問われることになる。また、自動運転タクシーとする場合、無人走行が必須となるため、ハードルは異常に上がる。
果たしてマスク氏は、どのような絵を描いているのか。要注目だ。
【参考】テスラの自動運転タクシーについては「テスラ株価、ロボタクシー発表日「上か下に20%」動く可能性 Xデーは10月10日」も参照。
■自動運転開発の先行上場組の状況
上場先行組はぱっとせず……
数は少ないが、先行して株式上場を果たした自動運転開発企業もいる。Aurora InnovationやTuSimple、Embark Technology(Embark Trucks)などだ。LiDAR開発企業を含めると、Luminar TechnologiesやInnoviz Technologiesなど相当数に上る。
しかし、大半の企業が株式市場では苦しんでいるようだ。2021年11月にナスダックに上場したAurora Innovationは、初日の終値9.60ドルで一時13ドル台まで上げたもののその後は停滞し、1ドル台も続いていた。ここ半年ほどは緩やかに上昇しているが、まだ5ドルに達していない。TusSmpleは上場廃止し、Embarkは早々に事業売却を決めてしまった。
【参考】自動運転関連株の動向については「自動運転、米国株・日本株の関連銘柄一覧(2024年最新版)」も参照。
株式市場の自動運転低評価をマスク氏が変える?
株式市場では明らかに自動運転技術の評価が低い。投資企業アーク・インベストも同様の見解を示している。各社の上場が早過ぎた点も否めないが、ビジネスモデルを明確に示しきれていない点も要因に挙げることができるかもしれない。
しかし、こうした点をクリアしていくのがマスク氏だ。誇張が混じるものの、マスク氏はビジネスモデルを明確に示すことができる。そして株主を味方につけ、世論さえも変えていく力を持っている。
株式市場において未成熟の自動運転分野にマスク氏が強くアプローチすることで、市場全体の流れが変わる可能性があるのだ。短期的にテスラ株は上昇し、その後の動向によっては爆発的に伸びていくことも考えられる。
EVで180倍を達成したテスラが、大手テック企業のように1,000倍を超えるための第一手は、自動運転が担うかもしれないのだ。そのとてつもないインパクトは自動運転市場全体に波及し、同業他社の株すら押し上げるかもしれない。
■【まとめ】将来マスク氏の各種事業がコングロマリット化する?
マスク氏はこのほか、バッテリー技術含むエネルギー面や通信面でも優位性を持っている。ロボティクスやAI研究にも余念がない。
テスラとして次に注目されるのは自動運転技術となりそうだが、こうしたさまざまな技術・テクノロジーが融合すれば、冗談抜きで株価1,000倍を軽く超えていくかもしれない。マスク氏の各種事業がコングロマリットとなり、相乗効果を発揮していくのだ。
その第一歩となるかもしれない自動運転タクシーの発表にまずは注目だ。
※編注:この記事は特定の株式銘柄への投資を推奨するものではありません。
【参考】関連記事としては「テスラの自動運転技術・Autopilot/FSDを徹底分析(2024年最新版)」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)