自動運転船に挑戦中のエイトノット、純損失82%増の9,600万円

水上モビリティベンチャーの第2期決算



出典:官報(※クリックorタップすると拡大できます)

船の自動運転技術開発を手掛けるスタートアップである株式会社エイトノット(本社:大阪府堺市/代表取締役:木村裕人)の第2期(2023年2月28日現在)決算公告が、このほど官報に掲載された。

当期純損失は、前期の5,253万円から赤字額を82%増やし、9,605万円であった。


■決算概要(2023年2月28日現在)
賃借対照表の要旨(単位:千円)

▼資産の部
流動資産 32,349
固定資産 429
資産の部合計 32,779
▼負債及び純資産の部
流動負債 8,837
固定負債 9,286
株主資本 △95,344
資本金 28,050
資本剰余金 25,200
資本準備金 25,200
利益剰余金 △148,594
その他利益剰余金 △148,594
(うち当期純損失 96,057)
新株予約権 110,000
負債及び純資産の部合計 32,779

■海のDX・船舶のロボット化に取り組む
出典:エイトノット公式サイト

2021年3月設立のエイトノットは、水上モビリティの自律航行システム開発を手掛けている。同社のミッションは「ロボティクスとAIであらゆる水上モビリティの自律化する」で、小型船舶向け自律航行技術開発を中心に「海のDX」と「船舶のロボット化」を推進している。

設立以来一貫して、広島県を中心とする瀬戸内海での離島地域における水上交通の社会課題解決を目指し、自律航行技術の開発を行なっている。

資金調達においては、2021年4月にプレシードラウンドを、2022年2月にシードラウンドファーストとして1億円を調達、累計調達額は1億5,000万円となった。どちらのラウンドにおいても、ドローン・エアモビリティ専門投資ファンドであるDRONE FUNDが出資している。2022年3月、エイトノットの社外取締役にDRONE FUNDの蓬田和平氏が就任している。


さらに2022年12月には、大阪地域の銀行からの借入と、事業中心地である広島県地域のベンチャーキャピタルからの出資を受けている。

■小型船舶向け自律航行技術を自社開発

エイトノットは2022年11月に、小型船舶向け自律航行プラットフォーム「AI CAPTAIN」を発表した。目的地を選ぶだけで、AI(人工知能)が最適なルートを設定し、障害物や他船をセンサーで検出、航行中の危険を回避することができるソリューションで、離岸や着岸も全て自動で行うことができる。

2023年1月に広島市内の旅客船運行事業者にAI CAPTAINが搭載された小型EV船を導入し、全国初となる自律航行EV船による一般旅客向け水上タクシーとして試験営業を行った。これは、広島県に採択された「『サキガケ』プロジェクト実証実験実施業務」の一環として行われたものだ。

■エイトノットの今後に注目

一般的に、先進技術を開発するスタートアップが黒字化するまでは時間かかる。エイトノットは今のところ赤字を計上しているものの、現在は技術開発に重点を置いている段階だと考えられ、初期投資の回収フェーズに入るのはもう少し先とみるのが妥当だろう。


2023年4月に大阪湾初の自律航行船の実証実験を実施、同年8月には舶用ディーゼルエンジンや航行支援機器の販売を行うセイカダイヤエンジンと資本業務提携を締結するなど、次々に新しい取り組みを行うエイトノットの今後に注目だ。

※官報に掲載された決算公告に関する記事は「自動運転・MaaS企業 決算まとめ」から閲覧頂くことが可能です。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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