静岡県浜松市で実施された「浜松自動運転やらまいかプロジェクト」において、第4回実証実験が2023年11月〜2024年2月に行われた。この実証後、今後も利用したいという声が多くを占めるという調査報告が発表された。
試乗後のアンケートでは今後の利用意向について、「希望する」「どちらかというと希望する」と回答した人が9割を占め、自動運転車に対する市民の受容度が高まっていることを感じさせる結果となった。
▼浜松自動運転やらまいかプロジェクト 第4回実証実験 結果報告|浜松市
https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/documents/88169/houkoku4.pdf
■第4回となった浜松市のプロジェクト
浜松自動運転やらまいかプロジェクトは、浜松市、スズキ、遠州鉄道、BOLDLYの4者が共同で自動運転サービス実用化に向けた検討を行う取り組みとなる。「交通空白地における交通弱者の足の確保」を課題とし、これまでに4回にわたり実証実験を行ってきた。
最新の第4回実証実験は、「公共交通の新たな手段を確保するため、自動運転車両を活用した交通システムの実用化」と「緊急事態発生時の対応や遠隔監視などを含む、長期間での自動運転運行体制の実現」の2つを目指すことを目的に行われた。
第4回では、予約から運行、遠隔監視に至るまでの一連の運用の検討を行い、交差点での右左折や一時停止、橋梁の通行が可能になるなど、前回より自動運転区間が拡大した。
使用車両は、自動運転レベル2の機能を搭載したスズキのミニバン「ソリオバンディット」で、片道約9.1キロのルートを走行した。利用者は359人だった。
■実証後の利用意向は95.7%
第4回実証実験で自動運転車に試乗した人を対象にしたアンケートでは、今後の利用意向について「希望する」という回答が一番多く、67.1%であった。次が「どちらかというと希望する」28.6%で、この2つの回答の合計は95.7%と、ほとんどの人がまた利用したいと思っているという結果となった。前回の実証実験より約5%利用意向が増加したという。
なお「どちらかというと希望しない」という回答は2.9%、「希望しない」は1.4%であった。
また「乗車中に不安や危険を感じることがありましたか?」という質問では、「あった」12.9%、「なかった」87.1%という結果となった。
2022年5月に行われた第3回実証実験では、「あった」5.8%、「なかった」94.2%で、第4回では乗車中に不安や危険を感じると回答した人が7.1%増加した。これは、自動運転区間や機能の拡大が要因の1つになっていると推察されている。
■実装のエキスパート、BOLDLYが協力
この実証実験での遠隔監視・乗車予約・車内案内システムとして、ソフトバンク子会社であるBOLDLYの自動運転車両運行プラットフォーム「Dispatcher(ディスパッチャー)」が活用されている。
監視体制は、現地の監視センターと茨城県境町の遠隔監視センターとを併用した。緊急時対応の模擬訓練を実施し、境町の遠隔監視センターとの連携を確認できたという。境町では日本の自治体で初めて自動運転バスが定常運行しており、その実装を手掛けたのがBOLDLYだ。
第4回の実証実験前半は、スマートフォンからのLINE予約のみで運用を行った。しかし予約操作が難しく予約できない人が多かったため、後半は試験的に電話予約を受け付けた。また一部で電波の悪い区間があり、遠隔監視システムから監視ができない区間があったという。
■さらなる自動運転区間の拡大も計画
第4回実証実験では一般ユーザーの試乗により、アンケートを収集することができた。ただし沿線住民の利用が少なく、自動運転車を体験してみたい沿線住民以外の体験乗車が多い状況であったようだ。沿線住民の同実証実験の認知度は高いものの、利用にはつながらないという結果になったため、住民が利用しやすいように改善していく必要があると考えられている。
現状の移動手段に課題を感じている人は6割で、その理由の多くが「利用できる公共交通の本数が少ない」という点である。そのため新たな公共交通手段として自動運転車を導入することに期待する住民も多い。自動運転車をより多くの住民に利用してもらうためには、継続的な運行による定着と周知の拡大に努めるとともに、経路やダイヤを含めたニーズ把握とコストの検討が必要だということが明らかになったという。
今後、より少人数で運営するといった自動運転運行体制の見直しや、自動運転区間をさらに拡大していくことに取り組んでいくようだ。自治体・自動車メーカー・交通事業者・ITサービスがタッグを組んだこの取り組み。今後の展開が楽しみだ。
【参考】関連記事としては「茨城県境町の自動運転バス、経済効果30億円規模に 2020年11月に定常運行開始」も参照。