フィーチャ社、マザーズ上場承認 自動運転の画像認識でリーディングカンパニーに

トヨタコネクティッドやデンソーテンなどにも納品



画像認識アルゴリズムを開発するフィーチャ(本社:東京都豊島区/脇健一郎社長)は2020年5月31日までに、東京証券取引所マザーズへの新規上場が承認されたことを発表した。自動運転分野で真価を発揮する先端技術を武器に、今後の大きな飛躍に期待が高まるところだ。


上場を間近に控えたフィーチャの概要や技術力を参照し、その将来性に触れてみよう。

■フィーチャ社とは?
2012年に画像認識事業に着手、2017年には未来創生ファンドから出資も

フィーチャは2005年、3D計測装置やレンズ検査装置開発・販売を行なうクワンタービュー株式会社として創業した。2012年に主力となる画像認識事業をスタートし、2015年に現社名に変更した。

2015年にアジア最大規模のオープンイノベーションサミットILS2015へ出展し、大手企業からの事前リクエストで人気上位企業が行う「TOP10ベンチャーピッチ」において最多得票を獲得した。2016年には、三菱東京UFJ銀行が主催する第3回BTMUビジネスサポート・プログラム「Rise Up Festa」の情報・ネットワーク部門において、最優秀賞を受賞している。

2016年、2017年に第三者割当増資により計3億円を調達したほか、スパークス・グループが運営する未来創生ファンドからも出資を受け入れている。


2018年には、ディープラーニングを研究開発する拠点として新たに中国北京に子会社「北京飞澈科技有限公司」を設立するなど、技術力の強化を図っている。同年12月に現在地に本社を移転した。

【参考】未来創生ファンドによる投資については「トヨタの自動運転領域における投資まとめ」も参照。

キヤノンで技術磨いた脇社長

脇社長はキヤノンで電子写真の技術開発を手掛けてきた経歴を持つエンジニア。その後、複数の画像系ベンチャーで研究開発や経営戦略に従事し、同社を設立した。

また、CTO(最高技術責任者)を務める曹暉氏は、名古屋大学大学院で博士課程修了後、理化学研究所や豊田中央研究所で物体認識に関する研究開発を行ってきた。2012年、曹氏が入社したことをきっかけに画像認識事業に着手した。

企業理念に「Make Things Intelligent」を掲げ、あらゆるモノのインテリジェント化を目指し、スマート社会の安全や快適、効率に貢献することを目指している。エッジ・インテリジェンス向けの高速・高性能な画像認識ソリューション開発を中心に、さまざまな端末に実装しやすいディープラーニング画像認識技術の開発を進めている。

マザーズ上場は6月24日

東証マザーズへの承認は2020年5月21日付で、6月8日に仮条件が決定する。ブックビル期間(6月9~15日)を経て公開価格が決定し、6月24日に上場される日程だ。発行済株式数は525万9000株で、公募15万株、売出43万株、オーバーアロットメントによる売出8万7000株となっている。

近年の売上高は、第12期(2017年6月期)が8394万円、第13期(2018年6月期)が2億1040万円、第14期(2019年6月期)が2億8247万円と堅調な伸びを見せており、第15期(2020年3月期、第3四半期類型期間)は3億1164万円となっている。

販売先には、トヨタコネクティッドやJVCケンウッド、ネクスティエレクトロニクス、デンソーテン、日本ユニシスなどが含まれている。

日本ユニシスは、法人向けに提供している通信型ドライブレコーダー「無事故プログラム DR」にフィーチャのAIアルゴリズムを搭載し、リアルタイム画像解析技術を活用した交通違反を即時通知する機能を追加した。

ディープラーニングと非ディープラーニングの使い分けやハイブリッド化で汎用性を向上

同社は自動車市場に焦点を絞り、車載用画像認識ソフトウェアの開発を進めてきた。画像認識ソフトウェアは、特に車載カメラやドライブレコーダー向けに歩行者や車両、車線などを検知するADAS(先進運転支援システム)用の組み込みソフトウェアの開発に注力しており、顔認証やよそ見運転、居眠り運転などを検知するDMS(ドライバーモニターシステム)とともにティア1などに納入されている。

コンピュータビジョンに特化したソフトウェアや機械学習を用いた画像認識ソフトウェアの開発が主軸で、ディープラーニングを活用した高性能モデルと非ディープラ-ニングによる汎用性の高いモデルの両方を備えている。

安価な車載カメラなどにソフトウェアを搭載する際、非ディープラ-ニングであれば比較的性能の低いLSIでも動作させることが可能で、製品の使用に応じて両方を使い分けたり、組み合わせて使うハイブリッド化を採用したりすることを可能にしている。

■フィーチャのADAS技術

同社は、歩行者や車両、標識といった多数の対象物を同時に検出する際の計算処理の共通化を実現し、検出対象物が増えても処理時間の増加量を最小限に抑えることで、汎用の車載LSIで同時に複数の対象物を高速に認識するソワトウェアを実現している。

また、高い検出性能も特徴で、世界最大規模の車載用ベンチマークテストである「The KITTI Vision Benchmark Suite」の評価テストでは、非ディープラーニング系においてトップの認識精度を記録した。処理時間も、CPUを用いているにも関わらず圧倒的な高速処理を実現しているという。

ADAS向けの物体検知ソフトウェアは、歩行者検出や二輪車検出、四輪車検出、標識認識、信号認識、車線検出、縁石検出、横断歩道検出、フリースペース検出などを可能にしている。

各種物体検知に加え、前方車や歩行者衝突、交通違反などの危険運転をリアルタイムで判定し、事故防止に役立てることができ、この物体検知から危険運転判定までをパッケージ化したソフトウェアを提供するほか、物体検知のみのソフトウェア提供にも対応している。

独自アルゴリズムにより車載器に使用される汎用CPUにおいても高パフォーマンスを実現しており、ドライブレコーダーにおいて広く使われる15~30fps以上の速度性能を達成し、リアルタイムでの検知処理を実現している。

ARM上で動作する組み込み環境を主なターゲットとしているが、サーバー上で動作する画像解析ソフトウェアとしても利用できる。AIアクセラレータやディープラーニング技術の活用にも取り組んでおり、目標性能やハードウェアスペック、その他熱などの制約に応じたチューニングを得意としているようだ。

■フィーチャのDMS技術

DMSと顔認証を組み合わせることで、盗難防止や事業者向けの運行管理に活用することも可能で、各機能をパッケージ化したソフトウェアを提供している。

主な機能は顔認証、危険運転検出、よそ見運転検出、居眠り運転検出、年齢・性別・表情判定などで、非ディープラーニングとディープラーニング技術の組み合わせにより、高速・高精度なシステムを実現する。

顔認証は、顔検知、顔特徴点検知、顔向き推定、視線推定、顔認証、顔属性推定(マスク、眼鏡、性別、年齢、表情)を可能としているほか、HMI(ヒューマンマシンインタフェース)検知認識として、ジェスチャー認識や全身姿勢推定、喫煙やドリンク、電話といった危険動作認識も可能だ。

特別なハードウェアを必要とせず、車載器に使用される汎用CPUにおいても高パフォーマンスを実現可能で、ADAS同様目標性能やハードウェアスペック、その他制約に応じたチューニングを得意としている。

■【まとめ】上場を機に開発力強化 次世代向けソフトウェア開発に期待

AI全盛の時代を迎え、ADASやドライブレコーダーが著しい進化を遂げる中、高度なソフトウェアを実装するためにはハードウェアにも一定の性能が求められることになるが、低価格帯の普及製品のレベルはまだそこまで追い付いていないのが現状だ。

低価格帯モデルと高性能モデルが混在する中、各ハードウェアに柔軟に対応可能な技術を持つ同社は、今まさに黄金時代を迎えているとも言える。

今回の上場を機に開発力をいっそう高め、高度な自動運転向けのソフトウェア開発なども一気に進展する可能性がある。将来性豊かな同社の今後の取り組みに注目だ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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