トヨタはこのほど、Woven City(ウーブン・シティ)のプロモーション用メディアキットを更新した。新たなイメージ画像5枚が追加され、Woven Cityの全貌が少しずつ明らかになってきた印象だ。
この記事では、新規公開されたイメージ画像をもとにWoven Cityの構成や取り組みに迫っていく。
記事の目次
■Woven Cityにおける取り組み
Woven Cityのメディアキット更新
Woven City関連のイメージ画像は、2020年7月にアップされて以来、2年ぶりの更新となるようだ。なおイベントイメージとして、2022年2月に地鎮祭の様子もアップされている。
今回新たに追加された画像は、建物に囲まれた広場や建物や通りの近影、建物群の俯瞰、まちの全貌イメージなど5枚だ。
2020年の初期画像でも全景や建物、広場の様子などさまざまなイメージが公開されていたが、今回はその一部を具体化したような印象だ。
▼Woven Cityのメディアキット
https://www.woven-city.global/jpn/media-kits/
建物はおおむね低~中層がメインに
広場を囲むように配置された建物は4~6階建てで、マンションのような印象を受ける。2階部分に各棟をつなぐ通路があり、各棟のベランダ部分も行き来できるようなつくりになっている。俯瞰イメージにおいても10階を超すような建物は見当たらず、おおむね低~中層がメインとなるようだ。
また、俯瞰図では具体的に図化されているのは一部の区画のみで、残りはグレーの大まかな建物群や空き地となっている。まだまだ発展の余地がありそうだ。
工場跡地という関係から、高さ制限など特段厳しい規制はないものと思われるが、効率性や快適性、コストなどさまざまな観点からアプローチし、実証に適した建物は低~中階層という結論に至ったのかもしれない。
e-Paletteの多目的活用をイメージ
中庭のような広場には、自動運転EV(電気自動車)「e-Palette(イー・パレット)」が3台停車している。このうち2台は移動用途ではなく、移動コンビニのように物販を行うモビリティとなっているようだ。1台はおそらく移動用で、通路を歩行者と安全に共有しているのかもしれない。
計画では、Woven Cityは自動運転モビリティ専用のものと歩行者専用、歩行者とパーソナルモビリティが共存する3本の道を網の目のように織り込み街区を形成する。「Woven=織る」の由来でもある。こうした道路と広場のような滞在空間をどのようにマッチさせていくかも今後の見どころとなりそうだ。
また、e-Paletteの活用にも高い注目が集まる。e-Paletteは多目的に活用できるモビリティサービスを目指したMaaS専用の自動運転EVで、人の移動をはじめ、小売やモノの輸送、ホテルなどさまざまな用途での活用に期待が寄せられる。
2021年夏の東京オリンピック・パラリンピックの選手村におけるサービス実証をはじめ、2022年2~3月には東京臨海副都心・お台場エリアでも実証を行うなど、社会実装に向けた取り組みが徐々に加速し始めているが、このe-Palette実証の主戦地はやはりWoven Cityになるものと思われる。
Woven City内であれば規制の影響を受けにくく、より攻めた実証を行うことも可能なはずだ。今後、Woven Cityにおける各パートナー企業をはじめ、ソフトバンクとの合弁MONET Technologiesにおけるパートナー企業も交えe-Paletteの有効活用を模索する取り組みは大きく前進していくものと思われる。
自動運転機能の向上とともに、こうしたモビリティを活用した新たなサービスの誕生に注目したい。
【参考】e-Paletteについては「トヨタのe-Palette(イーパレット)とは?自動運転EV、東京五輪で事故」も参照。
空飛ぶクルマやドローンの活用も
空には、空飛ぶクルマ、あるいはモノを輸送するドローンのようなものが2機飛行しているのがわかる。空飛ぶクルマ関連では、トヨタは2020年1月、電動垂直離着陸機(eVTOL)の開発を手掛ける米Joby Aviationに3億9,400万ドル(約421億円)を出資したことを発表し、技術開発や生産面でノウハウを共有するなど協業を進めている。
国が設置する「空の移動革命に向けた官民協議会」にも参加しており、エアモビリティ領域における関わりも深めている印象だ。
また、ドローン関係では、ドローンやロボットソリューションの開発を手掛けるブルーイノベーションとパートナーシップを結んでおり、2022年6月に開催された日本最大級のドローンイベント「ジャパンドローン 2022」にブルーイノベーションのブースで「ドローンポート&管理システム」が披露された。
トヨタが開発を進めるモビリティ連携システムに、ドローンの統合管理・制御技術を統合したもので、QRコードが付されたドローンポートで配送物の受け取りなどを行うほか、自動配送ロボットなどとの連携も検討しているという。
Woven Cityでは、地下に自動運転配送車両が走行する道路を建設し、各建物などを結ぶ計画が進められているが、地下のみならず地上、そして空における物流網の構築も検討している可能性が高い。
陸のモビリティと空のモビリティをどのように連携させていくかといった観点など、モビリティカンパニーとしてのトヨタの新たな取り組みに注目だ。
【参考】Joby Aviationについては「Joby Aviationとは?「空飛ぶクルマ」で世界をリード(2022年最新版)」も参照。
■地元を巻き込んだイノベーションの先進地に?
Woven City建設中のトヨタ自動車東日本東富士工場跡地は、JR東海の御殿場線裾野駅から北に4~5キロの岩波駅の西側、裾野バイパスと東名高速道路の間に立地している。東名高速を挟んだ地には、トヨタの東富士研究所も位置する。
東富士工場跡地は、都市計画上工場以外の用途の立地が大きく制限される「工業専用地域」だった。これでは住居などを伴う実証都市を構築できないため、県と調整し用途地域が「準工業地域」に変更されたようだ。
裾野市も動きが早い。Woven City構想発表から2カ月後の2020年3月に「スソノ・デジタル・クリエイティブ・シティ構想(SDCC 構想)」を策定し、豊かな自然と調和する次世代型未来都市を目指す姿として「ウーブン・シティ周辺等の整備及び地域との融合」を取り組みの方向性の1つに掲げた。
2021年4月には「裾野市北部地域まちづくり基本構想」を策定し、岩波・御宿エリアの再整備に着手している。Woven Cityが位置する実証実験都市ゾーンをはじめ、岩波駅周辺の都市機能誘導ゾーン、産業ゾーン、未来型住居ゾーンを設定し、パーソナルモビリティの体験・運用や 新たな公共交通システムの研究・検討などを施策に盛り込んでいる。
Woven Cityにおける各種実証は将来的な社会実装を目指すものだが、その成果を裾野市が真っ先に受け入れる体制・環境が構築されれば、新たな先進都市として同市が大きな注目を集めることになりそうだ。
■【まとめ】具体化とともにパートナー企業も増加
第一期オープン予定を2024~2025年に控え、徐々に街並みなどのイメージを公開している印象だ。都市の実像や方向性がより具体化されていくにつれ、パートナー企業もどんどん増加していくものと思われる。また、パートナー企業の要望をもとに新たなイメージが創出され、都市を形成していくケースもありそうだ。
Woven Cityがどういった過程でイノベーションの聖地となっていくか、今後の取り組みに要注目だ。
【参考】関連記事としては「トヨタWoven City、「バーチャル版」も作成へ」も参照。