近年注目が高まる「デジタルツイン」。IoTやAI技術によって現実世界を再現したサイバー空間のことで、現実と「双子」(ツイン)となる、いわば「もう1つの世界」だ。
デジタルツインを活用することで、現実で実証が困難なシーンであっても仮想空間においてシミュレーションし、現実世界にそれを反映することができる。現実と仮想世界を相互に影響させ合いながら社会改革を進めることが可能となり、政府もデジタルツイン実現を目指した都市づくりを後押ししている。
そんな中、日立製作所、竹中工務店、gluonの3社は、パーソナルモビリティの自律走行実現に向け、デジタルツインの構築を本格化させることをこのほど発表した。
国土交通省が主導する3D都市モデル開発プロジェクト「Project PLATEAU」の一環で、実証を通じて都市や建物とパーソナルモビリティのリアルタイム連携や、リアル空間とバーチャル空間連携実現を目指す模様だ。
■プロジェクトの内容は?
パーソナルモビリティは新たな移動手段として需要が高まっているが、対象エリア内を事前に走行させて独自のマップ情報を作成しなければならないという課題があった。
今回の実証では、Project PLATEAUで整備された3D都市モデルと3D建物モデルを統合したデジタルツインを構築・活用し、事前走行なしで屋内外連続自律走行可能なパーソナルモビリティの運用を目指す。
走行実証は2022年11月から、関西・大阪万博に向けて開設された大阪市にあるデジタルツインの実験場コモングラウンド・リビングラボ(CGLL)で行う予定だ。
コモングラウンド・リビングラボ実験場における実証検討図=出典:日立製作所プレスリリース
さらに、地下鉄御堂筋線本町駅周辺エリアでBIM(Building Information Modeling)モデルと3D都市モデルを連動させたARナビの実証実験も行う。
■3社の取り組みを紹介
3社は2021年7月からCGLLに参加しており、これまでもデジタルツイン構築に向けた事業を行ってきた。プロジェクトにおけるそれぞれの役割と各社の取り組みを紹介しよう。
日立製作所はデジタルツイン構築の柱に
プロジェクトで主となってデジタルツインの構築を担うのは日立製作所だ。バーチャル空間上で動的物体をリアルタイム表示することができる同社のジオメトリプラットフォームを活用するという。同社は、IoTプラットフォーム「Lumada」によってデジタルツインの構築に取り組んでおり、多くの企業の業務改革などに生かされている。
竹中工務店は「ビルコミ」開発
竹中工務店は、3D都市モデルと3D建物モデルの統合業務やガイドライン作成の統括などを担う。同社は、都市OSとデータ連携可能な建物OS「ビルコミ」を開発し、デジタルツインによるスマートビルの実現とスマートシティ構築に取り組んでいる。
gluonはコモングラウンドの社会実装に力
gluonも、3D都市モデルと3D建物モデルの統合業務などを行う。同社は、スキャン技術を組み合わせた建築や都市のデジタル化、コモングラウンドの社会実装に取り組んでいる。ちなみにコモングラウンドとは、デジタルツインの中でもさらに汎用性の高い仕様となっているようだ。
■「もう1つの世界」の活用を後押しへ
今回の実証をきっかけに、パーソナルモビリティのみならず、自動運転車やスマートシティなどの分野でも「もう1つの世界」の活用が国内で後押しされるようになるかもしれない。3社の取り組みに注目だ。
【参考】関連記事としては「親和性抜群!自動運転×デジタルツイン、仮想の現実世界で自由に実証」も参照。