自動運転eバス(電気バス)向けのワイヤレス充電が、商用採用された。ワイヤレス充電技術を開発する米WiTricity(ワイトリシティ)が、中国のバスブランドYuTong(宇通客車)の自動運転eバスにワイヤレス充電を提供することを、2023年2月14日までに発表した。
WiTricityはプレスリリースで「業界で初めて実現」と強調している。ちなみにWiTricityにはトヨタや三菱商事が出資している。
■レベル4が可能な自動運転バス向けに
WiTricityのワイヤレス充電器は、プラグを差し込む必要がない。商用ドライバーの労災補償請求の主な要因であるスリップや転倒につながるような、重くて扱いにくいコードやケーブルが必要なくなる。
今回商用展開される対象は、YuTongの自動運転ミニバス「Xiaoyu(小宇)2.0」だ。10人乗りの「自動運転レベル4」が可能なバスで、航続距離は150キロとなっている。
自動運転シャトルなどEV(電気自動車)市場が世界中で急成長するなか、ワイヤレス充電は重要な役割を担う。完全無人のバスの場合、充電に「人手」を使いにくくなるため、こうしたワイヤレス充電できる技術は非常に重要だ。運転が自動化されているのに、充電時にケーブルをつなぐための人出が必要になることは避けたいためだ。
WiTricityのCEO(最高経営責任者)であるAlex Gruzen氏は「YuTong Busへのワイヤレス充電が大規模な自動運転を支えていることを初めて実証できるのは、非常にうれしい」とし、「自動化が進むにつれ、充電とサービスのロジスティクスがより重要になる。WiTricityのワイヤレスEV充電は、次世代の電動輸送や電動物流を可能にする」とコメントしている。
■トヨタや三菱商事も出資するWiTricity
WiTricityは、米マサチューセッツ工科大学でワイヤレス給電技術を開発していたメンバーがスピンアウトして2007年に設立された。「磁界共鳴方式」のワイヤレス電力伝送技術などの研究開発を進めている。
【参考】磁界共鳴方式とは、送電側と受電側の距離があっても送電しやすく、SUVなど車高が高めのクルマなどにも安定給電できる電力伝送効率に優れた技術のことを指す。
同社はこれまで、トヨタや三菱商事、インテルキャピタル、フォックスコンなどから投資を受けている。2011年には、トヨタと車両向け非接触充電の実用化と普及促進に向けた技術提携に合意している。2017年には、日産とのワイヤレスEV充電システムの採用推進が発表されている。
ホンダも共同で非接触充電技術の研究を進めており、技術見本市「CES 2019」においては、ワイヤレスでバッテリーに貯めた電力をグリッドの需給の調整用電力として活用する「Wireless Vehicle-to-Grid」を発表している。
■ワイヤレス充電は未来のスタンダード技術?
将来的に自動運転車は、自車のバッテリー残量を把握して、適切なタイミングで充電ステーションに自ら無人で出向くようになるはずだ。そうしたことを考えると、ワイヤレス充電は自動運転と非常に相性がいい。不可欠と言っても過言ではないかもしれない。
▼WiTricity公式サイト
https://witricity.com/
【参考】関連記事としては「ワイヤレス充電、20億ドル市場へ!自動運転車と相性抜群」も参照。