トヨタが言い出しっぺ!自動運転バスの接近、光で知らせる道路鋲

積水樹脂と光波とともに共同開発



出典:Flickr / DennisM2 (CC0 1.0 : Public Domain)

広島県呉市で2024年1月18~21日にかけ、自動運転シャトルを使った「次世代モビリティ導入に向けた交通社会実験」が実施され、その中で使われた次世代道路鋲「Smart Road Stud(スマート・ロード・スタッド)」が活用された。

このSmart Road Studは、複数色の発光で歩行者や自転車に注意喚起することを可能にするもので、社会実験では自動運転シャトルが近づくと光で周囲の歩行者に注意喚起が行われた。


このSmart Road Studの開発に取り組んだのは、積水樹脂と光波、そしてトヨタ自動車。開発プロジェクトはトヨタが言い出しっぺで、自発光式道路鋲の製造メーカーである積水樹脂と、LEDに強みがある光波に共同開発を提案し、始まったという。

▼モビリティを支える道路インフラ~Smart Road Studシステム開発|トヨタ自動車
https://global.toyota/jp/mobility/frontier-research/40454746.html

出典:積水樹脂プレスリリース
■道路鋲にセンサーを装備

トヨタの公式サイトによれば、既存の自発光式道路鋲は単色LEDのみが使用されており、点滅する周期も一定のものが多かった。Smart Road Studでは「複数色」などにこだわり、Smart Road Studでは4色LEDを採用することに決めたという。

そして、歩行者の動きを検知するために道路鋲にセンサーを装備させた。光を通し、かつセンシングを可能にするため、工夫が施されているという。トヨタの公式サイトでは以下のように説明されている。


双方向コミュニケーションを実現するためには、歩行者の動きを検知するセンサーが必要です。屋内では赤外線式のPIR(Passive Infra-Red)センサーがありますが、光波からLEDの光を通すためには透明なポリカーボネート樹脂を使用しなければならないこと、そして、ポリカーボネート樹脂は赤外線を透過できないことを教えていただきました。このことは我々にとって大きな気づきでした。その結果、電波を利用する低価格なドップラーレーダ方式を採用して歩行者の動きを検出することにしました。(引用:https://global.toyota/jp/mobility/frontier-research/40454746.html

自動運転ラボではこの取り組みをすでに報じている、詳しくは以下の記事も参考にしてほしい。

出典:積水樹脂プレスリリース
■手動運転にあって自動運転にないもの

人間が運転している車両であれば、アイコンタクトなどで歩行者とのコミュニケーションができる。こうした意思の伝達手段は自動運転車にも求められており、車両の伝面に「目」を模した機器を取り付け、その瞳の動きで自動運転AIの意思を伝えるという取り組みも行われている。


こうした取り組みをは別に、自動運転車に対する信頼度が高まるまでは、今回のような自動運転車の接近を知らせる取り組みも非常に意義が大きいと思われる。

公道で自動運転車が移動サービスを提供するためには、技術そのものの安全性はもちろんだが、乗客や周囲の歩行者の「安心」も非常に大切だからだ。社会受容性が十分に高まるまでは、こうした安心度を高める取り組みが自動運転移動サービスの普及に一役買うはずだ。

■次世代道路鋲の発展可能性はさらに

Smart Road Studに関してトヨタの公式サイトでは「危険を知らせるだけではなく、目的地までの道案内や、歩行者の状態に合わせた点滅周期で快適な歩行をサポートするなどのアイデアも浮かびました」と説明されている。次世代道路鋲の発展可能性はまだまだ大きいようだ。

自動運転移動サービスに関しては走行技術そのもののほか、こうした無人サービスの普及を下支えする技術や取り組みも重要だと、改めて考えさせられる。

【参考】関連記事としては「トヨタの自動運転戦略(2024年最新版)」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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