国立研究開発法人「新エネルギー・産業技術総合開発機構」(NEDO)と一般社団法人UTMS協会は2022年3月22日までに、AI(人工知能)ユニット搭載の交通信号制御機の実証実験の開始について発表した。
電波レーダーやプローブ情報(位置情報)から取得した交通情報などをAIで分析することで、「軽やかな交通管制システム」を低コストで実現し、従来型の信号機と比べると「平均旅行時間」が15〜20%ほど短縮されることが期待されるという。
実証実験は静岡県内の12カ所の交差点で行われ、警察庁や静岡県警察本部も強力する。
■「安く」かつ「独立的」かつ「高度」に
実証実験の成果の目玉とも言えるのが、前述の平均旅行時間の短縮だが、信号設備が抱える課題を解決することも実証実験の狙いの1つだ。
日本では現在、中央の交通管理センターと接続された信号機と接続されていない信号機があるが、両方に課題がある。中央の交通管理センターと接続された信号機は通信施設などの維持管理コストが大きく、一方、接続されていない信号は高度な交通制御ができていない。
そんな中、もしAIを搭載した交通信号制御機が、「安く」かつ「独立的」かつ「高度」に信号機を制御することができれば、これらの問題が解決される。こうした点を考えると、非常に意義のある実証実験であるということが分かる。
ちなみに交通流をスムーズにすることで、二酸化炭素(CO2)排出量の削減にも貢献する。仮に全国約20万カ所の交差点でAI搭載型を稼働させ、平均旅行時間を20%短縮できた場合には、CO2削減量は年間で約5,500トンに相当するという。
■「自動運転時代」にも備えた実証実験
内閣府が主導する「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」の「自動運転(システムとサービスの拡張)」で管理法人を務めているNEDO。今回のプレスリリースでは「自動運転をはじめとするSociety5.0時代に求められる交通管制システムの確立を目指す」とある。
信号機と自動運転車が連携すればさらに交通流を最適化できるため、こうしたことも視野に入れての実証実験ということなのだろう。実証実験は3月14日にスタートしている。どのような成果に結びつくか、注目だ。
【参考】関連記事としては「黄信号と自動運転、通過か停止かの「ジレンマ」回避に成功」も参照。