空いた時間に「タクシー運転手」に!ライドシェアの仕組み、いらないかも?

電脳交通が実証実験、時給は1,200〜1,800円



出典:電脳交通プレスリリース

ライドシェアは空いた時間に副業できる便利な仕組みであり、このことから海外でも普及が進んだ。しかし、もし空いた時間で「タクシードライバー」として副業が可能なら、そもそもライドシェアの仕組みはいらないかも。こうしたことを感じさせる報道発表があった。

株式会社電脳交通(本社:徳島県徳島市/代表取締役社長:近藤洋祐)は、空いた時間に副業でタクシードライバーとして収入を得られるという実証実験を、2023年11月10日から開始した。


「スポドラ」と名付けられたこの実証実験は、二種免許保有者を対象に行うもので、まずは三和交通グループを連携先として、横浜・埼玉エリアを対象に実施される。

あくまで二種免許保有者が対象であるため、海外で展開されているライドシェアのように一般の人がすぐ副業を開始することができないものの、二種免許さえ取得してしまえばライドシェアのような自由度でお金を稼ぐことができるようになる時代がやってくるかもしれない。

■乗務員不足が深刻なタクシー業界

現在、タクシー業界では乗務員不足が深刻な問題になっている。「勤務時間が長い」「柔軟に働けなさそう」といったイメージがあるタクシードライバーだが、実際は柔軟な働き方の調整が可能なタクシー事業者も多く存在するという。

さらに、一日中常に乗務員不足になっているわけではなく、需要ピーク時の朝・夕の通勤時間帯や深夜帯、週末のイベント開催時など特定の時間帯需要に対応できれば、この問題は大きく改善されるという仮説もあるようだ。


こういったことを背景に、二種免許保有者が需要ピークの特定時間帯だけ勤務する形の副業特化採用サービスを実証実験として開始するに至った。電脳交通が、副業人材を受け入れたいタクシー事業者と求職者をマッチングする役割を担い、業界の重要課題である乗務員不足の解消・緩和を目指す。

■副業タクシー乗務員「スポドラ」とは?

スポドラは「スポットドライバー」の略だ。スポットドライバーは一般的に、単発で働くドライバーのことを指す。

実証実験の報酬形態は時給制で、1時間あたり1,200〜1,800円となっている。残業割増や深夜割増もあるという。深夜や早朝など、タクシー需要が増加する時間帯は時給がアップする仕組みだ。週1日以上、1日4時間以上の勤務が条件となっており、シフト提出は前日まで可能だ。


特筆すべきは、タクシー副業を始めるためのサポートとして、第二種免許を取得するための教習所に通学する時から時給が発生するという点だ。

なおスポットドライバーを募集している電脳交通の公式サイトでは、働き方の具体例が提示されている。33歳の主婦の場合、1日4時間・週2〜3日の勤務で、1カ月の給与は6万円となる。そのほかイラストレーター28歳、1日4〜6時間・週3~4日勤務で月10万円、トラックドライバー38歳、1日4時間・週2~3日勤務で7万2,000円などだ。

子どもを預けられる昼間だけ働く、シフト提出が前日までのため時間ができたら働くなど、自分に合った働き方ができる。

■ライドシェアとスポドラの違い

日本における「有償ライドシェア」は道路運送法で規制されており、事実上禁止されている。

ただし、コストをシェアする「カープール型」については、サービスの提供を受けた者からの給付が「好意に対する任意の謝礼」と認められる場合や、「金銭的な価値の換算が困難な財物や流通性の乏しい財物など」によりなされる場合、また、ボランティア活動として行う運送において、実際の運送に要したガソリン代や有料道路使用料、駐車場代のみを収受する場合は許可などは必要ない。

有償ライドシェアについては現在、タクシー業界や一部の自治体が反対を表明する一方で、新経済連盟が規制撤廃を働きかけたり、河野太郎デジタル大臣や元首相の菅義偉氏などが解禁論などを唱えたりするなど、議論の真っ最中にある。

二種免許取得を義務づけられていないライドシェアのドライバーに対し、今回のスポットドライバーは二種免許を保有、しかもタクシー会社に所属し専用のタクシー車両を使用する。利用者にとっては、通常のタクシーと何も変わらず利用できる。

では一般の人がどちらを利用したいかだが、安心感ではスポットドライバーによるタクシーに軍配が上がるかもしれない。

【参考】関連記事としては「ライドシェアの法律・制度の世界動向(2023年最新版)」も参照。

■タクシー運転手としてギグワーカー的に働く

電脳交通は、「タクシーのDXを推進し地域交通を支え続ける」をミッションに、クラウド型タクシー配車システムや配車業務委託サービス、地域公共交通ソリューションなどを提供している企業だ。

今回のスポドラの実証実験は二種免許を保有という前提があるため、多くの人が気軽に副業できる枠組みだとは言い切れない。しかし、二種免許さえあればライドシェアのようなギグワーカー的な働き方ができるという点では、画期的な取り組みではないだろうか。今後の展開に期待したい。

【参考】関連記事としては「ライドシェアとは?解禁時期は?(2023年最新版)」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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