総務相、自動運転レベル4以上の普及で「サイバーセキュリティの確保が非常に重要」

自動運転実用化で対応急務、デジタル庁が担うことに?



出典:総務省公式YouTubeチャンネル

将来、自動運転に関するサイバーセキュリティはデジタル庁が担うのかもしれない。高市早苗総務大臣は記者会見でデジタル庁新設に関する質問の回答で自動運転に言及し、サイバーセキュリティの重要性に触れた。

今回は高市大臣の発言の背景をもとに、自動運転におけるサイバーセキュリティの重要性について触れていく。


■高市大臣の発言

高市大臣の発言は、2020年9月8日の閣議後の記者会見において、報道陣からの問いに答えたものだ。

「菅官房長官がデジタル関連の行政機能を集約してデジタル庁を新設したいと発言されているが、大臣の受け止め方について」といった質問に対し、「高度なサイバーセキュリティを前提としたデジタル化は、官民を通じて非常に重要なもの」とし、生活における課題として高齢者の移動手段を例に挙げて「レベル4以上の自動運転車が普及すると様子は変わる。これも情報通信の世界で、サイバーセキュリティの確保が非常に重要」と自動運転に触れた。

続けて、「(デジタル化は)社会的課題の解決に加え新しい成長分野の産業を生み出していく宝物のような存在で、デジタル政策を存分に進めることは重要。7月に閣議決定された骨太の方針に基づき、この1年間を集中改革期間としてデジタル化の取り組みを強化・加速していく。特に、地方行政のデジタル化、システムの標準化に向け、新法の制定も含めて省内で検討している」と述べた。

社会全体のデジタルトランスフォーメーションを推進する構えで、その一例として自動運転を挙げ、サイバーセキュリティの重要性に言及したのだ。


■自動運転におけるサイバーセキュリティの重要性

自動運転が高度化してレベル4以上になると、ドライバー不在による走行が可能になる。遠隔監視・操作のもと、自動運転システムが自動車の制御を担うのだ。

レベル4の自動運転車は常時インターネットに接続された形となり、管制システムからの遠隔操作のほか各種コンピュータを点検する遠隔診断やソフトウェアのアップデート、車内サービスに関連したキャッシュレス決済やエンターテインメントコンテンツの配信なども行う。利用者のスマートフォンと連動したサービスなども想定される。

また、V2V(車車間通信)やV2I(路車間通信)などによって周囲の交通状況を把握することも必然になるだろう。EV(電気自動車)タイプでは、将来的に非接触充電が浸透する可能性が高く、こちらも通信を必要とする技術となる。

このように、自動運転車はさまざまな面でさまざまなタイプの通信が活用されるが、こうした1つひとつの通信に対し万全のセキュリティ対策が求められる。車載アプリや現行のスマートフォン連携サービスを介したハッキングなども想定される。


万が一、システムの基幹をなす自動運転システムがハッキングやウイルス感染などによって正常に機能しなくなった場合、自動運転車が暴走する恐れが生じる。自動車の暴走は人命に直結するため、絶対に防がなくてはならないのだ。

【参考】自動運転車におけるセキュリティについては「自動運転車、ハッカーからどう守る?(深掘り!自動運転×データ 第10回)」も参照。

■省庁再編も?

サイバーセキュリティ対策においては、自動運転開発メーカーをはじめ業界団体や民間のセキュリティ事業者らの知見が必要不可欠となるのは言うまでもないが、IoTがいっそう進展するこれからの時代は国の取り組みも絶対不可欠となる。

さまざまなモノやサービスがインターネットでつながるIoT時代においては、所管省庁単独で対応できない事例も続々と出てくることになり、デジタル庁のような核となる専門機関の設置を求める声も今後大きくなっていくのかもしれない。

自動運転においては、道路・交通をはじめ自動車全般を所管する国土交通省と、通信・電波を所管する総務省、そして新設案が浮上しているデジタル庁の3者によるスキームで対応していく可能性もありそうだ。

■【まとめ】始動済みのサイバーセキュリティ対策 継続的な検討を

自動運転レベル3が解禁され、レベル4による移動サービスも限定地域でまもなく始まろうとしている今日においては、自動運転におけるサイバーセキュリティ対策は未来の問題ではなく、直面しつつある問題となっている。

国においては、自動走行ビジネス検討会などがサイバーセキュリティ対策について議論を深めており、脆弱性分析を進めるための評価環境整備やガイドラインの策定、無線システムのセキュリティ技術導入、サイバーセキュリティ人材の育成など、多方面で検討を進めている状況だ。

安全な自動運転システムの構築・社会実装においては継続的な対策が求められるため、よりいっそう検討や対策が深まっていくことに期待したい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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