日本政府はこのほど、「道路整備特別措置法」の改正案を閣議決定した。高速道路の無料化が延期され、利用者が料金を払う期間が2065年から2115年まで延長された。道路施設の老朽化や4車線化の費用を確保するのが狙いだという。
今回の無料化延期に関し、自動運転ラボとしても注目したい内容が国土交通省の斉藤鉄夫大臣の会見で語られた。詳しくは後述するが、自動運転化に伴って将来的にお金がかかる、といった事情も背景にあるようだ。
▼大臣会見:斉藤大臣会見要旨|国土交通省
https://www.mlit.go.jp/report/interview/daijin230210.html
■高速道の無料化延期のサマリー
まず高速道の無料化延期のニュースをおさらいする。
2005年に旧道路公団が民営化された際、政府は高速道路の料金徴収を2050年までと設定し、その後は無料化する方針を定めていた。しかし、2012年に中央道笹子トンネルの天井板が崩落した事故が起こったことから、老朽化対策を強化すべく、徴収期間は2065年まで延長された。
国内の高速道路の損傷や劣化は全国で進んでおり、高速道路5社によると、老朽化対策に1兆5,000億円の追加費用が必要だという。今後、一定期間ごとに更新事業と債務返済の計画を作成し、状況に応じた料金徴収期限を延長する手法により、今回最終的な有料期間が2115年まで延長された。今後も無料化と永久有料化で議論は続くようだ。
■「自動運転化等の新しい投資も」
話を斉藤国交相の会見に戻す。記者から「本当に2115年以降には抜本的な解決策を用意しているのでしょうか。ただ単に50年延ばしただけなのでしょうか。そこをはっきりと教えて欲しいのですが」という質問に対し、次のように回答している。
「無料化すべきだという意見と、これから自動運転化等が進むなかで、いわゆる一般財源から賄いきれない大きな財源が必要だ、だから、永久化すべきだと、こういう二つの意見があって…」
「また、自動運転化等の新しい投資も、未来社会に向けて、日本が国際社会で競争力を失わないためにも、今回それはちょっと法案の中に入っていませんが、そういう思いもあります」
■社会的意義など意味のある検討を
確かに高速道路で自動運転を解禁しようとすると、さまざまな「インフラ設備」が必要になる。自動運転専用レーンを設ける案もあるし、路車間通信(V2I)をするための設備なども設けなければならない。お金はかかる。
とはいえ、自動運転化にはトラック運転手の長時間労働の是正や物流コストの低下、ヒューマンエラーによる事故の根絶といった社会的意義も大きいため、斉藤国交相が語っている必要性は十分に理解できる。
今後こうした自動運転政策とお金の話は、予算策定や政策策定において、たびたび議論されていくはずだ。社会的意義と費用対効果を勘案し、自動運転社会の実現にどれくらいお金をかけるべきなのか、意味のある検討が積み重ねられることが求められる。
【参考】関連記事としては「自動運転、公道(一般道・高速道路)でいつから可能に?」も参照。