岡山の空をEhang(イーハン)という中国メーカーの「空飛ぶクルマ」が飛行した。2021年6月4日に岡山県笠岡市の「笠岡ふれあい空港」で空飛ぶクルマの実証実験が行われ、イーハン社製の機体が用いられたのだ。
この実証実験は、一般社団法人MASCが実施したものだ。MASCには現在、航空宇宙産業への参入などを見据えた約50の企業や団体が加盟しており、ドローンを用いたプラント点検などの実証を重ねてきた。
実証実験で空飛ぶクルマは高度約30メートルまで浮上し、安定した飛行を5分間にわたって披露したという。この実証で主役となった空飛ぶクルマを提供した中国のイーハンとは、一体どんな企業なのだろうか?
■2014年設立の中国企業、北米・豪州・韓国でも飛行実験
2014年に中国の広州で設立されたイーハンは、早い時期からエアモビリティ業界をリードする企業の1社だ。
2016年に世界初の空飛ぶタクシーとして1人乗りのマルチローター機「Ehang 184」を発表した。以降、中国や北米などで数千回に及ぶ飛行実験を重ね、2018年の技術見本市「CES 2018」では有人飛行映像を公開した。
2020年5月には、世界で初めて中国の民間航空局(CAAC)からeVTOL(電動垂直離着陸機)の商用パイロット運用の許可を取得し、「EHang 216」を使用した航空ロジスティクスサービスの試験運用に着手している。
また、2020年8月からはパートナーシップを結んだオーストリアの都市リンツでUAM(都市型航空交通)の試験運用を開始。同年11月には韓国ソウルを流れる川「漢江」でも飛行実験を開始し、80キロ分の米袋を載せて高度50メートルを約7分飛行した。
■開発企業続々、空飛ぶクルマ市場での競争激化
イーハンは2019年12月に米ナスダック市場に「EH」のティッカーシンボルで上場している。個人投資家や機関投資家からの同社への注目度は高く、2020年10月に7ドル台だった株価は2021年2月には120ドル台まで高騰した。
中国の市場調査会社ResearchInChinaのレポートによれば、イーハンは空飛ぶクルマの開発企業の資金調達ランキングにおいて、Joby Aviation、Volocopter、Liliumに次いで4位となっているが、中国企業としては首位に立っている。
ちなみに今回の実証実験ではイーハン製の空飛ぶクルマが使用されたが、空飛ぶクルマを開発している日本企業もおり、今後は各国企業を巻き込んだ空飛ぶクルマ市場の「制空権」争いが加速しそうだ。
【参考】関連記事としては「「空飛ぶクルマ」とは?2020年代に実現へ!基礎知識や開発企業を紹介」も参照。