自動運転タクシーのサービス拡大阻止へ、運転手組合がデモ行動 米カリフォルニア州

8月10日に最終採決、混乱必至か



米カリフォルニア州サンフランシスコで、自動運転タクシーサービスの拡大に反対するデモが始まっている。


米メディアが報じているもので、このデモはサンフランシスコのタクシー労働者組合とその支援者らによって行われており、カリフォルニア州公益事業委員会本部が自動運転車の導入を拡大することを阻止するのが目的だという。

■最終的な採決は8月10日の予定

サンフランシスコではすでにGoogle系WaymoとGM傘下のCruiseが、ドライバーレスの自動運転タクシーサービスをスタートしている。

そんな中、カリフォルニア州公益事業委員会本部は、この2社がサンフランシスコ全域で24時間365日、ドライバーレスの自動運転タクシーサービスを行うことができるよう、既存の制限を解除することを検討しているようだ。

サンフランシスコのタクシー労働者組合によるデモは、この制限の解除の阻止を目的にしている。委員会による最終的な採決は8月10日に行われる予定のようだ。


【参考】関連記事としては「自動運転タクシーとは?(2023年最新版)」も参照。

■営業許可証に高額を支払ったのに…

サンフランシスコのタクシー労働者組合は、自動運転タクシーの登場は、市から「Taxi Medallion」を取得した人にとって大きな脅威になると主張している。Taxi Medallionはタクシー運転手の営業許可証のことだ。

Taxi Medallionの取得に際し、タクシー運転手が支払う金額は都市ごとに違うが、サンフランシスコでの価格は、かつては25万ドル(約3,500万円)であったようだ。現在は引き下げられているようだが、かなり高額であることは間違いない。

自動運転タクシーが普及し、人間のドライバーによるタクシーの必要性が減ってくると、Taxi Medallion保有者に甚大な影響が出てくることをタクシー労働者組合は懸念している。要は、高額を支払った分の見返りが得られなくなることを危惧しているわけだ。


また、自動運転車を走行させることは、一般市民をモルモットのように実験対象としており、この新しい技術を承認することは時期尚早だとも主張しているという。

■トラブルが続く自動運転タクシーではあるが…
出典:GM Cruise公式サイト

ちなみに行政側でも自動運転タクシーに対し、ある程度厳しい目を向けている。サンフランシスコ市交通局はカリフォルニア州に対し、自動運転タクシーの拡大を緩和する決定を下す前に、より多くのデータを集めるよう求めている。

実際、カリフォルニア州では2023年3〜4月に90件以上のドライバーレスの自動運転タクシーに関する苦情があったようだ。さらに、同州の自動車局は2023年7月現在で627件の自動運転車の衝突事故に関する報告を受けているという。

自動運転ラボでも、WaymoやCruiseが緊急停止し交通を遮断したといったトラブルを何度か記事にしている。

【参考】関連記事としては「自動運転タクシー、進入禁止テープに絡まる!GM Cruiseが運行」も参照。

いずれにしても、タクシーがドライバーレスになることで、職を失う人が出てくることは元々想定されてはいた。ではそれに各州がどう対応していくのか、いよいよ真剣に考えていかねばならぬ時が来ているようだ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




関連記事