大手ゼネコンの大林組は2022年10月2日までに、非接触給電や自動運転のための道路インフラなどについての実証実験を同社技術研究所で開始したことを発表した。業界の枠を超えて多様なパートナーと幅広く協業していくという。
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■モビリティ変革に対応する「e-MoRoad」実現へ
モビリティ変革期のいま、多様な交通手段やサービスを提供するにあたり、それらを管理するシステムインフラが必要になっている。大林組はモビリティ変革に対応したモビリティインフラ「e-MoRoad(イーモロード)」を目指している。
e-MoRoadは、「電気自動車の停止・走行中の給電や、ネットワークサービスを享受するための通信の確保に加え、道路センシングによるデータ連携、多様なモビリティに乗り換えるためのポートなどを整備した、人やモノが自由で快適に移動できることを実現する新たなインフラ」だという。
新たなインフラ実現には、自動車メーカーやネットワーク・センシングの機器メーカー、国、地方自治体、道路会社、関連団体などとの連携が欠かせない。建設の枠を超えた連携により、4つの実証実験を行う。
■4つの実証項目
走行中の電気自動車に非接触給電する道路舗装技術
デンソーとの共同研究で、EV(電気自動車)が走行中に非接触で給電できる道路の給電効率を実証する。走行中に充電できれば、走行距離の延長や車載用蓄電池の小型化が実現する。充電のために時間や作業を費やすこともなく、結果的にEVの普及に貢献する。
給電効率を向上するため、道路の厚さ数センチの浅い層に埋設された給電パネルは、大林組が開発した繊維補強コンクリート「ユニバーサルクリート」で保護される。
道路に電力・情報ネットワーク網を構築する技術
自動運転車の普及において、車対車や歩行者対車間の安全を確保するためには、センシングデバイスを道路に設置し、双方で情報共有する必要がある。その際に必要となる、電源や制御、通信ケーブルネットワークの構築において、古河電気工業と共同開発した「雨水側溝兼用樹脂製トラフ」の、雨水排水性や耐久性、施工性などを実証する。
雨水側溝兼用樹脂製トラフは雨水側溝とケーブル収納トラフを兼ね、配電線路構築のための道路構造を変えることなく、低コストでネットワーク構築が可能だという。
自動運転を支援する道路インフラ技術
タジマモーターコーポレーションや名古屋大学、エクセイド、ダイヘンと連携して、レベル3の自動運転システムと停車中の非接触給電システムを組み合わせ、自動運転の特性の把握を含めた実証を行う。
正確な位置で走行や停止ができる自動運転において、非接触給電システムのコストを低減するには、道路から給電する際の効率的なルートや、停止位置の給電コイルの面積の検証が必要だという。
【参考】関連記事としては「自動運転レベル3とは?」も参照。
MaaSシステムを運用する技術
街全体での有用性を向上させるサービス創出やデータ連携基盤の構築を目指し、名古屋大学や一般社団法人ライフアンドモビリティと連携して、自動運転車やキックボードなど統合されたマイクロモビリティの利用予約や管理機能を持つMaaSシステムの実証を行う。
【参考】関連記事としては「MaaS解説(2022年最新版)」も参照。
■e-MoRoadの実現を目指す大林組
大林組は今回の実証以降も協業パートナーを募集し、e-MoRoadの実現を目指していくという。次世代道路の実現に向けた同社の取り組みに引き続き注目していきたい。
【参考】関連記事としては「ドローンが建設現場の重量物運搬で活躍!SkyDriveと大林組、実証実験を実施」も参照。