空と陸で「ダブル自動運転」!物資配送、完全無人化へ一歩

XRで「空の道」可視化も



出典:Psychic VR Labプレスリリース(※自動運転ラボで画像の一部の配置を変更)

レベル4飛行を想定したドローン・ロボット配送の実証実験が、茨城県つくば市で行われている。ドローンと自動配送ロボットを組み合わせた、いわば「ダブル自動運転」ともいえる試みで、KDDI、KDDIスマートドローン、ティアフォー、Psychic VR Labの4社が共同で取り組む。

実証期間は2023年1月19日〜3月31日。この実証はつくば市の協力のもと、内閣府から採択された「先端的サービスの開発・構築等に関する調査事業」の一環として行われているという。


■XRでドローンの「空の道」を表示

今回の実証は、都市部でのドローンの「有人地帯における補助者なし目視外飛行(レベル4飛行)」による運航を想定し実施され、2つのテーマを検証する。

1つ目は「PCR検体輸送検討、XRでドローンの『空の道』を可視化」で、ドローンでPCR検体を模した物資を約0.3キロ飛行して輸送する。サービス面や運用面における課題を抽出し、陸上の輸送手段との比較評価を行い、品質面や輸送効率などを検証するという。

さらに、KDDIのXRアプリ「5G XR VIEWER SATCH X powered by STYLY」により、スマートフォンやデジタルサイネージを通じてドローンが飛行する航路、つまり「空の道」を可視化する。

実際のドローン運航情報と連携することで、ドローンが歩道を横断する際は歩行者に赤信号で通知を行うようだ。文章だと少しイメージがわきにくいかもしれない。以下、プレスリリースで紹介されている画像も参照してほしい。


(左)物資輸送の様子(右)XRアプリ上で歩行者用信号が変わる様子=出典:Psychic VR Labプレスリリース
■ドローンと自動配送ロボの「ダブル自動運転」

2つ目のテーマは「ドローンとロボットを組み合わせたフードデリバリー」だ。

実証エリア内の住民が遠隔医療アプリ「LEBER(リーバー)」を使い、自宅療養に必要な飲食料品を注文すると、モバイル通信で遠隔自律飛行するドローンが地域のスーパーマーケットから公民館まで約1.5キロの距離を配送する。その後商品を自動配送ロボットに積み替え、自宅前までデリバリーする。

また、フードデリバリーのドローン2機と物資輸送のドローン1機を同時に飛行させ、ドローンの運航管理システムで遠隔制御を行い、オペレーションを含めた安全性についても検証するという。使用するのは国内メーカーPRODRONEのドローン「PD6B-Type3」と、川崎重工製の自動配送ロボット だ。なお自動配送ロボットは、川崎重工が開発したハードウェアに、ティアフォーの自動運転ソフトウェア「Autoware」を搭載して自動運転化しているという。

ドローン・配送ロボットを組み合わせたフードデリバリーの様子=出典:Psychic VR Labプレスリリース
■今回のような取り組みが今後増える?

今回の実証では、KDDIが事業全体の企画・統括や委託事業管理、通信環境の構築を、KDDIスマートドローンがドローンの運航・検証やドローンと自動配送ロボットに関するマルチシェアリングモデル構築に向けた提案、運航管理システムの提供を行う。


ティアフォーは自動配送ロボットの運行・技術とサービス検証を担う。AR(拡張現実)などの制作支援を手掛けるPsychic VR Labは、つくば市主要スポットのデジタルツイン開発やコンテンツ開発、教育プログラムの開発・提供を担当する。

2022年12月に改正航空法が施行され、ドローンのレベル4での飛行が可能となった。さらに2023年4月からは改正道路交通法が施行され、自動配送ロボットなど「遠隔操作型小型車」の公道走行が解禁になる。

実用化に向けて追い風が吹いている中、今回のような取り組みが今後増えていくことが期待される。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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