トヨタのMaaS事業まとめ(2023年最新版)

my routeやTOYOTA SHARE…新サービス続々

B!
出典:トヨタプレスリリース

自動車業界におけるCASEの潮流が強まる中、モビリティカンパニーへの転身を図るトヨタ。自動車を製造するだけでなく、移動・モビリティに焦点を当てた事業展開を積極的に推し進めている。

この記事では2023年時点の情報をもとに、MaaS(Mobility as a Service)をはじめモビリティサービスに関連したトヨタの動向に迫る。

■MaaSアプリ「my route」
国内代表格のMaaSアプリに成長
出典:トヨタファイナンシャルサービス・プレスリリース

トヨタにおけるMaaSの代表的な取り組みが「my route(マイルート)」だ。さまざまな移動サービスをスマートフォン上で連携させるMaaSアプリとして2018年にサービス実証を開始して以来、2022年9月時点では10県でサービスを提供する国内最大級のアプリに成長している。

my routeは、ルート検索からチケット購入までをアプリ1つで完結できるほか、エリア内の飲食店や観光スポットなどの情報も閲覧できる。一部の移動サービスなどは、現在の走行地点やサイクルポートの満空情報といったリアルタイム情報の提供や、移動や施設などで使えるデジタルチケットに対応している。

福岡県福岡市で2018年11月に実証に着手した後、2019年11月に同県を皮切りに本格サービス展開を開始している。現在、福岡県のほか神奈川、富山、愛知、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、沖縄の各県内でサービス提供している。

例えば福岡市では、JR九州と西鉄グループ、シェアサイクルのCharichari、タクシー配車アプリのGOとモタク、ハイウェイバスドットコム、駐車場予約のakippa、TOYOTA SHARE、トヨタレンタカーが連携している。my routeは、これら各モビリティや関連サービスを合わせた経路検索や予約、決済などを可能にしている。

my routeの公式アプリページで連携先として紹介されているのは、以下の通りだ。

国内では交通事業者や自治体などがさまざまなMaaSアプリを開発・実用化しているが、多都市展開をしている例は少ない。鉄道やバス事業者などのように特定の営業エリアを持たないトヨタならではの展開と言える。

また、こうしたプラットフォームサービスの広域展開は、自社が展開するTOYOTA SHAREなどのモビリティサービスの利用促進にもつながる。カーシェアやレンタカーをはじめ、今後パーソナルモビリティなどの商用サービスを新規展開する際にも有効となりそうだ。

ちなみにmy routeに関しては、2023年2月にリニューアルが発表されている。その内容は以下の記事から参照してほしい。

▼my route公式サイト
https://www.myroute.fun/

【参考】my routeについては「使い勝手、一から見直し!トヨタMaaS「my route」が刷新」も参照。

■TOYOTA SHAREとチョクノリ!
カーシェア事業に本格参入
出典:TOYOTA SHARE公式サイト

トヨタが展開する移動サービスとして、トヨタレンタカーに並ぶ柱に成長したのがカーシェアサービス「TOYOTA SHARE(トヨタシェア)」だ。

トヨタは2018年、傘下のトヨタフリートリースとトヨタレンタリースを統合し、新たなモビリティサービスの創造・提供を担う新会社としてトヨタモビリティサービスを設立した。トヨタグループにおけるモビリティカンパニーへの脱皮に向けた取り組みの一環だ。

同社とトヨタ販売店などが2019年、車に対するニーズが「保有」のみならず「利活用」へと多様化する時代の変化に対応すべくカーシェア事業「TOYOTA SHARE」に乗り出した。2022年9月現在、青森県、山形県、鳥取県を除く44都道府県の663ステーションまでサービスエリアを拡大している。

月会費無料で、15分150円から気軽に利用できるのが特徴で、6時間や12時間パックなども用意している。従来のレンタカーに比べ短時間の利用が可能で、日常的なちょっとした買い物などの用途に向いている。

TOYOTA SHAREアプリのほか、NTTドコモが提供するサービス「dカーシェア」と連携するなど、サービス拡充を図っている。

出典:チョクノリ!公式サイト

一方、トヨタレンタカーも同時期、アプリや新デバイスを活用することで完全無人で貸渡し、手続き時間を短縮した新サービス「チョクノリ!」をスタートした。トヨタモビリティサービスはこのほか、シェア・レンタサイクル事業「ちかチャリ」なども手掛けている。

▼トヨタの新しいカーシェアサービス|TOYOTA SHARE
https://mobility.toyota.jp/toyotashare/
▼トヨタの無人貸出レンタカーチョクノリ!|トヨタレンタカー
https://rent.toyota.co.jp/skb_info/chokunori/

【参考】TOYOTA SHAREなどについては「トヨタの「TOYOTA SHARE」「チョクノリ!」、気になる中身は?」も参照。

■KINTO
自家用車オーナー向けのサービスも充実
出典:KINTO公式サイト

トヨタは2019年、愛車サブスクリプションサービスの運営会社として新会社KINTOを設立した。KINTOは、社名でもあるサブスクサービス「KINTO」をはじめ、「モビリティマーケット」や「KINTO FACTORY」など新たなモビリティサービスの提供を進めている。

サブスクのKINTOはカーリースの一形態で、車検料金やメンテナンスサービス、任意保険なども含めた月定額制で車両を契約することができる。

2022年9月現在、ルーミーやパッソといったコンパクトカーをはじめ、ヤリスクロスやヴォクシー、新型クラウンに至る22モデルがラインアップされている。車両生産遅延の関係で、プリウスやRAV4、ハリアー、GR86などの車種は一時取り扱いを停止しているようだが、遅かれ早かれラインアップに加わる見込みだ。

仲間内で契約車両をシェアするアプリの提供をはじめ、一部店舗が中古車版のKINTOや1年契約のサブスクサービスを開始するなど、サービスの裾野はどんどん広がっているようだ。

このほか、KINTOは多様なモビリティサービスを提供するオンラインプラットフォーム「モビリティマーケット」も提供している。NTTドコモやJTB、Carstayなどが提携し、移動を楽しむさまざまなサービスを紹介・提供している。

2022年1月には、マイカーを進化させる新サービス「KINTO FACTORY」も開始した。クルマの基本性能を向上させる「アップグレード」や、内外装のリフレッシュやアイテム交換などを行う「リフォーム」、運転データなどをもとに個性や好みに合わせてクルマの設定を最適化する「パーソナライズ」などのサービスが用意されている。

移動サービスではなく、自家用車に向けた新たなモビリティサービスの道を開拓している印象だ。

▼KINTO公式サイト
https://kinto-jp.com/

【参考】KINTO FACTORYについては「トヨタのKINTO FACTORYとは?マイカーが進化(2022年最新版)」も参照。

e-Palette
自動運転によるモビリティサービスの象徴
出典:トヨタプレスリリース

新たなモビリティとしては、自動運転とMaaSを融合したAutono-MaaS専用EV「e-Palette(イーパレット)」も注目だ。

他社製自動運転システムとの冗長化が可能なボックス型のサービス専用自動運転車で、シャトルサービスや小売りなどさまざまな用途への活用に期待が寄せられている。

東京五輪・パラリンピックの選手村での送迎サービスをはじめ、東京臨海副都心における実証などe-Paletteを活用した取り組みが本格化し始めている。

今後、ソフトバンクとの合弁MONET Technologiesを通じた自治体における実証などにも導入される可能性が高く、今後の動向に要注目だ。

【参考】e-Paletteに関する取り組みについては「トヨタのe-Palette(イーパレット)とは?」も参照。

■モビリティサービス・プラットフォーム(MSPF)
モビリティサービスを統括する一大プラットフォーム
出典:トヨタ公式サイト

トヨタが関係するモビリティサービスを管理・統括する「モビリティサービス・プラットフォーム(MSPF)」も重要性を増している。

MSPFは、トヨタがモビリティサービス事業者と提携する際に提供していた車両管理システムやリースプログラムといった個別の機能を包括したプラットフォームで、カーシェア事業を展開する米Getaroundと2016年に協業を交わした際に構築を推進していくことを発表している。

コネクテッド化された自家用車をはじめ、「Ha:mo」をはじめとしたシェアサービスやe-Paletteの運行、車両データを活用した道路保守点検の実証など多方面で活用されている。

MSPFは各種移動サービスや自動運転サービスをはじめ、通常の商用車や物流にも生かしていく方針だ。2020年8月には、MSPF強化に向けAmazon Web Servicesとの業務提携を拡大していくことを発表している。将来の膨大なトランザクションに備え、MSPFのビッグデータ蓄積・利用基盤の強化を図るという。

各種機能やデータを備えた一大プラットフォームとして、トヨタのモビリティサービスを縁の下で支える重要な存在となりそうだ。

■【まとめ】モビリティサービス事業へのシフトを積極的に推進

自動車を製造・販売する自動車メーカーから、さまざまなモビリティサービスを提供する事業形態に向け積極的にモデルチェンジを図っている印象だ。まだまだ試行錯誤の段階で、こうした新たなビジネス形態の確立には中長期的展望が必要となる。

その頃には、自動運転サービスをはじめとする次世代モビリティサービスが市民権を得て、社会における移動の概念も変化していることが予想される。

社会の変化に対し、自動車メーカーをはじめとする関係事業者がどのようなアプローチを図っていくのか。要注目だ。

【参考】関連記事としては「トヨタの自動運転戦略(2022年最新版)」も参照。

■関連FAQ

(初稿公開日:2022年10月3日/最終更新日:2023年2月20日)

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



B!
関連記事