自動運転車と小型自動配送ロボットは、社会実装を進めるためすでに日本国内で法整備が行われているが、その中間的な存在である「中速・中型」の自動運転配送ロボットについては、まだ固有の定義も設けられていない。
そうした中、経済産業省がこの中速・中型クラスの自動配送ロボットについて、社会実装に向けて必要な取り組みの整理や社会的価値のとりまとめを行うため、すでに調査を開始していることがこのほど分かった。将来的な法整備を想定しているものとみられる。
■海外の法制度やサービスモデルなど調査
調査事項は以下の3項目とされている。
- 海外調査(法制度、活用状況等)
- 国内調査(国内での実装が考えられるODDやユースケース、経済効果の分析等)
- 今後に向けて(課題・必要な取組)
海外調査に関しては、法整備や政策動向のほか、中速・中型クラスの配送ロボットのユースケースやサービスモデル、導入効果、地域住民などの反応を調べる。
国内調査に関しては、国内での実装が考えられるODD(運行設計領域)や、実装が有効と考えられるユースケースやサービスモデル、経済効果などについて調査する。
また今後に向け、課題の整理や必要な取り組みの整理を行う。具体的には、今後の実証実験で収集すべきデータや技術開発の方向性、官民協議会などで議論すべき論点などをとりまとめるという。
■米Nuroや中国の京東集団が業界をリード
中速・中型クラスの自動配送ロボットは、海外では米Nuroや中国の京東集団などが開発している。すでに商用化のフェーズに入っており、たとえばNuroはUberと10年間のパートナーシップ契約を結んだほか、京東集団の配送ロボットも約30都市で展開されている。
ルール整備も進む。米カリフォルニア州ではすでに走行速度に関するルールが「制限速度56km/h以下の車道を40km/h(以内)で走行」と定められており、中国の北京市では「歩道および自転車道を15km/h(以内)で走行」と決められている。
ちなみに日本国内の公道においても、京セラコミュニケーションシステムが北海道石狩市や千葉県千葉市で配送実証を行うなど、社会実装に向けたムードが高まっている。私道では、楽天グループの実証実績が一例として挙げられる。
【参考】関連記事としては「日本初!自動配送ロボットが車道走行 京セラ子会社、北海道で実証実験」も参照。
■2024年3月ごろの官民協議会で報告へ
この調査は経済産業省と国立研究開発法人「新エネルギー・産業技術総合開発機構」(NEDO)が主体となり、PwCコンサルティング合同会社に調査を委託する形で2024年1月末にかけて行われる。
調査結果は2024年3月ごろに開催予定の「自動走行ロボットを活用した配送の実現に向けた官民協議会」で報告される見通しとなっている。
国による法整備や実証実験の環境整備などが進めば、民間の企業も取り組みを加速させやすい。海外で中速・中型クラスの自動配送ロボットの実用化のスピードがアップする中、日本もうかうかしてはいられない。
【参考】関連記事としては「自動配送・宅配ロボットの届出・審査の流れ(2023年最新版)」も参照。