自動車用照明製造大手の株式会社小糸製作所(本社:東京都品川区/取締役社長:加藤充明)が、自動運転時代を見据え、クルマの意図を視覚化して外部に伝える技術を開発しているようだ。
同社は米国子会社であるノース・アメリカン・ライティング・インクとの共同で、2024年1月9日から米ラスベガスで開催される世界最大級のテクノロジー展「CES 2024」に出展し、「次世代フロントフェイス」を初公開する。
■3つの軸に沿い技術開発
小糸製作所は、次世代モビリティ社会においても交通事故低減や渋滞解消など交通社会の課題解決を目指す、小糸グループの新たな「光」の可能性をCES 2024で紹介する。それにより、安全・安心で快適な社会の実現を目指しているという。
同社は、自動運転などが普及する次世代モビリティ社会の安全・安心のため、「ドライバーサポート」「センシングサポート」「コミュニケーションサポート」の3つの軸に沿った技術開発を行っている。
■「次世代フロントフェイス」に注目
注目したいのはその1つ「コミュニケーションサポート」だ。人とクルマを積極的につなげる光の技術で、クルマの状態や次の動きを周囲の道路利用者に伝えることで、豊かな暮らしと安全な交通社会を実現する最新技術を初公開する。
初公開となるのは、光によるコミュニケーション機能と存在感のあるランプシグネチャの両立を提案する新しいコンセプトモデル「次世代フロントフェイス」だ。コミュニケーションを可能にするさまざまな光を統合し、ドライバーや周辺の道路利用者にメッセージを送ることができる仕組みになっている。
具体的には、高精細ADBを搭載したヘッドランプによる路面上への情報表示や、路面描画ランプ、アニメーションランプという機能になる。
路面描画ランプでは、路面に光でパターンを投影することで、周囲の交通参加者に車両の接近や動きの情報を知らせ、出会い頭の事故や右左折時の巻き込み事故などを防ぐことができる。自動運転社会においては、アイコンタクトに代わるコミュニケーション手段として期待されているという。
またアニメーションランプは、ランプの光の動きの演出でドライバーや周囲の交通参加者に情報を伝える。EV(電気自動車)の充電状況の表示やウェルカムランプなど、クルマの表情を豊かにするだけでなく、ドライバーのクルマの安全・安心をより高めることができるようになる。
■「ドライバーサポート」技術なども公開
そのほか、小糸製作所は「ドライバーサポート」「センシングサポート」という軸に沿った技術も公開する。
ドライバーサポートでは、「高精細ADB(Adaptive Driving Beam)」という技術を開発している。従来は12個の分割だったハイビームの照射範囲を1万6,000個に分割し、細分化された1万6,000個のLEDの点消灯を行い、出力光度を制御する。それにより、消灯する範囲を極小化するとともに明るく照らす範囲を最大化し、歩行者や障害物の早期発見をサポート、夜間の交通事故ゼロを目指すという。
センシングサポートでは、「LiDARラインナップ」や移動体検知システム「ILLUMIERETM(イルミエルTM)」を紹介する。ILLUMIERETMは、人物を特定しないというLiDARの特長を生かし、屋内外に設置したLiDARモジュールによりプライバシーに配慮しながら移動体の位置情報を点群データとして取得する。そして制御ユニットで複数の人やクルマを判別・分類し、動きを把握するシステムとなっている。
■【まとめ】HMIが自動運転社会を安全で快適なものに
今回初公開される次世代フロントフェイスは、人とクルマのコミュニケーションを図るHMI(ヒューマンマシインターフェース)の一種と言える。
ドライバーレスでも走行する自動運転化社会では、クルマが発するコミュニケーションが重要になる。小糸製作所の技術が、自動運転車の進化を後押ししていきそうだ。今後の実用化にも注目したい。
【参考】関連記事としては「あの人材大手も!?自動運転「意外な参入企業」10社」も参照。