米国や中国ですでに商用化され、市民にとっては走行している姿も見慣れたものになりつつある自動運転タクシー(ロボタクシー)。無人走行技術はすごい勢いで進歩しており、もし日本国内の実証実験や海外で試乗できるチャンスがあるなら、積極的に試してみてもいいだろう。
一方、「乗りたくない」「やめとけ」と言った声もある。そのほとんどが、安全面での不安を理由に挙げている。確かにアメリカでは、自動運転車による交通トラブルや事故はたびたび発生している。
しかし、ドライバーレスの自動運転車ならではのトラブルもあるが、人間による運転であったとしても回避できなかったようなケースもある。イメージだけで自動運転の危険度を判断せず、事故やトラブルの具体的な中身、そして手動運転との「事故率」の比較に着目するようにしたい。
【参考】関連記事としては「自動運転車の事故一覧(2024年最新版) 日本・海外の事例を総まとめ」も参照。
■Waymoによる交通トラブル・事故
自動運転タクシーを世界で初めて商用展開したのは、米Google系のWaymoだ。2018年12月にアリゾナ州フェニックスで有料の自動運転タクシーサービスをスタートした。その後2021年8月にカリフォルニア州サンフランシスコ、2024年3月にロサンゼルスにもサービスを拡大している。
2023年4月、Waymoの自動運転タクシー5台がサンフランシスコの路上で急停止し、交通渋滞を引き起こした。濃霧により自動運転システムの判断能力に乱れが生じ、運転を続けるのは危険だとシステムが判断したためで、数分後に霧が晴れてまた走行を開始したという。
翌5月には、同じくサンフランシスコで放し飼いの犬に接触し、死なせてしまうという事故を起こした。Waymo車には安全要因が同乗していたが自動運転モードで走行しており、犬が飛び出してきたことを自動運転システムは検知したものの、接触を避けることができなかったようだ。
同年12月にはフェニックスで、前方で不適切な方法でトラックに牽引されていた後ろ向きのピックアップトラックとWaymo車両が接触した。接触後もトラックとピックアップトラックのどちらも停止せず、その数分後には別のWaymo車両も同じピックアップトラックと接触したという内容であった。
Waymoによる検証では、牽引するトラックとピックアップトラックの組み合わせの方向の不一致のため、Waymoの自動運転車が牽引されているピックアップトラックの動きを誤って予測したことによる事故だと判断したという。その後、修正プログラムを開発し、事故の数日後にはこの問題に対処するためのソフトウェア・アップデートを開始した。
■Cruiseによる交通トラブル・事故
米GM傘下のCruiseは、2022年2月から無償での自動運転タクシーサービス提供をスタート、その後有償化している。同年9月には、フェニックスとテキサス州オースティンにもエリアを拡大することを発表し、その後実現している。
Cruiseは2022年6月にサンフランシスコでトヨタのプリウスと衝突した。プリウスは時速40キロ制限の道路を時速64キロで走行していたようだ。
米運輸省高速道路交通安全局(NHTSA)の報告書によると、Cruiseの自動運転タクシーは特定の状況下において、他の車両の進路について誤った予測をしたり、突然の進路変更に十分に反応できなかったりする可能性が指摘された。その後Cruiseはサンフランシスコで展開中の自動運転タクシー80台のソフトウェアを全てリコールし、翌月中に全て新バージョンに更新させている。
2023年8月には、消防車と衝突する事故を起こした。さらに同年10月には人身事故を起こした。サンフランシスコでCruiseの自動運転タクシーが、他の車両にひき逃げされた女性を下敷きにする事故を起こした。Cruise車は女性と接触した後、安全上路肩に寄るため再度動き出したが、その際女性を約6メートル引きずったという。
その後Cruiseは自動運転タクシーの運行を全面的に停止し、最近になって部分的に再開しているという段階だ。
■大事なのは「事故率」の比較
過去には、テスラやUberの自動運転車による死亡事故も起きている。ただし、中には部分的自動運転機能の作動中にハンドルから手を離すなど、自動運転に対する解釈間違いによる事故も多い。また人間の運転でも回避できなかったような事故もある。
自動運転車による事故やトラブルはインパクトが大きいため、「自動運転車=危険」と思ってしまいがちだが、それは短絡的だ。大事なのは「事故率」の比較であり、手動運転よりも自動運転の方が事故率が高いのか低いのか、に注目すべきだ。
ちなみに国土交通省の調査では、過去に日本国内で起きた調査対象の死傷事故のうち、「自動運転車同士」なら回避率が89.5%というデータもある。詳しくは以下の記事を参考にしてほしい。
【参考】関連記事としては「過去の死傷事故、「自動運転車同士」なら回避率89.5% 国交省調査」も参照。
またWaymoも死亡事故シナリオで調査を行っており、衝突回避率は自動運転なら75.0%、手動運転なら62.5%という数字を出している。こちらも合わせて参考にしてしょいい。
【参考】関連記事としては「衝突回避率:自動運転は75.0%、手動運転は62.5% 米Waymo、死亡事故シナリオで調査」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)