私たちが普段口にするお米や麦は、農家の人たちが「手間暇」をかけて育てて収穫したものだ。いま、この手間暇の一部が先進テクノロジーによって無人化される流れとなっている。
株式会社クボタ(本社:大阪府大阪市/代表取締役社長:北尾裕一)はこのほど、無人自動運転でコメ・麦の収穫が可能なコンバインを2024年1月に発売することを発表した。
販売が決定した「アグリロボコンバインDRH1200A-A」は、人が搭乗することなく自動運転でコメや麦の収穫作業を行うことができるコンバインで、製品化されたのは世界初だという。この製品の販売により、クボタの主要3機種(トラクタ、田植機、コンバイン)の全てに無人自動運転仕様がラインアップされることになる。
トラクタ、田植機、コンバインといえば、農機の三種の神器とも言えなくもない。そのコンバインで自動運転化を果たしたということは、農機の三種の神器全てで自動運転仕様車を展開したのは、クボタが世界初ということだ。
■無人自動運転コンバイン開発の背景
日本では農家の高齢化や後継者不足などで一部農家への農地集積が進んでおり、一部農家における作業負荷が大きくなっている。そんな中、省力化や人材の確保、生産性向上といった課題を解決する手段として、スマート農業への期待がより高まっている。
クボタによると、無人自動運転には周囲の障害物や人などを検知して停止する機能が必須だが、一般的に圃場(ほ場)に作物がない状態で作業するトラクタや田植機と違い、コンバインは常に収穫対象である稲や麦がある状態で作業することから、収穫対象と障害物などを識別する機能の開発が課題となっていたという。
同社が開発したアグリロボコンバインDRH1200A-Aは、AI(人工知能)カメラとミリ波レーダーを搭載することにより、収穫対象と障害物や人を識別して停止することが可能になった。また、この製品は2023年3月に農林水産省が定めたロボットコンバインの安全性確保ガイドラインにも適合している。
■AIカメラとミリ波レーダーが活躍
アグリロボコンバインDRH1200A-Aの主な特長は5つある。
1つ目は、機体の前後左右に搭載されたAIカメラがと、機体前後に搭載されたミリ波レーダーが周囲の状況を監視し、無人自動運転中に周辺の人や障害物を検知すると機体が自動で停止するということだ。
2つ目は、ほ場の最外周の1周だけは人間による運転で刈取り作業をすることで、自動で最適な刈取りルートを機械が作成するということだ。それにより2周目からは、ほ場周辺で使用者による監視の下、無人自動運転が可能になる。無人自動運転による刈取り作業は、熟練者による作業と同じレベルになるようだ。
3つ目は、機体前方に設置したレーザセンサーとRTK-GNSSアンテナが畔(あぜ)の高さと位置を検知し、畔が低い場合は機体の一部を飛び出して効率的な旋回を行うということだ。さらにレーザーセンサーは作物の高さも検知することができ、高さに合わせて機体前方の刈取り部やリールの高さ、車速を自動調整することで、倒伏角度60度までの稲と麦の刈り取りが可能になる。
残り2つは、稼働時に稲・麦の詰まりを検知した場合に、自動で詰まりを除去して作業を再開することができるという点、監視者は通信距離約250メートルのリモコンにより、自動運転の開始や停止、モミ排出前の機体前後進などの遠隔操作が可能になるという点だ。
■農業ロボ導入が救世主に
DRH1200A-Aの希望小売価格は刈幅により異なっており、2,003万4,000円〜2,120万円となっている。
また、AIカメラやミリ波レーダー、レーザセンサーを省略しコストを抑えた「有人仕様(DRH1200A-OP)」も同時に発売予定だ。こちらは1,770万2,000円〜1,886万8,000円という価格帯だ。
農業の人手不足と高齢化はどんどん深刻化している。自動運転の普及による労働力削減は、間違いなくこの課題解決の一助となる。これからは、自動運転作業により収穫された作物が食卓に上ることも増えていきそうだ。
【参考】関連記事としては「自動運転と農業トラクター」も参照。