トヨタG出資のNearMe、赤字倍増の純損失7.4億円 第7期決算

空港シャトルなど手掛ける注目ベンチャー



出典:官報

次世代型モビリティサービスの開発に注力する株式会社NearMe(本社:東京都中央区/代表取締役:髙原幸一郎)=ニアミー=の第7期(2023年1〜12月)決算が、このほど官報に掲載された。同社は、トヨタグループのトヨタ紡織も出資する注目企業だ。

当期純損失は7億4,546万円。第6期決算の当期純損失は3億6,908万円だったため、第7期では赤字額が約2倍になったことになる。なお過去3期の純損益の推移は、以下の通りとなっている。


<純損益の推移>
・第5期:▲2億6,828万4,000円
・第6期:▲3億6,908万6,000円
・第7期:▲7億4,546万3,000円
※▲はマイナス

■第7期決算概要(2023年12月31日現在)

貸借対照表の要旨(単位:千円)

▼資産の部
流動資産 711,089
固定資産 5,244
資産合計 716,333
▼負債及び純資産の部
流動負債 141,399
固定負債 381,201
株主資本 193,384
資本金 100,000
資本剰余金 1,795,352
資本準備金 1,795,352
利益剰余金 △1,701,968
その他利益剰余金 △1,701,968
(うち当期純損失)(745,463)
新株予約権 349
負債・純資産合計 716,333

■新たな移動のシェアサービスを手掛ける

出典:NearMe公式サイト

2017年設立のNearMeは、「移動の『もったいない』を解決し、1人でも多くの人が、自由に移動でき、住みたい街に住み続けられる社会を実現すること」をミッションに、リアルタイム位置情報のインターネットサービス事業を手掛けている企業だ。

シェアリングエコノミーのMaaS領域から事業活動を開始し、2019年8月からは空港送迎型のエアポートシャトルを運営している。オーバーツーリズムなどの観光課題や日常における移動課題やドライバー不足に対応できる仕組みづくりを目指し、多様なサービスを展開している。


同社は独自のAI(人工知能)を活用した最適なルーティングで、出発地から目的地までの移動をドアツードアで結ぶタクシーのシェアサービス「NearMe」を提供している。

NearMeには、自宅やホテルと全国の空港をつなぐドアツードアの送迎シャトルサービス「NearMe Airport」のほか、自宅やホテルと全国の空港をつなぐ定額の貸切ハイヤー・タクシー「NearMe Limo」、ゴルフ場と自宅や宿泊場所をドアツードアでつなぐシャトルサービス「NearMe Golf」といったサービスがある。

法人・自治体向けには、ドアツードアの通勤シャトル「NearMe Commute」や、エリア内における移動をリーズナブルな料金で提供する多目的なシェア型の送迎サービス「NearMe Town」、LINE配車システム「NearMe×LINE」の開発も手掛けている。

■これまでにトヨタ紡織などが出資

NearMeは、シリーズBラウンドとして約13億円を資金調達したことを2023年3月に発表した。これまでの累計調達額は約23億円に達したという。


同ラウンドでの主な引受先および金融機関には、トヨタグループで自動車部品を製造・販売しているトヨタ紡織も含まれている。トヨタ紡織はインテリアスペースクリエイターとして移動空間の新しい価値の提供に向け、NearMeと共に車室空間を創造していくとしている。

そのほか、第一生命保険や大林組、三井不動産、JTB、中国電力、日本政策金融公庫などもこのラウンドに参加している。

調達した資金は、NearMe Airportを中心としたスマートシャトル事業のさらなるマーケティング投資により、サービス認知および利用拡大を図っていくという。また引受先企業との協業により、空港送迎に限らない、さまざまなシチュエーションでドアツードアによる快適な移動の提供を目指していく。

【参考】関連記事としては「LINE上でタクシー配車!パーソルとNearMe、テスト導入を開始」も参照。

LINE上でタクシー配車!パーソルとNearMe、テスト導入を開始

■地方でもサービス提供を拡大中

NearMeは、デロイトトーマツグループが発表したテクノロジー企業成長率ランキング「Technology Fast 50 2023 Japan」で9位を受賞した。

2024年3月には、熊本県(公社)熊本県観光連盟からの委託事業として運行をサポートしている観光タクシー「阿蘇らくらくWebタクシー」の運行エリアを拡大したことを発表した。また秋田県美郷町で観光シェアタクシー「ミズモシャトル」を2024年8月30日まで運行するなど、地方自治体などとの取り組みも積極的に行っている。

モビリティの在り方が変革している現在、NearMeが提供するサービスはますます必要性が増してくる可能性が高い。同社のさらなる成長に期待だ。

※官報に掲載された決算公告に関する記事は「自動運転・MaaS企業 決算まとめ」から閲覧頂くことが可能です。

【参考】関連記事としては「MaaSベンチャーNearMe、純損失3.6億円を第6期決算で計上」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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