テスラ、FSDの問題をYouTubeに投稿した社員を解雇 イメージダウンを問題視?

交差点で衝突直前の様子を公開



米EV(電気自動車)大手テスラの自動運転ソフト「FSD(Full Self-Driving)」のベータ版に関するレビューを動画で投稿した同社の従業員が、このほど解雇されたようだ。


米メディアのCNBCによると、2020年8月からテスラで働き始めたJohn Bernal氏が自身のYouTubeチャンネルにおいて、FSDベータ版がシリコンバレー周辺でどう機能するかを率直に示すビデオレビューを公開し、2022年2月に解雇されたという。

■特典で無料利用できたFSDをレビュー

Bernal氏はテスラで働き始めて数カ月後、同社の長距離バッテリー搭載2021年型「Model 3」を注文し、2020年12月に納車された。同氏が車を購入したのは、テスラが従業員にFSDの無料利用(当時8,000ドル相当)を特典として提供していたためでもあるという。

なお、特典の代わりに車内外データの収集の権利を会社に与えることに同意する必要があったようだ。

Bernal氏はYouTubeチャンネル「AI Addict」を2021年2月に立ち上げ、FSDベータ版の公開バーションではどんなことができるかを紹介していた。ほとんどの動画は、同氏が友人とModel 3に乗ってシリコンバレーをドライブし、FSDベータ版ソフトウェアの最新リリースバージョンを使用する様子を撮影したものだった。


ただし中には、FSDベータ版の欠陥が明らかにされる動画もあった。2021年3月に投稿した動画「FSD Beta 8.2 Oakland – Close Calls, Pedestrians, Bicycles!」は、Bernal氏のModel 3が交差点でほかの車両と衝突しそうになったシーンが記録されている。この動画は29万回近く再生されている。

■YouTube動画は「利益相反」?

この動画が公開された後、テスラの幹部はBernal氏に対し、FSDベータ版に関するネガティブな内容や批判的な内容を投稿しないよう説得しようとしたようだ。報道によれば、解雇される直前には上司から「YouTubeチャンネルは 『利益相反』だ」と言われたという。

Bernal氏は解雇された正確な理由を知らされていないが、投稿した動画が解雇に結びついた可能性が高いと考えているようだ。また、Bernal氏所有のModel 3はFSDベータ版にアクセスすることができなくなったという。


しかし、Bernal氏は別な方法で今後もベータ版のテストとレビューを行なっていく方針のようだ。Bernal氏に悪気があるかどうかは分からないが、テスラから「要注意人物」と認識され続けることは、間違いなさそうだ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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