モビリティDX展開のWill Smart、純損失2.8億円 第11期決算

独自プラットフォーム「Will-MoBi」を展開



出典:Will Smart公式サイト(※クリックorタップすると拡大できます)

AI(人工知能)やIoT関連のソリューションを提供する株式会社Will Smart(本社:東京都江東区/代表取締役社長:石井康弘)の第11期決算公告が、同社公式サイトに掲載されている。

当期純損失は2億8,733万円であった。第10期の当期純損失は3,310万円であったため、赤字額を増やしたことになる。


Will Smartは、ゼンリンデータコムの社内ベンチャー企業として2012年に設立された。同社はモビリティ分野の取り組みでも注目されており、電車やバスなどの交通機関や、駅やバスターミナル、空港といった交通拠点で活用可能なさまざまなソリューションの構築を手掛けている。

■決算概要(2023年3月31日現在)
賃借対照表の要旨(単位:千円)

▼資産の部
流動資産 369,910
固定資産 236,689
資産合計 606,599
▼負債及び純資産の部
流動負債 309,018
固定負債 12,968
負債合計 321,987
株主資本 284,612
資本金 545,850
資本剰余金 117,903
その他資本剰余金 117,903
利益剰余金 △287,331
その他利益剰余金 △287,331
繰越利益剰余金 △287,331
自己株式 △91,000
純資産合計 284,612
負債・純資産合計 606,599

損益計算書の要旨(単位:千円)

売上高 813,117
売上原価 572,512
売上総利益 240,605
販売費及び一般管理費 420,521
営業損失 △179,916
営業外収益 1,601
営業外費用 1,023
経常損失 △179,339
特別損失
税引前当期純損失 △273,924
法人税、住民税及び事業税 1,063
法人税等調整額 12,343
当期純損失 △287,331

■ゼンリンデータコムの社内ベンチャーとして
出典:Will Smart公式サイト

Will Smartは、ゼンリンデータコムのデジタルサイネージ事業会社として2012年12月に設立された。「自らのアイデアとテクノロジーを活用し、社会課題を解決する」をミッションに、現在はITソリューション事業やIoT共創事業、モビリティシステム事業を展開している。


2018年12月にJR九州や四国電力など6社と資本業務提携を行うことを発表した。その際のプレスリリースでは、「現在の中核事業である『IoTソリューション事業』やブランディング事業である『IoT共創事業』に加え、将来の中核事業である『モビリティシステム事業』などを見据えた成長戦略を実現するべく、複数の企業と資本業務提携を行うことを決定」との記載があった。この数年で、急速にモビリティシステム事業が拡大したことを感じさせる。

また2019年10月にAIカメラソリューションを提供するAWLと、2020年3月にAI画像認識ソリューションを提供する韓国のLaonPeopleと業務提携を行ったことを発表している。2021年3月には、ENEOSと資本業務提携を行い、ENEOSグループのモビリティサービス事業の成長パートナーとして事業の体制強化などを推進することを発表した。

■モビリティDXプラットフォーム「Will-MoBi」
出典:Will Smartプレスリリース

Will Smartは2023年9月から、モビリティ事業向けにモビリティDXプラットフォーム「Will-MoBi」の提供をスタートした。レンタカー事業者向けにカーシェアシステムの構築や、バス事業者向けにオンライン予約システムの構築、鉄道事業者向けにリアルタイム鉄道運行情報配信システムの構築などを行うことができるソリューションとなっている。

またWill-MoBiのユーザーアプリ機能や管理画面機能、キーボックスや車載機器のハードウェアといった機能を活用することで、マンションの居住者やビルのテナントなど、特定のコミュニティメンバーで車を共有する新しいかたちのカーシェアリング「コミュニティカーシェア」を実現できる。


このプラットフォームではカーシェアビジネスに必要なハードウェアとソフトウェアを1つのパッケージで提供しているため、少ない初期投資コストで、すでにある土地や車を活用してカーシェアを始めることが可能になるという。

■元観光庁長官の顧問就任を発表

Will Smartは、2023年10月17日付で元観光庁長官である田端浩氏が顧問に就任したことを発表した。

同社の石井社長は、「当社は『移動』を支えるテクノロジー企業として、鉄道やバス等の人や物の移動によって経済活動を行う事業者の皆様の経営課題の解決を支援してきた」と説明、「現在、CASEの発展や労働力不足など市場環境は激変の最中にある。当社は現況を成長機会と捉えテクノロジーによる課題解決に邁進していく」とコメントしている。田端氏の顧問就任による経営強化により、事業活動を加速していくという。

日本のモビリティ関連事業を下支えするWill Smartに今後も注目だ。

※官報に掲載された決算公告に関する記事は「自動運転・MaaS企業 決算まとめ」から閲覧頂くことが可能です。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




関連記事