「陸海空」の次世代モビリティ、東京ベイエリアで相互連携へ

空飛ぶクルマ向け浮体式ポートが核



出典:エイトノット・プレスリリース

空飛ぶクルマeVTOL:電動垂直離着陸機)用浮体式ポートを核とした、陸海空のマルチモーダルMaaS実現に向けたシステムの構築と運行実証がスタートする。陸(自動運転車)、海(自律航行船)、空(空飛ぶクルマ)における複数の移動手段が相互連携した交通サービスを実現するための取り組みになるという。

このプロジェクトは、東京都政策企画局が展開している「東京ベイeSGプロジェクト 令和5年度先行プロジェクト」の「次世代モビリティ」の応募テーマにおいて、野村不動産を代表企業とするグループが提案し採択されたものだ。


同グループには、清水建設やANAホールディングス、朝日航洋、Kidou Systems、エイトノット、東京ウォータータクシーが参加している。

▼東京ベイeSGプロジェクト
https://www.tokyobayesg.metro.tokyo.lg.jp/

■浮体式ポートの実現性を検証する背景

空飛ぶクルマは、交通渋滞が深刻化する都市部での活用のほか、離島や山間部での移動に関する利便性の向上や災害時の救急搬送での活用など、新しいサービスの展開やさまざまな社会課題の解決につながることが期待されている。

社会実装に向けては、離着陸する場所の確保がポイントになりそうだ。既存建物の活用や新規開発時の一体整備だけでなく、海や川、湖といった水面の利用も可能になれば、空飛ぶクルマの早期の普及にもつなげることができるという発想から、多拠点化も可能な浮体式ポートの実現性を検証するに至ったという。


また、人々の行動様式や価値観の多様化が進む中、空飛ぶクルマの離発着場からの自動運転車や自律航行船による二次交通も含めた検討を行うことで、シームレスな移動を可能にする新たなライフスタイルの実現を目指すとしている。

■Joby Aviationもアドバイザーとして参加

プロジェクトは、東京都江東区と大田区の中央防波堤エリアで、最長2026年3月末まで実施される。

具体的な実証内容は、「空飛ぶクルマ用浮体式ポートの構築・検証」「自動運転車による運行実証」「自律航行船による運航実証」「マルチモーダルでの旅客を受入れるターミナル施設の課題抽出」「陸・海・空の各モビリティの相互連携を支援するシステムの構築・検証」の5つだ。

野村不動産がプロジェクト全体調整・管理とターミナル施設における課題抽出、清水建設が空飛ぶクルマ用浮体式ポートの構築・検証、ANAホールティングスが浮体式ポートの運用面や設備面、展開可能性の検討・監修を担当する。


また朝日航洋は空飛ぶクルマを見据えた既存モビリティによる離発着実証、Kidou Systemsは自動運転車による運行実証やターミナル施設等におけるロボット関連技術の導入・運用、陸・海・空の各モビリティの相互連携を支援するシステムの構築・検証を担う。自律航行船による運航実証を手掛けるのは、エイトノットと東京ウォータータクシーになる。

なお空飛ぶクルマを開発するアメリカの上場企業であるJoby Aviationがアドバイザーとして事業協力し、浮体式ポートやターミナル施設における空飛ぶクルマ関連の技術的なアドバイスを行うようだ。

出典:清水建設プレスリリース
■東京発の取り組みが世界をリード?

実施各社はこの実証を通じ、次世代モビリティの早期の社会実装に貢献し、新たなライフスタイルを実現できる次世代の街づくりにつなげるとともに、サステナビリティの向上や都市機能の強化等の社会課題の解決をしていく。

さらに、持続可能性と経済性を両立させた都市モデルをつくり上げ、東京ベイエリアから国内外に発信することにより、東京の国際的な存在感の向上も目指すという。

各分野において次世代モビリティ開発などに積極的な企業がタッグを組んだこのプロジェクト。陸海空の移動を連携させるという取り組みは、世界でもまだ例は少なそうだ。この分野で日本が世界をリードするきっかけとなるか、注目だ。

【参考】関連記事としては「自動運転と東京(2023年最新版)」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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