ハンズフリー車椅子!「体重移動」で行きたい方向へ

グッドデザイン賞、今年の顔ぶれは?



出典:グッドデザイン賞・公式サイト

公益財団法人「日本デザイン振興会」が主催するグッドデザイン賞の2022年度受賞結果が、2022年10月12日までに発表された。

「自動運転」に関連するデザインはなかったものの、モビリティの革新につながる取り組みが受賞しているので、受賞対象の取り組みを3つ取り上げて紹介しよう。


■ハンズフリーパーソナルモビリティ「UNI-ONE」
出典:グッドデザイン賞・公式サイト

高齢者や障害を持つ人などが従来の車いすを使用する際には、両手がふさがり不便という課題があった。そこで、移動の際に両手を使う必要がないハンズフリーパーソナルモビリティ「UNI-ONE」を本田技研が開発した。

手放しでも「意のまま」に360度どちらの方向へも移動することができるという。モビリティ側が着座する人の意図を体重移動から読み取るからだ。そのため着座していても、歩いているような感覚で移動することができるという。

座った状態でも、立っている人と近い高さの目線にできることも特徴とされている。審査委員は「この製品の普及は、社会の仕組みと風景も変える可能性をも提示している、極めてインパクトの高い、挑戦的な発明、開発、デザインである」と評価している。

▼ハンズフリーパーソナルモビリティ [UNI-ONE] |受賞対象一覧|Good Design Award
https://www.g-mark.org/award/describe/53960


■システム支援型モビリティサービス「なみえスマートモビリティ」
出典:グッドデザイン賞・公式サイト

東日本大震災で起きた原発事故によって全町避難となった福島県浪江町。2017年に一部地域で避難指示が解除され、居住人口が徐々に回復しているものの、高齢化が進み、移動が困難な住民が多いという課題がある。

そこで、住民だけでなく観光やビジネス目的の来訪者も簡単に使用できる移動手段として、貨客混載デマンド型乗り合いサービスが2022年6月から展開されている。その貨客混載デマンド型乗り合いサービスが「なみえスマートモビリティ」で、受賞対象となった。取り組んでいるのは日産だ。

利用者は、スマホアプリまたはデジタル停留所で操作を行うと、発着場所の設定や配車予約、購入物品の配送指示を行うことができる。この停留所は、浪江町避難指示解除全域において、町中心部に約120カ所、全域で200カ所以上が設置されている。

審査委員からは「自動車メーカーらしいユーザー目線の技術開発が公共交通にも展開され、その傾向はとても嬉しく、心から歓迎したい」という声があがった。


▼システム支援型モビリティサービス [なみえスマートモビリティ] |受賞対象一覧|Good Design Award
https://www.g-mark.org/award/describe/53998

■変形型月面ロボット「SORA-Q(ソラキュー)」
出典:グッドデザイン賞・公式サイト

宇宙航空研究開発機構(JAXA)の「宇宙探査イノベーションハブ」共同研究提案の枠組みの下、JAXAとタカラトミー、ソニーグループ、同志社大学の4者で共同開発を進めている変形型月面ロボット「SORA-Q(ソラキュー)」も受賞対象となった。

SORA-Qは球体から変形する探査機だ。本体は約250グラム、変形前の直径約80ミリと、非常に小型で軽量な球体形状となっている。これにより、月面までこの探査機を輸送する際にもスペースをあまりとらないことは、宇宙まで持っていって使うモビリティとしては重要な点だ。

月面に着陸後、瞬時に球体から移動可能な形態にトランスフォームし、前後に搭載された頭部カメラで周囲を撮影することもできるという。

▼変形型月面ロボット [SORA-Q(ソラキュー)] |受賞対象一覧|Good Design Award
https://www.g-mark.org/award/describe/53666

■「ハード」面でも「ソフト」面でも進化

モビリティの進化は近年著しい。「ハード」(車体・機体)面でも、そして「ソフト」(サービス)面でもだ。自動運転車や自動配送ロボットの開発、そしてMaaSサービスの展開に力を入れている国内企業が増える中、来年以降の受賞対象がどんなラインナップになるのかも楽しみだ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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