テスラのロボタクシー 「8倍・300台超」 全米制覇に向け加速 Cybercabが1ヶ月でに急増

ウェイモに追いつくか



出典:Tesla

米EV大手テスラ(Tesla)が、ロボタクシー専用車Cybercab(サイバーキャブ)を米テキサス州オースティンで約1か月に8倍の300台超へ増やし、全米制覇に向け加速している。一方、日本では導入が決まっておらず、東京では米Google系の自動運転開発企業ウェイモ(Waymo)が2027年の無人運行を先に狙っている。ロボタクシー市場の競争は台数から稼働と収益へ移りつつあり、日本のタクシー業界にとっても無関係ではない。

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■Cybercabが8倍・300台超に急拡大

テスラは、ローンチから1か月でオースティンのCybercabが300台超になり、30日間で8倍になったということをXで明らかにした。公式ロボタクシーアカウントは、この数字を動画つきで投稿している。


Cybercabはハンドルもペダルもない2人乗りの自動運転車で、9月3日の招待制イベントで披露され、翌4日から一般向けの有料運行が始まった。テスラが運行中のCybercabの台数を公式に示したのは、今回が初めてとされる。

8倍はテスラ自身の主張で、300台超を8倍で割ると、起点は約38台になる。米投資情報メディアMotley Fool(モトリーフール)も、起点を40台未満と伝えている。

一方、ローンチ日のテキサス州の登録は、Cybercab45台だった。登録台数で比べるなら、45台から319台で約7倍だ。テスラは「300台超が運行している」と説明するが、その定義、つまり登録済み、配車可能、乗客搬送中のいずれを指すのかは示していない。

【自動運転ラボの視点】
Cybercabの急増は、テスラが量産力でロボタクシー市場に切り込む合図だ。ただし数字は自社発表で、稼働の実態は見えない。日本のタクシー事業者にも、台数より稼働と収益で見る目が問われる。

【参考】関連記事としては「テスラ サイバーキャブ生産コストはウェイモの7分の1という衝撃」も参照。


■テキサス州の登録は739台。実際に走る台数は?

テキサス州の登録では、10月10日時点でテスラの自動運転車は739台。内訳は、SUVのModel Y(モデルY)が420台、Cybercabが319台だ。

10月8日にはCybercab150台が一括で登録され、169台から319台に増えた。ローンチ日の9月4日は45台だった。

ただし、登録は車両を州に届け出た数にすぎない。州全体の数字で、実際に乗客を乗せている台数ではない。

稼働の目安になるのが、目撃情報などから集計するコミュニティサイトRobotaxiTracker(ロボタクシートラッカー)だ。オースティンで無人運行中の車両は、10月10日時点で275台、うちCybercabは105台だった。10月14日には、米テレビ局CBS Austin(シービーエス・オースティン)が354台、うちCybercab178台と伝えている。台数は増えているが、テスラが主張する300台超とはなお開きがある。


利用の差も大きい。Cybercabの乗車はこれまでに531件で、テスラのロボタクシー全体の約11%にとどまる。

稼働は不安定でもあった。米EV専門メディアElectrek(エレクトレック)は9月22日、ローンチ直後に100台を超えた稼働車両が、直近7日間で8台まで落ちたと報じた。また、米運輸省道路交通安全局NHTSAは、Cybercabが連邦の安全基準を満たすかを確認している。

■「日本上陸」はまだ先 Cybercabの導入を阻む3つの壁

日本のテスラも動いている。日本法人のテスラジャパンは9月、Cybercabの実車を日本で初めて公開した。東京・青山を皮切りに、大阪、名古屋、東京・新宿を回った展示イベントである。展示のみで、公道を走らせる予定はなかった。

日本での導入について、テスラジャパンの橋本理智社長は、決まってはいないが機会があれば実施したい考えを示したと報じられている。公道走行の時期も「未定」とされる。

第1の壁は、ロボタクシーの土台になる運転支援機能FSDだ。日本ではまだ提供されていない。橋本社長は3月に2026年内の実装を目指す考えを示したが、提供日や価格は発表されていない。

第2の壁は、制度である。運転者のいない自動運転レベル4は、2023年4月施行の改正道路交通法で認められ、サービスには都道府県公安委員会の許可が要る。さらに乗客を運ぶには、既存のタクシーと同じ旅客運送の許認可も必要になる。

第3の壁は、車両そのものだ。ハンドルやペダルのない車両は、保安基準でさらなる議論が必要とされる。米国のNHTSAや国連の基準づくりの議論が、国内の解釈に影響するとの見方がある。

こうした壁の高さから、テスラ単独では事業化のハードルが高く、タクシー会社と組む形が現実的だとの分析も出ている。その道をすでに歩んでいるのが、ウェイモだ。

■東京ではウェイモが2027年に先行 トヨタ・日産・ホンダはどう動くのか

東京で先行するのは、ウェイモだ。2026年9月15日、タクシー配車アプリ大手のGO、ウェイモ、大手タクシー事業者の日本交通の3社が、東京での自動運転タクシーの商用化に向けた戦略的パートナーシップに合意した。2027年中に、国内初となる運転者のいないレベル4の自動運転タクシーを東京で始めることを目指す。

計画では、2027年中に段階的に100台規模まで増やし、GOとウェイモのアプリの両方から呼べるようにする。一般客向けは初日から完全無人で運行する方針だ。ただし、東京の一般道でタクシーとして営業する許可は、まだ得られていない。

準備は進んでいる。ウェイモは2025年4月から東京都内7区で試験走行を続けており、現在は乗務員が運転席で監督しながら車両が自動運転する段階だ。

同じオースティンでは、ウェイモもテスラと同じく300台超を運行している。米国でほぼ並んだ2社が、日本ではウェイモが先に東京で試験を重ね、テスラは展示の段階にとどまる。差はここにある。

日本の自動車メーカーも黙ってはいない。トヨタは2025年4月、ウェイモと新たな自動運転車両の共同開発で協業すると発表した。ウェイモの配車サービスにトヨタ車を投入する構想も含む。

日産は3月、ソフトバンクG孫正義会長が出資する英AI開発企業Wayve(ウェイブ)、米配車大手Uber(ウーバー)と共同会見を開き、2026年後半の東京での試験運行開始を目指す考えを示した。

ホンダは、米ゼネラル・モーターズ(GM)側の車両開発中止で東京のサービス計画が頓挫したが、求人情報などから事業化に向けた準備を進めていることが分かっている。

ついにウェイモのアプリが日本を席巻する序章か GOと日本交通が交渉に折れたのか

■テスラは日本のタクシーを変えるのか

米国では、テスラの拡大がさらに続きそうだ。次の舞台はダラスである。10月10日、AIソフトウェア担当副社長のアショク・エルスワミ氏(Ashok Elluswamy)は、Cybercabはオースティンのどこでも見かけるほどになったとXに投稿し、「Dallas soon」と続けた。時期や台数は示されていない。

ダラスでは4月からModel Yのロボタクシーが走っている。実現すれば、ハンドルのないCybercabがオースティン以外で初めて走る都市になる。

一方、日本の動きは遅い。テスラは9月にCybercabを展示したが、導入は決まっておらず、FSDも提供されていない。東京では、ウェイモが2027年の無人運行を掲げ、すでに試験走行を重ねている。

もっとも、「8倍・300台超」はテスラ自身の発表で、問われるのは稼働と収益だ。Motley Foolは、経済性の証拠が見え始めるのは2027年ごろと見る。

テスラは米国で加速を続けるが、日本ではウェイモが先を行く。「8倍・300台超」という勢いを、日本の制度の壁を越える力に変えられるか。それが次の焦点だ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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