自動運転車の安全な走行のため、新たなアプローチでルートを指定する仕組みが開発された。
工業製品などの塗料を手掛ける日本ペイント・インダストリアルコーティングス株式会社(本社:東京都品川区/代表取締役社長:塩谷健)は、栃木県日光市で行われる自動運転バス実証に、自社開発の自動運転用特殊塗料「ターゲットラインペイント」を提供する。
この塗料は人の目では認識しにくい色で、暗色でもLiDARからは認識できるものだという。車両に搭載したセンサーが、路面に塗装されたターゲットラインペイントを認識・追従することで、安定した自動走行を実現している。
■人間には見えない特殊塗料を開発
今回行われる自動運転バスの実証は、栃木県が実施する2025年度に自動運転システムを導入した県内路線バスの本格運行を目指す「栃木県ABCプロジェクト」の一環として、日光国立公園内で2023年9月21日~10月4日に行われる。
ターゲットラインペイントは専用のセンサーに反応する特殊な塗料で、バスの運行経路など走行したい場所に塗るだけでルートを指定することができる。衛星測位システム(GNSS)が入りにくい場所でも、自己位置を見失わず安定した走行を実現することが可能となっている。
暗色でもLiDARから認識できるため、アスファルト道路や暗色の防護柵などに、同系色でマーキングをすることができる。そのため人の目では認識しにくい色で路面標示や景観を損ねることなく、かつLiDARからは認識することが可能になる。
■LiDARなら認識できる塗料
現在開発されている自動運転車は、LiDARが障害物を感知し自己位置をマップマッチングで把握しながら走行するという仕組みが主流となっている。しかしLiDARには、一般的なアスファルトの色や黒い塗料を認識しにくいという欠点がある。さらに街路樹や橋の下などのGPSがつながりにくい場所や、トンネル内など景観の変化が少ない場所では、LiDARの認知性能やマップマッチングの精度に影響が出てしまうことが課題になっていたという。
ターゲットラインペイントはLiDARが認識しやすい塗膜設計のため、道路やガードレールなどに塗装することで、どのような場所でもLiDARの感度を損なわず検出させることを可能にしている。さらにトンネル内のような景観変化がない場所には、塗料の特質を生かし一定間隔でマーキングすることで特徴物を作り、マップマッチングの精度を向上させることもできるという。
レールを敷くようなイメージで車両が通るときのルートを指定できるため、特に定路線を走行する路線バスなどに有用だと言える。
■レベル2の自動運転バス走行をアシスト
今回の実証では、ターゲットラインペイントを塗布した約9.3キロのコースを自動運転レベル2のバスが最高時速40キロで走行する。使用する車両は、先進モビリティが開発した自動運転システムを搭載の中国BYDの小型EVバスだ。乗客定員は15人で、大人500円、子ども250円で乗車可能だ。事前予約は不要となっている。
日本ペイントグループは、今後もさまざまな場所でのターゲットラインペイントの展開拡大を目指し、塗料技術を生かした自動運転の普及へ貢献していくという。同じルートを巡回する自動運転車などの早期実用化のため、ターゲットラインペイントの採用が今後増えていくかもしれない。
【参考】関連記事としては「自動運転レベルとは?(2023年最新版)」も参照。