自動運転車は「動くリビング」!車内清掃がビッグビジネスに

先見の明で巨大な商機をつかめ



自動運転車を開発する米Zooxの自動運転車両。運転席がない自動運転車の場合、車内空間のデザインの自由度は増し、より人間が車内で快適に過ごすことに最適化した空間設計が重視されていく可能性が高い=出典:Zoox公式サイト

自動運転時代の新たなサービスを見越した求人が増加傾向にあるようだ。車の清掃スタッフを募集するある企業は、「自動運転が発達すると自動車は『移動するリビング』になる」と将来的なニーズをアピールし、求人増につなげている。

自動車の価値そのものが大きく変わっていくだろう自動運転時代には、新たな需要やサービスが次々と発掘され、商機を生み出していく。


自動運転車の普及が本格化する時代、自動車はどのように変わっていくのか。そこに眠る商機を掘り起こしていこう。

■自動運転関連の新たな求人
自動運転時代の車内清掃需要に着目

冒頭で紹介したのは、カーメンテナンス・カーケア事業を手掛ける北海道のアドフォワード だ。車内清掃を担当するアルバイトスタッフ募集にあたり、アピールポイントとして「自動運転の実現」などを挙げている。

自社のサービスの本質を「美しいエクステリアと、清潔で快適なインテリア」の提供とし、その上で自動運転技術が発達すると自動車は「移動するリビング」になると言われていることを紹介し、将来清潔で快適な空間を維持したいというニーズが今より大きくなっていく──としている。「古くて新しい」自動車業界において、時代に合わせたサービスを提供し続けていく内容だ。

従来のオーナーカーでも自動運転車でも清掃方法は大きく変わらないものと思われるが、車内清掃に対する需要は確かに変化していきそうだ。こうした需要の変化を見据え、雇用確保につなげていく構えだ。


企業として、自動車を中心としたモビリティが今後どのように変わっていくかをしっかりと考えている好例と言えそうだ。

▼車の清掃洗車スタッフ|株式会社アドフォワード
https://jp.indeed.com/viewjob?jk=0b9a12dcecf169dd

無人サービスにおけるユニバーサルデザインも

一方、NTTデータ経営研究所は共生社会を実現するコンサルタントの求人において、これまでの実績として「交通制約者に優しい自動運転バスのデザインレイアウト案の作成」を挙げている。

車いす利用者を例に挙げると、自動運転技術によって車いすそのものを自動運転化することで、従来に比べ負担なく幅広い移動が可能になる可能性がある。しかし、バスなどの移動サービスが自動運転化・無人化されれば、乗降時におけるケアが不足する可能性もある。


無人化されても、すべての交通制約者が気軽に利用可能なモビリティの在り方は議論の余地が大きいところだ。さまざまな観点から自動運転にアプローチする1つの例と言えるだろう。

▼共生社会を実現するコンサルタント(障害者福祉領域)|株式会社エヌ・ティ・ティ・データ経営研究所
https://www.pasonacareer.jp/job/81001514/

自動運転技術でモビリティサービスは多様化

自動運転技術普及による変化は、移動や輸送の無人化をはじめ、モビリティサービスの多様化などさまざまな面で既存の社会や生活、仕事に変化を及ぼす。

こうした変化を予測し、あるいはいち早く察知し、自社事業と結び付けたり新規事業を立ち上げたりし、業績拡大を図っていく。自動運転分野には、まだまだ大きな商機が眠っているのだ。

■自動運転時代の新たな需要
日常メンテナンスの委託

自動運転が本格化すると、自動車を活用したサービスは多様化し、小さなフリートをはじめ、場合によってはオーナーカーを活用したサービスなども誕生する可能性が考えられる。

従来のオーナーカーであれば、ドライバーが異音や乗り心地などのちょっとした変化に気付き、比較的迅速に対処可能だが、乗員がドライバーではなく利用者主体、あるいは無人となると、そうはいかない。

自動運転システムそのもののエラーなど高い専門性が必要な日常メンテナンス以外にも、タイヤの空気圧やパンクなど従来と大きく変わらない日常メンテナンスも必要となるのだ。

車内清掃同様、こうした簡易的なチェック・メンテナンス需要も増大する可能性が考えられる。簡易マニュアルのもと、センサー類の汚れを取り除いたり、機器類のセルフチェック状況を確認したり──といった、高レベルの専門知識や経験が問われないサービスだ。

自動運転に長けた専門業者が行う業務と、日常点検レベルで行う業務が線引きされ、それぞれに必要とされる知識・技術も明確化されていくことも考えられそうだ。

防音需要も大きく伸びる?

新たな変化としては、「防音需要」も高まるかもしれない。自動運転車は、移動中の車内でさまざまなサービスやアクティビティが可能になることが想定される。新たなプライベート空間・サービス空間としての活用だ。

活用例としては、食事や睡眠、仕事などがよく例として挙げられるが、こうしたアクティビティにおいては、従来以上の静音性が重視される。走行による風切り音やロードノイズをはじめ、外部からの騒音を低減する防音対策が求められるだろう。

また、自動運転車を「移動カラオケカー」として活用することも考えられる。この場合、音漏れをしっかりと防ぐ防音性が求められることは言うまでもない。

近い将来、こうした防音カスタマイズ需要が大きく伸び始めるかもしれない。

車内外の装飾・デコ需要も?

本格的な自動運転時代が到来すれば、次第にオーナーカーの個性が失われていく可能性がある。特に外観だ。室内空間がこれまで以上に重視される反面、外観へのこだわりは徐々に失われていく可能性が考えられる。内燃機関であれモーターであれ、必要以上の馬力なども求められず、一定レベルで画一化が進んでいくかもしれない。

そういった環境下においても、個性を求める層は一定数いる。その個性の行く先は、デコレーションに向かっていくかもしれない。若者を中心にスマートフォンをデコレーションする文化があるが、これと同一の感覚だ。

時代に逆行するような印象だが、安全基準を満たす範囲において自動運転車用のデコパーツが流行するかもしれない……。

広告やディスプレイ関連サービスにも期待感

無人走行を前提としたサービス用途の自動運転車などは、サイドウィンドウなどの視界を保つ必要がなくなる。手動運転を前提とした保安基準とは異なる新基準のもと、新規格の車両が世に送り出されていくことが想定される。

その1つが、ディスプレイウィンドウの採用だ。ウィンドウにもディスプレイにもなる素材を搭載することで、乗員のエンターテインメント用途のほか、デジタルサイネージとして広告を流すこともできる。広告は車内向け、車外向けの両方が考えられる。

また、前述した外観へのこだわりが薄くなれば、ラッピング広告の類の需要も伸びるかもしれない。未使用時においても、無人でまちなかを走行することで広告効果を生み出すこともできる。動く広告塔として、さまざまな可能性が模索されていくことになりそうだ。

【参考】自動運転×広告については「車窓が「広告枠」に!自動運転タクシー、収入源は多様化」も参照。

キャンピングカー的要素も?

さまざまなアクティビティが可能になっていく自動運転車は、いわば生活空間に近付いていくことになる。食事をしたり、睡眠をとったり、仕事をしたり……といった具合だ。

そこで浮上するのが、キャンピングカーの設えだ。キャンピングカーには、ベッドやシンク、トイレ、シャワーを備えたものまである。必要とされる生活環境を思い思いに搭載しているのだ。

この考えが自動運転車にも押し寄せてくるかもしれない。一般的なキャンピングカーほどのボディサイズではなくとも、大きめのミニバンであればさまざまな装備を付加することができる。

意外とトイレ需要などは多いかもしれない。自動運転車向けにさまざまな生活要素を付加するサービスも、将来的に需要を伸ばす可能性がありそうだ。

■【まとめ】ビッグチャンス眠る自動運転、早期の需要掘り起こしを

車内エンターテインメントコンテンツや充電関連ソリューションなど、まず間違いなく伸びるだろう要素はたくさんあるが、誰もが思いつくものではなく、「おっ!!」と思わせるアイデアが需要と結びつけば、それは大きな商機となり得る。もちろん、既存事業との結び付きから考えていくのも良いだろう。

こうした需要が大きく伸びる本格的なレベル4の普及にはまだまだ時間がかかりそうだが、完全無人の自動運転時代を見据え、今のうちから新たなサービス・需要を探ってこそビッグチャンスを手にすることができるのだろう。

【参考】関連記事としては「自動運転時代、「充電マネジメント」に商機」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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